第36話:「武器や防具がいっぱいだよ! ワンダフル!」
「ここが戦士の国オルトスの王都か……でかいなぁ~!」
「はい、王都ファーガン。探索者ギルドの本部もありますので、当然ながら探索者の数も世界で一番多いです」
俺達の拠点、職人の国ドゥーハンの王都ダーレンの3倍はありそうな街だ。
思わず感嘆の声が漏れた俺にセリーヌさんが街の説明をしてくれた。
国王アルヴィンは元々は『英雄』の称号を持つ探索者だったので、国王になってからはもっぱら探索者の育成が生き甲斐になっているらしい。
「シュンさんやシルビアさん達は私について来てください。宿屋にご案内します」
どうやらここで国王やギルド長達とは一旦別れるみたいだ。
セリーヌさんに連れられて4日間泊まる予定の宿屋に到着する。
「私達はギルド本部が用意した別の宿屋に泊まる事になっていますので、何かありましたらギルド本部にご連絡ください」
「確か4日間自由行動で良かったはずだな? ワタシ達はこの街の迷宮に行ってみるつもりだ」
シルビア達は『孤児奴隷』を買う資金集めに迷宮に行くらしい。
俺達も少しでもお金を稼いでおきたいので、同じように迷宮に篭るべきか……。
悩んでいたらドルチェが俺の服を引っ張ってくる。
「シュンにぃ……孤児のちぇっく……忘れないように」
「孤児、ですか?」
セリーヌさんが怪訝な顔をしていたので、宿屋に良さそうな子を探している事を話す。
「それでしたら、明日ダーレンに連れて行く孤児の確認作業がありますので、シュンさんもご一緒しますか?」
「それは助かります。お邪魔じゃなければ、ぜひ!」
「それならワタシ達も良いだろうか? ここに来た目的の1つがPTメンバーになれそうな孤児を見つける事なのでな」
どうやら迷宮よりもこちらを優先するみたいだ。
シルビア達もPTに欲しい子が見つかった方がモチベーションも上がるだろう。
「では、明日の午前2の鐘が鳴る頃にギルドまでお越しください」
「はぁ~……流石に5日間の旅は疲れたね」
借りた部屋に入ると装備を外してベッドに倒れ込む。
「シュンにぃ……ぼく達も孤児奴隷を……買う?」
「お金に余裕が出来たらって考えてるけど、ドルチェはそう言うのはやっぱり抵抗ある?」
「……問題ない。……ちゃんと正規に買うのは……孤児の為にもなる」
「そうなの?」
バードンさんにもいろいろと説明して貰ったが、正直な所あまり良く分かっていなかったので、ドルチェにも教えて貰う事にした。
「孤児って、わざわざ『孤児奴隷』として買わなくても、普通に探索者にしてPTメンバーに入れたらタダなんじゃないのかな? それなら国の世話にならなくて良いから奴隷になる必要もないし」
俺の考えに首を振るドルチェ。
「シュンにぃだったら……きっと孤児にも優しくしてくれる。……でも、みんながみんな……そうじゃない」
ドルチェの説明によると昔は俺が言ったように探索者が孤児奴隷になる前の孤児を引き取るケースがかなりあったが、お金の無い孤児を家畜のように働かせたり、女性の場合は性のはけ口にしてしまうパターンが多く大問題になったそうだ。
それが嫌でろくに装備も整っていないのにソロで迷宮に挑んで死んでしまう孤児が増えてしまった。
その結果、全ての国において正式に購入した『孤児奴隷』でないと探索者は孤児を手に入れてはいけない決まりが出来たとの事。
つまり俺が孤児をPTに入れたかったら、正式に『孤児奴隷』として買わなければいけないって事だ。
「自分で働き口を見つけた場合も……相手がちゃんとしているか……厳しい審査がある」
「国が調べて認められた人じゃないと雇う事が出来ない仕組みなのか」
「……そう。……でも……あの宿屋だったら……多分大丈夫」
奴隷と聞くと酷いイメージしかないが、ドルチェの説明を聞くと『孤児奴隷』になるのは弱い立場の孤児を守る一面があるらしい。
バードンさんも「孤児奴隷として買われたら少なくとも食事と寝床は確保できる」と言っていたのを思い出す。
それでも『孤児奴隷』になる事を拒んで単身で探索者になって死んでいく孤児が少なくないそうだ。
確かに「奴隷になるのはプライドが許さない!」って孤児も沢山いそうだ。
バードンさんも孤児が『孤児奴隷』になるのは不本意そうだった。
「そう言えば、バードンさんって孤児奴隷と思いっきりエッチしてるけど、あれって良いの?」
「正式に買ったのなら……対価を支払ったとして……黙認」
大金を払って生活の保障をする代わりに身体を要求する。
こう言った所は俺が知っている奴隷制度と同じだ。
