第1話「決意」
1/96の前日譚です。
本編を4話までお読みいただいていると、ご理解しやすいと思います。
目が覚めたとき、俺は『男女比が1対96、男が資源として管理される世界』にいた。
男性は国家の管理下に置かれ、進路も人生も半ば決められている。
だが俺は、その制度に従わず、警察大学への進学を選ぶつもりだった。
病院のベッドで、この世界の常識と、自分の前世の記憶を整理したことを思い出す。
その後退院してすぐ、プログラム担当官の女性にその決断を告げると、目を丸くして否定されたことも。
しかし、俺は前世の記憶と思いを胸に、努力を続け警察大学校の入学試験を受けた。
周りからは好奇の目で見られながらも、現時点の自分の力は出し切った。
その試験から数か月後、ようやく俺の元に封書が届いた。
紺地に金色の旭日章、そして警察大学校の文字が印字されている。
封を切ると合格通知が現れ、心の中で喜びとやる気が爆発する。
これは、男性としては異例中の異例だろうが、合格を出してくれた警察大学校側にも感謝が絶えない。
それと同時に、スマートフォンに一通の通知が届く。
差出人は国家生殖資源庁、件名は簡潔だった。
<繁殖プラン適応プログラム参加日程通知>
繁殖プラン適応プログラムとは、18歳になる男は例外なく参加する国の制度だ。
4年間、国家資源として必要な教育を受け、修了時には適正な職業への割り当てが成されるのが常だ。
拒否する者はほとんどいない。それがこの世界の常識。
通知には淡々と、以下の概要が記されていた。
<
・遺伝子評価
・適性職種の選定
・国家奉仕に関する教育
・生活管理指導
>
最後に、こう締めくくられている。
<
警察大学校合格 おめでとうございます!
その優秀な能力をぜひプログラムで伸ばし、よりよい国民生活を送りましょう!
>
画面を閉じ、天井を見上げる。
前世の刑事としての記憶が、静かに胸の奥で息をしている。
取り調べ室、事件現場、被害者の涙、そして目覚める前最後の記憶でもある『背中に突き刺さった刃の感触』。
あれは夢でも幻でもなく、俺は確かに刑事だった。
偶然とは思えない。
これは、やり残した仕事の続きだ。
選択肢は一つしかない。
資源として生きるか、刑事として生きるか。
俺の中で既に迷いはなかった。
前世で得た知識も経験も、この世界ではまだ資格にはならない。
だが、それでも正式な教育を受け、もう一度現場に立つ。
窓の外では、朝の通勤電車が走っていた。
どこにでもある、平穏な日常の光景。
だがその裏側で、今日も犯罪は起きている。
俺はもう一度繁殖プランの案内を開いた。
「悪いが、そっちは欠席だ。」
小さく呟き、そのままメールを消す。
そして、机の上の合格通知を手に取る。
これから始まる四年間は、間違いなく楽な道ではない。
男が捜査現場に立つこと、それ自体が狂気と呼ばれる世界だ。
だが、それでもいい。
俺はもう決めている。
この世界でも、俺は必ず刑事になる。




