第32話:「エミリーも……連れていく?」
「……粉砕」
ドルチェの一撃がハイゴブリンの脚を文字通り粉砕する。
地面に這い蹲りながらもなおも真っ赤な目でこちらを睨みつけてくる魔物。
俺はその目を見据えながら止めを刺した。
『ピロン♪』
「お、またレベルが上がったみたいだな。……22か」
ステータスを確認するとレベルが22になっていた。
ボス部屋にたどり着くまでに何匹かのゴブリンを倒していたので、今日は2レベルの上昇だ。
「ぼくも……13になった……早い」
ドルチェも嬉しそうにステータスを確認している。
あと1つ上がると身体強化のレベルを上げられると大喜び。
流石にこの短時間で両手槌のスキルは取得出来なかったが、この調子なら時間の問題だろう。
「アイテムボックスの……空きがいっぱい。……シュンにぃに預けたの……ぼくが持つ」
頬が緩みっぱなしのドルチェに預かっていた予備の両手槌を返す。
身体強化レベル2の俺が持ってもなかなかの重量だ。
今更だが人族とドワーフだとやはり基礎筋力とかが違うのだろうか?
『木の棒』を拾ってドルチェに聞く。
「この木の棒って何かの素材?」
「……棍棒とか杖になる。……作る?」
ギルドに売ると銅貨10枚なので、ドルチェに武器にして貰ってから武具屋に売った方がお得かもしれない。
手に入れた素材で作るのだから、店に依頼とかをする必要は無いはずだ。
「それじゃ、お願いしようかな? 鍛冶スキルの取得の為の鍛錬にもなるだろうし」
木の棒をドルチェに渡すと、嬉しそうにアイテムボックスに入れていた。
もうここには用は無いので黒い穴に入って2階層へ。
「この文字って『2』?」
扉を指差す俺にこくりと頷くドルチェ。
親切にもわざわざ何階層にいるか教えてくれるみたいだ。
「それじゃ、今日はもう街に戻ろうか」
「……ちょっと物足りない。……でも……お腹空いた」
俺も今日は昼に何も食べなかったのでお腹ペコペコだ。
潜ったばかりの黒い穴に戻り迷宮の外へと出る。
シルビアやバードンさん達が居ないか見回してみたが見当たらなかったので、そのまま素直に馬車に乗って街へと戻った。
「ギルドに寄ってアイテムを売ってくるね」
「……ぼくも行く」
昼に行ったばかりだが忘れないうちに売っておいたほうが良いだろう。
あまり貯め込んでからだと計算するセリーヌさんが大変そうだ。
「あ、シュンさん! ちょっと良いですか?」
ギルドに入るとすぐにシアさんに声を掛けられた。
さっき何か言い忘れたのだろうか。
カウンターに向かうとシアさんがホッとした顔をしている。
「良かったー。わざわざシュンさんが泊まってる宿屋まで行かなきゃいけない所でしたよー」
わざわざ宿屋まで来るという事はそれだけ重要な話なのだろう。
ころころ表情が変わるシアさんとは対照的に、ドルチェはぼ~っとシアさんを見ている。
俺に対しては結構表情豊かなのだが、もしかしたら恥ずかしいのかもしれない。
「あの、ギルド長がシュンさんにお話があるそうでしてー。奥の部屋に来て貰っても良いですかー?」
「ギルド長が? ええ、構いませんけど。ドルチェも一緒で良いですか?」
「はい、大丈夫だと思います。では、こちらへどうぞー」
シアさんに連れられて以前ボスダス王達と入った部屋に案内される。
「あぁ、シュンさん、お忙しい所すみません。それに、そちらは確かベルダ工房の……」
「はい、PTメンバーのドルチェです」
ドルチェをギルド長…レイアスさんに紹介する。
紹介が終わるとレイアスさんに勧められて椅子に座る。
「では、今回お呼び立てした理由をご説明します。シュンさんはもうご存知だと思いますが、2日後にオストス国での会議に出席する為にボルダス王と私共が出発する事になっております。シュンさん達には護衛として参加して頂きたいのです」
「護衛ですか? それでしたらこの国の兵士達がいるのでは?」
「はい、実を言うと護衛と言うのは建前なんです。有望な新人探索者に今のうちから広い世界を見て貰うためにいろんな国を旅させると言うのが本当の理由です」
まだ大した活動をしていないのに有望だと言われて恐縮してしまうが、言うなれば新人研修みたいなものなのだろうか?
レイアスさんの説明によると、探索者は迷宮を求めて街から街へ旅をする事が求められる…だから今のうちに旅に慣れさせるのが目的との事。
「もちろん迷宮探索を中断させてしまうのですから旅費は無料です。しかも、それ相応の報酬が支払われます」
タダで旅ができて、お金まで貰えるらしい。隣のドルチェも目を輝かせて話を聞いている。
これで俺が断ったらもの凄く恨まれそうだ。
「分りました、そう言った事情があるのなら喜んで参加させて頂きます」
「ありがとうございます。シュンさん達の他にもう1PT参加するのでよろしくお願いします」
有望な新人と言う事はシルビア達だろうか?
レイアスさんに確認してみると俺の予想通りだった。
表向きは護衛任務だが、ドルチェやシルビア達と一緒の旅。
期待に胸が膨らむ!
