第38話:「……せいれい?」
流石にそれぞれのPTメンバー達は俺達の話を聞いて皆しばらく唖然としていたが、納得の部分の方が大きかったのか割とすんなり受け入れてくれたみたいだった。アイラもシルビアもホッとした表情だ。
ドルチェが「シュンにぃはシュンにぃ……何も変わらない」と言ってくれたので、いつもの5割増しで頭を撫で回してあげた。
「えー? 『獲得経験値UP』って40倍で終わりなの~!?」
ボーナススキルを操作していたアイラが、がっかりした顔をしている。どうやら一気に40倍まで取得したらしい。
アイラは異常だと思われるのが怖くて今まで『2倍』までしか取得していなかったそうだ。
しかも、あまり気付かれにくいステータスUP系のボーナススキルを1段階ずつ上げていただけだったので、ポイントが余りまくっていたとの事。
「ねぇねぇ! 何を取得したら良いかな?」
貯まりに貯まったポイントの使い道を楽しそうにダリア達と相談し始めるアイラ。
シルビアも今まではそれなりに自重してたので、貯まっていたポイントで何を強化するのかを仲間達と話し合っていた。
肩の荷が下りた感じだったので俺も嬉しかった。
ちなみに、ダリア達を「さん」付けして呼んでいたら「もう我々は仲間だろ?」と呼び捨てにするように言われた。
「シュンにぃ……ぼく達は……相談しないの?」
「ごめん、全然自重してなかったからポイントが無い」
アイラやシルビア達を見て羨ましかったのか、俺の言葉を聞いてあからさまにがっかりしていた。
「いや、この間レベルが上がった時に『上げたい能力はある?』って聞いたでしょ? これからもちゃんと相談するから!」
「それなら……許す」
手持ち無沙汰になったので皆の様子を窺っていると、壁に寄りかかって俺達をニヤニヤしながら見ているソルと目が合う。
「ソルは今後も誰かとPTを組むつもりはないの?」
「足手纏いはいらない」
あっさりと一蹴されてしまった。
PT人数が増えると経験値が分割されるので、それが嫌なのだろう。
『この世界の住人達の能力の底上げ』と言う神様の願いもお構いなしみたいだ。
きっと神様もアイラの時以上に困惑した事だろう。
それにしても、ソルのステータスが気になる……。
思い切って『鑑定』しても良いか尋ねると「一度だけなら良いよ」と意外な事に許可を貰えた。
「えー? ずるいよ! アタシが頼んでもダメって言うくせに!」
「アイラは一度勝手に見たじゃないか。生かしておいてるだけでも感謝して欲しいな」
アイラの抗議に物騒な事を言うソル。
ここに来る時に自重したのは正解だったようだ。
「ワタシも良いか? とても興味がある」
「好きにすれば?」
ちょっと面倒くさそうなソルの機嫌が変わらないうちにと『鑑定』と念じる。
『名前:ソル
種族:精霊(氷)
レベル:32
取得スキル:氷魔法レベル4・魔力操作レベル3・生活・鑑定・スキル取得速度UP』
「はぁ!?」
俺の驚いた声が部屋に響く。
「いや……え? ソルって『精霊』なの?」
「……せいれい?」
聞き直してくるドルチェに呆然とした顔で頷く。
「レベル32か。この短期間で大したものだな。それに氷魔法か……興味深いな」
同じように『鑑定』したシルビア。俺と違っていたって冷静だ。
「経験値40倍にして足手纏いも居なければ当然だよ」
褒められて悪い気はしないのか、結構機嫌が良いみたいだ。
氷魔法なんて選べたのか聞いてみる。
「まぁ、僕が最初から持ってた能力だからね。神が戦闘スキルまでくれるって話は今知ったよ」
シルビアも「ワタシも最初から持っていた」と言っているので、どうやら戦闘スキルをくれたのは戦う術を持たない俺やアイラに対するサービスだったようだ。
それにしても、まさかこんな所で『精霊』に会えるとは思わなかった。
と言うか、異世界での生活を望んでいた精霊って……。
精霊の世界もいろいろ大変なんだろうなぁとちょっとだけ同情してしまった。
