第27話:「昨日はお楽しみだったみたいだな」
「……痛かったです~」
俺の腕の中でエミリーが呟く。
あれから歯止めが利かなくなってしまった俺はエミリーが初めてだったにも関わらず、3回も彼女の中に精を放ってしまった。
「ごめんね……。でも、頑張ってくれてありがと」
そう言って頭を撫でながら優しくキスをすると幸せそうに微笑んでくれた。
「もう一度身体を拭いてくれて~、シーツの交換もしてくれたら……許してあげます~」
悪戯っぽく笑うエミリーにもう一度キスをして要望にすべて応えた。
部屋の隅にあったシーツはこの為に用意しておいたのかと感心してしまう。
俺の身体も汗を掻いたので軽く拭く。
お互いの身体とシーツが綺麗になったところで改めて2人でベッドの横になって抱き合った。
「まだここの中にシュンさんがいるみたいです~……」
頬を染めながらお腹の下を撫でている。
「もし、赤ちゃんが出来たらちゃんと責任を取るよ」
お互い合意だったとはいえ避妊せず中に出してしまったので抱きしめながら言うと、エミリーは嬉しいような哀しいような泣き笑いの顔で俺を見上げていた。
「シュンさんのお気持ちがすごく嬉しいです。……でも、あたしとシュンさんは種族が違うので、……赤ちゃんは出来ないの……」
とうとう泣き出してしまったエミリーをギュッと強く抱きしめる。
「それでもずっと傍にいるから」と耳元に囁くと何度も頷きながら声を殺して泣き続けていた。
翌朝、鐘の音と共に目が覚めると、エミリーはすでに身だしなみを整えていた。
結局俺達はいつの間にかあのまま抱き合って寝てしまったようだ。
俺が起きた事に気付いたエミリーが目覚めのキスをしてくれたが、目がちょっと赤い。
頭を撫でるとちょっとぎこちなかったが微笑んでくれた。
俺はこっそり異種族間でも子供を作る方法がないか調べてみるつもりだ。
もし方法が見つからなかったら、更にがっかりさせるだけなので、エミリーには黙っておこう。
エミリーは恥ずかしそうに血と汗と体液の染みこんだシーツを抱えている。
「あの、先に下に行ってますので、少し経ったら食堂に来てください~……」
最後にもう一度キスをして部屋を出て行った。
残された俺は、綺麗に畳まれてベッドの隅に置いてあった服を着る。
昨日の残り湯(エミリーが使った方)で顔を洗い、身だしなみを整えて食堂へと向かった。
「おはようございます」
食堂に居るゼイルさん達に挨拶。
お互いになんだか気まずい。
マーサさんとターニアさんはいつも通り微笑んでいたが、流石にゼイルさんは不機嫌そうだった。
恐縮しているとマーサさんが笑いながら声を掛けてくる。
「あまり気にしなくて良いんですよ、シュンさん。この人だって宿屋の一人娘だった私に対して同じような事をしたんですから」
「あ、おい、あれは……」
「あれは……何です? 誘ったのは確かに私でしたが、受け入れてくださったのはあなたではありませんでしたか?」
「だが、この2人は種族が……」
「あなた……!」
普段からは想像も付かないようなマーサさんの鋭い視線に、ぐぬぬと黙ってしまったゼイルさん。
何だか聞いてはいけないような話を聞かされてしまったような。
ターニアさんも俺と同じように困った顔をしている。
「も~! お父さんもお母さんも、シュンさんが困ってるじゃないですか~! あたしはシュンさんの傍に居られたらそれで良いの~!」
厨房から料理を運んできたエミリーが、料理をテーブルに置くと俺にしがみ付いてきた。
少し肩が震えている。やはり不安なのだろう。
俺とターニアさんとで優しく頭を撫でる。
ゼイルさんとマーサさんはそんな俺達を見守っていてくれた。
「シュンさんは今日も迷宮ですよね~? 早く食べちゃいましょう~!」
しばらく撫でているとやっとエミリーが元気になってきた。
ゼイルさん達はもう食べ終わったらしく、それぞれの仕事に戻っていった。
2人だけでゆっくり、少しだけいちゃつきながら食事をしていると食堂にシルビア達が入ってきた。
「……おはよう」
俺達に気付いたシルビアが声を掛けてくる。