「何ていうか、優しいんだか厳しいんだか良く分からない制度だね」
「ぼくも……そう思う」
難しい問題だと2人してうんうん唸っているとドアがノックされた。
開けてみると宿屋の人が頼んでおいたお湯を持ってきてくれたので、気分転換も兼ねて身体を拭く事にした。
『ガラ~ンゴロ~ン』
「ん? これって午前4の鐘だっけ?」
「……午後1」
「よく覚えてたね」と褒めると得意気な顔のドルチェ。
それにしてもどこの街でも鐘の音が全く同じだ。素直に感心してしまう。
「それじゃ、ちょっと早いけど拭いちゃおうか」
「ぼくが……脱がす」
すっかり慣れた手付きで俺の服を脱がせていくドルチェ。
でも、下着を脱がす時に顔を近付け過ぎるのは嫁入り前の女の子としてどうかと思う。息が当たって反応してしまう…。
「シュンにぃ……昨日も見張り番の時に……いっぱい出したのに……元気」
「そういうドルチェだって、もう濡れてるんじゃない?」
お返しとばかりにからかってみると、頬を染めてモジモジ。図星だったみたいだ。
もうすでに熱い吐息のドルチェに隅々まで拭いて貰う。
拭き終わる頃には身体の一部がギンギンに硬くなっていた。
「食べても……良い?」
トロンとした瞳のドルチェがおねだりしてくるがなんとか押し留める。
「ダメだよ、今度は俺が拭く番」
あっという間に服を剥ぎ取って全身隈なく拭き清めた。
ぐったりしてしまったドルチェをベッドに寝かせ、その小さな身体に覆い被さる。
「上と下、どっちの口に欲しい?」
耳元で囁くとビクッと震えて潤んだ瞳で見上げてくる。
「どっちも……両方に…欲しい」
欲張りな身体をたっぷりと堪能した。
ちなみに明るい所でしっかりと確認したら、処女膜は再生されていなかった。
不思議だ。
「まだ外が明るいし、街をぶらついてみない?」
「武具屋に……行ってみたい」
服を着て街を散策する事にした。すっきりしたのか、かなり上機嫌だ。
宿屋の人に武具屋の場所を聞いて外に出ると街の様子がちょっと騒がしかった。
道行く人に理由を尋ねてみると少し前にリメイアの女王が到着したとの事。
「すっげぇ美人だった!」と興奮気味に教えてくれた。
「確か、カーラって女王様だったっけ?」
「……エルフ……『氷結の魔女』。……元『英雄』」
氷属性の魔法まであるのか、水の上位属性なのだろうか?
「俺も頑張れば格好良い二つ名が付くのかなぁ」
「……『えろ魔人』」
ぼそりと何気に酷い事を言われてしまった。
お互いの二つ名をあれこれ言い合っていると、気が付けば武具屋に到着していた。
「ダーレンの店よりは小さいけどなかなか立派な店だね」
「あの店の支店……看板で分かる」
ドルチェの指摘に俺も店の入り口にぶら下がっている看板を見ると、確かにダーレンの武具屋と同じ絵が描かれていた。文字の部分は読めなかったけど。
ドルチェ先生によるプチ文字講座を聞きながら店に入る。
中もなんとなくダーレンの店に似ていたが、流石に置いてある武具はちょっと見劣りしていた。
「やっぱり職人の国だけあって、あっちの方が質は良いみたいだね」
「……当然」
得意げに胸を張るドルチェ。
俺達がいろいろと武具を見ていると店長らしき人が声を掛けてきた。
「いらっしゃいませ。当店へは初めてでいらっしゃいますよね?」
「はい、今日ダーレン……ドゥーハン国から来ました」
「と言う事は、ボルダス国王陛下と御一緒に?」
少し興奮気味の店長としばし歓談。
ダーレンの武具屋の話をしたらもの凄く喜ばれた。なんでもあの店の店長とは幼馴染なのだそうだ。
職人のドルチェは熱心に武具を見て回っている。
来たついでとばかりに、ドルチェが道中ナイフで作っていた『木の杖:+1』を買い取って貰った。
「品質がかなり良いみたいなので、少し上乗せさせて頂きました」
店長の言葉に鼻高々なドルチェ。頭を撫でて褒めると嬉しそうに目を細める。
早く素材を集めていろんな装備を作らせて上げたい。
その後もいろいろと『鑑定』しながら見ていると、店に賑やかな一団が入ってきた。
「うわぁ……武器や防具がいっぱいだよ! ワンダフル!」
聞き覚えのある声に振り向く。
「あれ? え、嘘……シュン、シュンだよね!?」
金髪に人懐っこい笑顔、大きな胸を揺らせながらこちらに走ってくる美少女。
「アイラ!」
「シュン~!」
不意打ちでの再会にテンションが上がりまくってしまった俺達は、周りに人がいっぱい居る事も忘れて抱き合っていた。
「シュンにぃ……浮気者」
読んでくださりありがとうございました。
アイラの再登場です。




