第34話:「あたし達が好みのタイプなんですか~?」
「またレベル……上がった」
「うん、俺もだ。今日はここまでにしようか」
2階層のボス『炎角兎』のドロップアイテムである『一角兎の角』を拾ってステータスを確認する。
俺がレベル24、ドルチェがレベル18。流石にレベルだけはサクサク上がる。
一気にお金を稼ぐ為にも10階層への転移魔法陣を使うかドルチェと話し合ったが、レベルが上がったからと言ってステータスが上昇する訳ではないので、ちゃんと1階層から順に攻略していく方針に決まった。
レベルUPの報酬はあくまでスキルポイントだ。
スキルポイントが貯まったドルチェは『身体強化レベル2』を取得していた。
「武器が……軽くなった」とご満悦。
俺はあと1ポイントで『身体強化レベル3』になれるのであと一息だ。
ボーナススキルポイントも39になっていたので、何を取得するかは後でドルチェと相談して決めよう。
迷宮の外に出て乗合馬車に乗ったらバードンさん達が乗っていたので一緒に街へ帰る事に。
さっそくドルチェを紹介する。
「長い目で見たら職人を仲間にするのは良い事だと思うぜ! 鉄は『鉄ネズミ』ってのが落とすからそれまで辛抱すれば一気に装備が充実するから頑張れよ!」
相変わらずバシバシ背中を叩いてくるが、もう何だか慣れてしまった自分が居る。
『鉄ネズミ』と言うのは、俺が元居た世界で言うとハリネズミやヤマアラシみたいな魔物らしい。
身体の針を飛ばしてくるのでかなりやっかいな魔物との事。
「あ、そう言えば、明日からしばらくギルド長達の護衛でオルトス国に行く事になったんですが……」
「おう、オレ様がばっちりギルド長に推薦しておいたからな!」
「やっぱり……。シルビアと違ってまだそんなに探索してない俺が声を掛けられるなんておかしいと思ってたんですよ」
「まぁ、良いじぇねぇか! お前はなんかあまり常識を知らねぇみてぇだから、この機会にしっかり勉強して来い!」
バードンさんの言葉も尤もだ。
確かにオレはこの世界の常識についてあまりにも無知だ。
つい先日もいろいろ聞きすぎてキレられたばかりなので、バードンさんの言う通り、この機会にこの世界の一般常識についても勉強してきた方が良いかもしれない。
それにずっとこの街の工房で育ったドルチェにも良い刺激になるだろう。
もしかしたら今回の旅で『異種族間で子供を作る方法』の手がかりが掴めればと密かに期待していた。
エミリーだけじゃなくドルチェも俺にとっては異種族だ。
もしかしたらエミリーと同じようにドルチェもこの事で悩んでいるかもしれない。
バードンさんならもしかしたら何か知ってるかもしれないが、今ここで聞くのは止めておいた方が良いだろう。
俺とバードンさん以外は、『ドワーフ』『獣人(犬)』『獣人(猫)』『エルフ』とものの見事に異種族だらけだ。
もし俺が求める方法をバードンさんも知らなかったら「そんなものは無い!」と宣言されてしまったら……。そう思うとどうしても聞けなかった。
ドルチェだけではなく3人娘達も傷つけてしまう事になりかねない。
悶々としている俺を皆が不思議そうに見ていた。
探索者ギルドでアイテムを売って宿屋へ。
セリーヌさんもシアさんも今日は休みだったのか見当たらなかったので挨拶できなかったが、明日になれば会えるだろう。
バードンさんが別れ際に「悩みがあったら言えよ?」と言ってくれたので、オルトス国で何も情報が無かったら聞いてみることにしよう。
宿に戻るとエミリーとターニアさんが出迎えてくれた。何だかもうマイホームって感じだ。
お湯はもう用意出来てるらしいので、エミリーと一緒に奥に行って受け取ってきた。
ドルチェの分もあるので2つ持つ事になったが、こんなに重い物をエミリーに運ばせる訳には行かない。
俺にとっては『身体強化』のスキルがあるのでこれくらい軽いもんだ。
ドルチェが「自分の分は…持つ」と言っているが、「身体を拭いてくれるお礼」として俺が運ぶ事にした。