「おはよう」と返事を返すとジト目で見てくる3人。
「昨日はお楽しみだったみたいだな」
隣のテーブルに着くなりそんな事を言ってくるシルビア。
メリルが「わたしのエミリーたんが……」とか呟いていたがスルー。
サラはこちらには興味なしといった感じだ。
シルビアの部屋は隣なので覚悟はしていたが、やはり聞かれてしまっていたようだ。
エミリーが顔を真っ赤にして俯いてしまったのを見てフォローのつもりなのか、
「せめて夜中にするのは1回だけにしてくれ。……それなら問題ない」
すました顔で言っているが、こういった事には慣れていないのか微妙に頬が赤い気がする。
俺は苦笑しながら頷いておいた。
バードンさん達が楽しんでいたあの日の事を思うと、いろいろ自重した方が良いだろう。
エミリーが居心地が悪そうにしていたので、話題を変えるために話し掛ける。
「あぁ、そうそう。エミリーにお願いがあるんだけど。時間に余裕がある時で良いから、俺に文字を教えてくれないかな? 恥ずかしい話なんだけど、読めないんだ」
「は、はい~、あたしで良ければ! シュンさんのお役に立てるなら嬉しいです~」
頭を撫でてお礼を言うと、目を細めて嬉しそうだ。
俺がエミリーに話しているのを聞いて思い出したのか、隣のテーブルではシルビアも仲間の2人に頼んでいた。
その後、徐々に客が増えてきたのでエミリーが仕事に戻り、俺もまだ食事中のシルビア達に一声掛けてから迷宮探索の準備をする為に部屋へと戻った。
歯を磨いて一息つくとベッドに横になり『ボーナススキル操作』と念じる。
忘れないうちに昨日のご褒美として『獲得経験値UP(―):40倍』を取得する。
必要取得ポイントが表示されないので、どうやらもうこれ以上は取得出来ないみたいだ。
残りポイントは19。
少し悩んだが、昨日の迷宮での事を思い出すと『ウォーター』の使用率が高かった気がする。
水分補給や汚れた手を洗うのに重宝した。
今後も長く探索すればするほど必要になると思ったので、15ポイントを使って『MP回復速度UP』を2段階上げる。
所持ポイント:4
『獲得経験値UP(―):40倍』
『HP回復速度UP(20):5倍』
『MP回復速度UP(20):5倍』
『HP上昇(25):20%』
『MP上昇(10):10%』
『筋力上昇(10):10%』
『精神上昇(10):10%』
『器用上昇(10):10%』
『敏捷上昇(25):20%』
どんどんチートキャラになっていってる気がする。
次は通常のスキルだ。昨日の戦闘でやっとレベル1の動きには慣れてきたところだが、思い切ってあげてみるべきだろうか?
あまりのんびりしていられる状況ではないみたいなので、少しでも攻略の速度を上げた方が良いだろう。
焦りは禁物だが今は少しでも収入を増やしたい。
バードンさん達の話を聞いて、俺も『孤児奴隷』を雇う事を真剣に考えていた。
ボーナススキルを取得するのは何の問題もないが、剣などのスキルを上げるのは少し躊躇してしまう。
普通に考えたらレベルが高ければ高いほど強くなるのだが、戦闘系のレベルを上げると言う事は今まで何も鍛えていなかった人間が、ある日いきなり『格闘ゲームやアニメのキャラと同じ事が出来るようになった』と言われるようなものだ。
身体がいくら強化されてもそれを扱う人間が素人だったら、それこそ『宝の持ち腐れ』だ。
本来なら徐々に身体と頭の中のイメージとの差を埋めてからレベルを上げるのが一番だろう。
「でも、そう悠長としてられないみたいなんだよなぁ……。まずは上げられるだけ上げて、戦いの中で調整していくしかないかな?」
やってみて駄目だったらその時はその時だと割り切って、スキルを上げる事にした。
覚悟を決めて、『スキル操作』と念じる。
『所持ポイント:62
取得スキル:片手剣レベル1(10)・身体強化レベル1(20)』
と表示されたので、片手剣と身体強化のレベルを一段階上げる。
『所持ポイント:32
取得スキル:片手剣レベル2(20)・身体強化レベル2(40)』
殆ど破れかぶれの気分で、片手剣をもう一段!