「だが、ちゃんと迷宮の探索をしているのだな。感心だ」
シルビアが褒めるが、ソルの顔が微妙に強張っている。
それを見て代わりにアイラが悪戯っ子のような顔で言ってきた。
「ソルはカーラ様の事が大好きなんだよ! だから迷宮を攻略して『英雄』になりたいんだよね~?」
「カーラ様って、『氷結の魔女』って人?」
「うん! 多分、この世界で氷魔法が使えるのってカーラ様とソルしか居ないんじゃないかな? 氷の精霊のソルとしてはすっごく気になるみたい!」
「アイラ……いい加減に…!」
『ガラ~ンゴロ~ン♪』
アイラの暴露に怒ったソルからもの凄い冷気が発せられたが、不意に聞こえてきた鐘の音に気勢が削がれたのか舌打ちをして黙り込んでしまった。
「時間だね。ソルやアイラ達はそろそろ帰らないと宿の人に怒られちゃうよ」
ソルの冷気で震えていた皆が俺の声にハッとして立ち上がりゾロゾロと部屋から出て行く。俺とドルチェも見送りの為に付いて行った。
階段を降りる時にアイラが俺に近寄ってきて耳元で囁く。
「ずっと気になってたんだけど、シュンの部屋って2人部屋だよね?」
「うん、そうだけど?」
俺の返事に複雑な顔でドルチェを見つめているアイラ。そんなアイラをドルチェも見つめ返している。
一瞬火花が見えた気がしたが……。
「シュン! 明日は暇?」
真剣な表情のアイラが顔を近付けて聞いてくる。
明日は孤児を見に行く事を告げると、更にグイッと顔を寄せてきた。
「明日、アタシも行くから!」
アイラの迫力に頷くのが精一杯だった。
集合時間を確認すると、俺達に手を振って帰って行った。
「シュンにぃ……アイラの胸ばかり……見てた」
食事を終えて部屋に戻ると、ドルチェが拗ねた顔でそう言ってきた。
ドルチェは自分のぺったんこな胸を触って不満そうだ。
久しぶりのアイラの巨乳についつい目が行ってしまっていたのは自覚していたが、ドルチェに気付かれていたようだ。
「ドルチェにはドルチェにしかない可愛さがあるんだから。ほら、俺はドルチェのおっぱいも大好きだよ?」
抱き寄せて服の中に手を入れ、小さいけれど感度が良い胸を揉みしだく。
ここ数日毎日のように触っているので感じるツボも少しだけど分かってきた。
自己主張してきた蕾を指で摘むと、ドルチェの身体がビクンと跳ねる。
「シュンにぃ……ぼくも」
「それじゃ、服を脱いじゃおうか」
ドルチェが脱いでいくのを見ながら俺も同じように服を脱ぐ。
もちろん俺の股間はもうカチコチに反り返っている。
それを確認するとすぐに顔を埋めてくるドルチェ。
「ねぇ……シュンにぃ」
「ん……何?」
美味しそうに舐めながら視線を俺に向けてくる。
吸い寄せられるような妖しい瞳を見つめていると、とんでもない事を言ってきた。
「アイラとも……エッチしたい?」
俺がどう言おうか戸惑っていると、ドルチェの動きがどんどん激しくなっていく。
アイラと出会った事でドルチェの中の触れてはいけなかったスイッチが入ってしまったのかもしれない。
「シュンにぃが……『家族』以外とするのは……ちょっと嫌だけど……ぼくが一緒でも良いなら……しても……良い」
驚いている俺をベッドに押し倒すと、その上に跨ってくる。今度は逆に俺が見下ろされる格好だ。
普段のドルチェからは想像もできないような妖艶さを漂わせた表情に、身体の奥底がゾクリと震える。
心を鷲掴みにされたかのようにコクリと頷く俺を見ると「ご褒美」とばかりに俺の身体を飲み込んでいった。
「いつもより……硬い。……アイラとするところ……想像してる?」
ちょっと不機嫌そうに締め付けてきたので、慌てて首を振る。
「……ダメ。今日は……ぼくだけの……シュンにぃ」
俺の目を覗き込んで「離さない」と呟くと、ドルチェがゆっくりと動き始めた。
読んでくださりありがとうございました。
アイラの登場でドルチェが焦っているように、アイラの方もかなり焦っているので……果たしてどうなる事やら。