部屋に入るとさっそく2人が俺の服を脱がせていく。装備を外すのもすっかり慣れた手付きだ。
「それでは~、今日もあたしが綺麗にしてあげますね~」
「違う……あたし……達」
エミリーとドルチェの協力攻撃によって隅々まで征服されてしまった。
エミリーの口元から垂れてきた白い液体を、ドルチェが舐め取る。
それを見てまた興奮してしまったが、今はドルチェの身体を拭く事を優先。
昨日と同じようにベッドで荒い息をしているドルチェの頭をエミリーが優しく撫でている。
どう見てもエミリーの方が年上に見えるが、実際はドルチェの方が1歳年上だ。
14歳と15歳の女の子とこんな関係になるなんて、少し前の俺じゃ想像も出来なかった。今でも夢を見ているのかと疑ってしまう。
この事だけでも、この世界に送ってくれた神様に感謝だ。
元の世界では性犯罪になってしまうかもしれないが、この世界では特に問題ではないらしい。
相手が奴隷ではない場合はそれ相応の責任を取らなければならないが、俺はもうエミリーもドルチェも他の誰にも渡したくないと思うくらい好きになっているので、2人が付いて来てくれるのなら一生面倒を見る覚悟は出来ている。
「あ、お母さんに頼まれてた事があったんでした~!」
ドルチェを撫でていたエミリーが突然顔を上げる。
「帰りって、うちの国で引き取る『孤児』も一緒なんですよね~? それでお母さんがシュンさんに、うちの宿屋で雇っても良さそうな子を2人ほど事前に見つけてきて欲しいそうです~」
いきなりのお願いに少し困ってしまった。どんな子が相応しいのかさっぱり分らない。
そもそもただの宿泊客である俺がそんな重要な事を決めてしまっても良いのだろうか?
不安が顔に出てしまったのか、エミリーがフォローしてくる。
「シュンさんはあたし達にとってはもう家族も同然ですから、それにお母さんだけじゃなくお父さんもお姉ちゃんもシュンさんの事は信頼してるから大丈夫ですよ~」
「エミリー……それじゃ逆効果。……シュンにぃの顔……真っ青」
「あ、いや、気持ちは嬉しいんだけど、どんなタイプの子が宿屋に相応しいのか良く分らなくて……」
真剣に悩み始めた俺を見て、エミリーが何か少し言い辛そうにしている。
それに気付いたドルチェがエミリーを促す。
「あのね……『シュンさんが自由に自分の好みのタイプの女の子を見つけてくればそれで良い』って……。もう、お母さんってば~!」
「とすると、エミリーやドルチェみたいな子を見つければ良いのか」
俺の口からこぼれた言葉に赤面する2人。
それに気付かずなおもぶつぶつ呟いていると、突然2人にベッドに引きずり込まれた。
「シュンさん。シュンさんは~、あたし達が好みのタイプなんですか~?」
「……嬉しい」
「もちろんだよ」と答えたら着たばかりの服を脱がされて、美少女2人に襲われてしまった。
結局また3人揃って身体を拭いてから食堂に行くとすでにシルビア達がテーブルに着いていてゼイルさん達と何やら話し込んでいた。
「シュン、良い所に来た。オマエ達は旅の間ここの部屋はどうするつもりだ? 帰ってきて部屋が埋まってしまっていたら困るだろう?」
「あ……全然考えてなかった。10日分先払いしてたけど、どうしよう?」
「その事について今話し合っていた所だ」
持ち家が無い俺には宿の確保は重要な事なので、慌てて話し合いに参加する。
まさかドルチェの実家に居候する訳にも行かない。
話し合いの結果、今使っている部屋に関してはゼイルさんの厚意で俺達が戻ってくるまでそのまま部屋は貸さずにキープしてくれる事になった。
でも、4部屋分の収入を減らしてしまうのは俺もシルビア達も流石に気が引けたのでせめて半額だけでも受け取って貰うように提案したのだが、その時にエミリーとドルチェが1人部屋を2部屋ではなく2人部屋を1部屋キープしようと言い出した。