詳細はセリーヌさんかシアさんがしてくれるとの事。
ギルド長の部屋から出るとシアさんが待っていてくれた。
「どうやら依頼を引き受けてくださったみたいですね。私とセリーヌも一緒に行く事になってるのでよろしくお願いしますねー」
「あ、シアさん達もだったんですか。こちらこそよろしくお願いします」
シアさんから詳細を説明して貰い、その後はギルドに来た当初の目的を果たす為に買取室へ。
「そうですか、シュンさんも。……不謹慎ですが、楽しい旅になりそうですね」
そう言ってセリーヌさんがほんの少し微笑んでくれた。
レアな笑顔が見れたのでついニヤけてしまったらドルチェに足を踏まれた。
エミリーと同じで独占欲が強いのかもしれない。
ギルドでの用事が済んだので宿に戻る事にした。
宿に戻るとエミリーがお湯を用意して待っていてくれた。
そして何故かドルチェまで俺の部屋に押しかけてきている。
「……シュンにぃとの約束を……守ってるだけ。…『仲良くしろ』って」
「だからってドルチェちゃんまで一緒になってシュンさんを拭かなくても良いんです~!」
服を脱がされた俺にエミリーとドルチェが同時に襲い掛かってきたが、俺は2人の目がなんだか怖かったので何も言えずなすがままだ。
すっかり慣れた手付きで気持ち良い所を的確に拭いてくるエミリー。
そして、ぎこちないながらも一生懸命に俺の身体を丁寧に拭いているドルチェ。
「シュンさんはここが弱点なんです~」
「ここも……触ったらピクッてなった……可愛い」
「あ、大きくなってきました~。えへへ~」
「……凄い」
美少女2人に身体中を拭かれている状況に、どんなに我慢してもアソコが反応してしまう。
俺の大きくなったモノを見て固まってしまったドルチェに、エミリーが見せ付けるように顔を寄せる。
「ここは敏感なので~……最初は手でこうやって~……最後はお口で……あむっ♪」
「ぼくも……やる」
結局2人に隅々まで綺麗にされてしまった。
一仕事を終えて満足気なエミリーとドルチェ。
俺はエミリーにアイコンタクトを送ると、俺達に背中を見せて手ぬぐいを洗っているドルチェに襲い掛かった。
「次は俺達がドルチェを綺麗にしてあげるよ」
「はい、ドルチェちゃん綺麗な肌だから楽しみです~」
エミリーもすっかり乗り気だ。
「ぼ、ぼくは……ふぁッ!?」
俺とエミリーとでたっぷりとドルチェの身体を堪能した。
ぐったりとベッドに横たわったドルチェが恨めしい目で俺達を見ている。
「後で……絶対にエミリーの身体も……ぼくとシュンにぃとで……拭く」
「あたしの全てはシュンさんのモノですけど、ドルチェちゃんだったら触っても良いですよ~」
ドルチェとしては仕返しのつもりなのだろうが、当のエミリーにとってはご褒美に近いものがあるようだ。
もちろん俺も参加するのでたっぷりと可愛がってあげよう。
俺とドルチェの身体を拭き終わってやっと一息ついたのでオルトス国行きの事をエミリーに話した。
「あ、そうだ。2日後にボルダス王やギルド長の護衛でオルトス国に行くから、しばらく留守にする事になったよ」
「え、えええええぇ~!? ど、どういうことですか~!」
詰め寄ってくるエミリーにギルドでの事を話す。
ドルチェが胸を張って「ぼくも…一緒」とエミリーに自慢している。
「ずるいずるいずるいです~! あたしも連れて行ってください~!」
ベッドに仰向けになってジタバタ…駄々っ子になってしまった。
「俺もエミリーに会えないのは凄く寂しいけど、でもエミリーは宿屋の仕事があるでしょ?」
「そうですけど……そうですけど~!」
「ほら、ゼイルさんがこの前、孤児奴隷を雇うって言ってたでしょ? そしたら余裕が出来るだろうから、その時はどこにだってエミリーも一緒に行けるようになるよ!」
「本当に連れて行ってくれますか~?」
なおも探るようにこちらを見つめてくるエミリーにしっかりと頷く。
まだ少し拗ねているみたいだったが、何とか落ち着いてくれたみたいだ。
「ねぇ……シュンにぃ」
「ん? どうした、ドルチェ?」
俺とエミリーのやり取りを聞いていたドルチェが俺に聞いてくる。
「もし……家を借りる事になって……ここを出ていくようになったら……エミリーも……連れていく?」
俺がエミリーに聞きたくて仕方なかったが、まだ時期尚早だと思っていた話題をあっさりと振ってくるドルチェ。
エミリーもいつの間にかベッドの上で正座になって聞いている。
「俺はエミリーにも付いてきて貰いたいと思ってるよ。もちろんエミリーもそれを望んでくれて、ゼイルさん達の許可が貰えたらだけどね」
俺の言葉を聞いてエミリーが泣き出してしまった。ドルチェがそんな彼女の背中を優しく撫でている。
涙で濡れた瞳でしっかりと俺を見つめてくるエミリー。
「あたしは、どこまでもシュンさんに付いて行きます。一生付いて行きます~!」
言葉を振り絞ってそれだけ告げると、また枕を抱きしめて号泣してしまった。
どうやらエミリーも俺と同じようにずっと悩んでいたようだ。
俺に「付いてこなくても良い」と言われるのではないかと心配だったみたいだ。
「もちろん……ぼくも一緒」
エミリーを慰めながら少し心配そうに見上げてくるドルチェの頭をくしゃっと撫でる。
俺が「もちろんだよ」と答えると嬉しそうに微笑んでいた。
「うん、ずっと一緒だよ。これからもよろしくな」
2人一緒に抱きしめると、エミリーもドルチェもぎゅっと抱き付いてくる。
俺は何があってもこの子達を絶対に離さないと心に誓った。
読んでくださりありがとうございました。
着実にハーレムを築いていく主人公。
まだ一週間も経ってないのに……。