出会いis残念
第一話 出会い
漫画やアニメで起こることが現実で起きる。それはとても、
「ギャーーーーーーーーーーー!!」
迷惑だ。
いや、確かに昨日の夜、漫画読みながら、漫画チックなことが現実で起きればいいなぁとは思ったよ? だけど、『高校の入学式の日に目が覚めたら、十分前でした』なんて、少女漫画度一〇〇%な展開起きればいいとかは思ってないし。ここで、イケメンの幼馴染がバイクで迎えに来てくれたりしたら、もう最高なんだろうけどさ! 女の子だったら、ときめいちゃうんだろうけどさ!
ってここで、少女漫画について考えている暇は無い。『入学式に遅刻したら、入学出来ない』と入学のしおりに書いてあった。
僕はベットの傍に昨日置いておいた、新品ピカピカの制服に光の速さで着替え、リビングのテーブルにぽつんと置いてあるトーストを口にくわえ家を飛び出した。
悲しくも、これまた少女漫画の王道スタイルだ。
今の僕なら、ミッキー●ウスの気持ちが分かると言ってもいいかもしれない。
子供から大人、お爺ちゃん、お婆ちゃんにまで見られる君・・・。今までその姿をテレビ越しに見て笑っていたりしたけど・・・。ゴメンね。今日、君の恥ずかしさがよく分かったんだ。
駅前商店街をトーストかじりながら走る男子高校生という姿をいろいろな人にみられてね。
見ていく人々は僕の姿と尋常じゃないスピードに驚愕の顔を浮かべているよ。
・・・あ。
なんだか、悲しくなってきた。ミックーマウスは誰かに見られるのが仕事だったんだ・・・。思い出すんじゃなかったな・・・。やば、涙出てきた。いろんな意味で。
涙で、ぼやけてくる視界に時計屋の時計が飛び込んでくる。八時二十五分。入学式が始まるのが八時半だから、あと五分か・・・。余計なこと考えてるんじゃ無かった。あと、五分で学校たどりつかなきゃ、僕の高校生活終わるのに! 始まってもいない高校生活が!
こんなところで始まっても居ない高校生活を終わらせるわけにはいかない! 僕は高校生活を楽しく送ることを今年の目標にしたんだ!
感情も入り、僕の走りはより一層速さを増した。これでも僕は走るのだけは得意だ。一秒に一軒の割合で店を越していき、商店街を出た。
よし! 商店街を抜けたら、あとは小学校と中学校の前を走り抜けるだけだ。楽しい高校生活を送る」ことだけを考えて、僕はそこを走り抜け―――
ついに、高校が見えた。嗚呼、三蔵法師が天竺にたどりついたとき、こんな感じだったのか。
僕は、高校の前まで、さらにスピードを上げた。そして、高校の門の前で踏み切り――――
高く高くジャンプし、
正大に正大に、
転んだ。
バカみたいに、大きな効果音とともに。
・・・・・・神様。
いくらなんでも、こんな仕打ち可笑しくない? 僕、なにか悪いことした? してないよね? 今日の神様、ひどいよ。ひどすぎる。
立ち上がる気力すらも失い、背中を丸めてうずくまった。あはははは・・・。新品の制服ズボン、破けてるよ・・・。
「oh! いたです!」
「四人目は男とね。俺一人や無かったったい。嬉しかぁ」
突然頭上から声が飛んできた。
誰かが僕を笑いに来たのか・・・? ま、まさか、幼稚園の頃からの最強の幼馴染か!? 違うか。この学校に知り合いが来ているとは、聞いていない。(あの幼馴染は地元の最強偏差値の高校に言っているはずだ・・・)じゃあ、誰だ・・・?
顔を上げ、その顔を見る。居たのは女二人と男一人。知らない三人組だ。誰だ。
そのうち一人の女が、目線を座っている僕と同じ高さに合わせた。
「お前が都城直だな?」
都城直。僕の名前だ。
「そうだけど」
「そうか」
彼女は立ち上がり、僕、女、男と三人をみて言った。
「全員揃ったな」