俺とドルチェの同部屋にゼイルさんが難色を示したが、最後はエミリーの説得に押し切られてしまっていた。
端から見たら……と言うか完全に二股状態だ。
シルビア達の視線が痛かったが、何故かマーサさんには応援されてしまった。
これは、旅から戻ってきたら、本格的にお金を稼いで一刻も早く家を借りないと拙そうだ。
今日もエミリーの美味しい手料理を堪能して部屋へと戻る。
明日からしばらくここを留守にするので、今夜はいっぱいエミリーを可愛がろうとドルチェと話し合った。
シルビアに「夜は1回だけにしてくれ」と釘を刺されているので、その1回を思いっきり楽しむつもりだ。
ドルチェも異様に気合が入っている。
明日の準備もすでに終わらせてあるので手持ち無沙汰になってしまったが、不意にボーナススキルの事を思い出す。
「そうだ、ドルチェはHP、MP、筋力、精神、器用、敏捷の6つの中で上げたい能力ってある?」
「シュンにぃが……昨日言ってた……『特殊なスキル』?」
「うん、今もいろいろと能力が底上げされてるけど、ポイントが貯まったから1つだけ上げられるよ」
29ポイントあるので、HPやMPの回復速度UPも1段階上げられるが、今回はステータスUPに使うつもりだ。
「……『器用』。……槌だと狙った場所に攻撃を当てるのが……難しい」
確かに一角兎や炎角兎に攻撃を当てるのに凄く苦労していた。
両手槌のスキルを取得するまでは『器用』を上げてカバーするのは良い方法かもしれない。
「うん、それに鍛冶師としても『器用』上げておいた方が良さそうだね。それじゃ、取得するね」
「シュンにぃ……やっぱり凄い」
ドルチェが尊敬の眼差しで見つめてくれるが、神様から貰った能力なので複雑な気分だ。でも、お礼に頭をナデナデ。
『ガラ~ンゴロ~ン♪』
その後も優先的に上げていきたい能力を2人で検討していると、午後4の鐘が鳴った。
良い子はもう寝る時間だ。しかし、俺達の夜はこれからが本番。
「今日は……ぼくが前を拭く番。……楽しみ」
俺も待ちきれなかったので階段まで迎えに行くと、ちょうど桶を持ったエミリーが上がってくる所だったので駆け寄って桶を受け取る。
「ありがとうです~」と言って腕にしがみ付いてくるエミリーと部屋に戻ると、すでに少し鼻息が荒くなっていたドルチェが手ぐすね引いて待っていた。
「ぼく達が居ない間……寂しくないように」
「そうだな、俺達でいっぱい可愛がっちゃおう」
嬉しさと恥ずかしさの入り混じった表情のエミリーの服を脱がせていく。
「いっぱい、いっぱ~い可愛がってくださいね~! 大好きです~、シュンさん! それに、ドルチェちゃん!」
もちろんたっぷり2人がかりでエミリーを愛しまくった。
これでもうエミリーは他の男には見向きもしないだろう。
留守にする事に一抹の不安があったのでいつも以上に激しくなってしまったが、幸せそうに穏やかな顔で寝ているエミリーを見て大丈夫だと確信した。
「明日からの護衛任務、頑張ろうね!」
「……どきどきわくわく……凄く……楽しみ」
ベッドが狭かったが、今夜は3人一緒のベッドで身を寄せ合って眠った。
オルトス国ではどんな出会いが待っているのだろうか。
ドルチェと同じく、俺も今から凄く楽しみだ。
読んでくださりありがとうございました。
『名前:神城瞬
種族:人族
レベル:24
取得スキル:片手剣レベル3・身体強化レベル2・生活・鑑定・スキル取得速度UP』
(所持ポイント39)
『名前:ドルチェ
種族:ドワーフ
レベル:18
取得スキル:身体強化レベル2・生活』
(所持ポイント9)
ボーナススキル
『獲得経験値UP(―):40倍』
『HP回復速度UP(20):5倍』『MP回復速度UP(20):5倍』
『HP上昇(25):20%』『MP上昇(25):20%』
『筋力上昇(25):20%』『精神上昇(10):10%』
『器用上昇(25):20%』『敏捷上昇(25):20%』
(所持ポイント19)