『所持ポイント:12
取得スキル:片手剣レベル3(30)・身体強化レベル2(40)』
数値だけ見ればバードンさんと良い勝負だ。
でも、実際に戦ったら1分も持たずに負けるだろう。
ベッドから起き上がり身体を動かしてみる。
「うわぁッ!? なんだこれ……身体軽ッ!」
生まれてからずっと身に付けていた重りを外した気分だ。
身体が軽すぎて逆に少し動き辛い。
早まったかな?と思ったが要は慣れだ。
今日一日迷宮に篭れば少しは慣れるだろう。
そろそろ午前2の鐘が鳴りそうな感じだったのでトイレに行こうとしたのだが、階段を降りるだけでも注意が必要だった。
一気に飛び降りたくなるのをグッと堪える。
部屋に戻り、今度はアイテムボックスの整理。
手ぬぐいや予備の着替えをリュックからアイテムボックスへと移す。
コップを入れる事も忘れないうちにやっておく。
装備を身に着け、準備が整ったので下へ降りる。
皮の帽子はやっぱりダサいのでアイテムボックスの中だ。
ターニアさんに「いってきます」と挨拶をし、食堂を覗いてエミリーの頑張っている姿を目に焼き付ける。
ちょっと動きがぎこちなかったので、昨夜の影響が出ているのだろう。心の中で謝っておいた。
迷宮から帰ってきたらエミリーをいっぱい甘やかしてあげよう。
宿を出るとまっすぐ迷宮には向かわずに露店通りと呼ばれる場所へ。
ここでは果物や野菜などの食べ物も売っているとの事なので、昼食用に果物でも買っていくつもりだ。
この世界の食べ物は元の世界とそう大して変わらない。狙うは『リンゴ』だ。
名前も形も味も、俺が知っているリンゴと全く同じ。
初めて見た時はかなりビックリした。
この世界でもポピュラーな果物らしく、すぐに売っている露店が見つかったのでさっそく購入。
2個で銅貨3枚。節約中なので今日の昼食はこれだけだ。
リンゴ2個をアイテムボックスに入れて乗合馬車の所に行くと、シルビア達が居たので一緒に馬車に乗り込んだ。
「2階層はどうだった?」
「そうだな、2階層は一角兎と言う魔物が多かった。それにゴブリンが時々出てきた。ゴブリンは1階層の時より少し強めだな」
メリルとサラが居るのでレベルやスキルの話は聞けなかったが、それでも十分ためになる情報だった。
2階層のボスの話も聞いてみる。
「角が燃えている一角兎としか言いようのない魔物だったな。素早いので弓で狙うのが難しかった」
「何をいってるんですか、お姉さま。ビシバシ矢を当てまくってたじゃないですか……」
サラの指摘に少し照れているシルビア。
何故かメリルが得意気な顔だった。
シルビアだったらきっと弓レベル2や3でもすぐに使いこなせそうだ。
思わず羨ましそうにシルビアを見つめてしまった。
きっと彼女は近い将来、凄腕の探索者として有名になるだろう。美人だし。
「アイラも頑張ってるかなぁ……」
「アイラ?」
つい漏れてしまった言葉をシルビアに聞かれてしまった。
「ちょっとした知り合いだよ」と誤魔化すと、何故かニヤリと笑っている。
「ククク……、エミリーには黙ってておこう」
弱みを握られてしまったようだ。不覚!
シルビアにからかわれていると、馬車が迷宮に着いたので逃げるように降りる。
迷宮の周りではいくつかのPTが探索の打ち合わせをしていた。
俺も早くメンバーを見つけたい。可愛い奴隷とか早く欲しい!
別に奴隷にこだわる必要はないのだが、妄想の中ではすでに奴隷を所有していて「ご主人さま」と呼ばせていた。
そんな俺をシルビア達が冷たい目で見ている。
妄想するくらい許して欲しい。
「では、ワタシ達はもう行くぞ。シュンも無理はするなよ?」
こちらに手を振って迷宮の入り口に消えて行くシルビア達を見送って、俺もアイテムボックスから皮の帽子を取り出して装着する。
いつ見ても昔の戦闘機のパイロットみたいだ。
「さてと。今日も頑張って迷宮探索するか!」
気合を入れて迷宮の入り口へと足を踏み入れた。
読んでくださりありがとうございました。
剣などのスキルに関しては、今の主人公は「スキルのお陰で出来る事>自分が出来ると思っている事」な状態です。
昇○拳や竜巻旋○脚を使える身体になっても、それが使えるとは想像すらしていない状態だと思ってくださると助かります。




