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青春短歌〜言葉にできない気持ちを、私たちは三十一文字にする〜  作者: 老川
一年生一学期

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2/16

短歌との出会い

 金曜日の昼休み、いつものようにまひると昼食を取ろうと思った私は予期せぬ断りを受けることになった。


「ごめん!バレー部の昼練に参加させてもらうことになったから、今日の昼は別で!」


 申し訳なさそうな、それでいて楽しさを隠すことのできていない表情を前に、私は黙って頷くことしかできなかった。


 いつもよりも静かで退屈な昼食はあっという間に終わってしまう。次の授業が始まるまではまだ時間があった。特に課題も出されていないし、入学して間もないから慌てて教科書を読む必要にも追われていない。私は退屈さに身を任せて廊下に歩み出た。


 放課後のお祭り騒ぎとは違い上級生による勧誘もない廊下は、多少立ち話に興じている生徒がいるだけで、静かなものだった。いつもは人混みに隠れている部活紹介のポスターも落ち着いて眺めることができた。


 ポスターでも勧誘と同じく目を引くものは運動部のものが多かった。文化部でも美術部や演劇部などは鮮やかなポスターを掲示している。一方で、吹奏楽部や茶道部は落ち着いたデザインに留まっている。


 居並ぶポスターを眺めながら廊下を歩いていると、ふっと、一枚のポスターが目に飛び込んできた。


 –––––われ歌をうたへりけふも故わかぬかなしみどもにうち追はれつつ


 白い紙の中央に堂々とした書体でそう記されていた。特別目立つわけでもないし、言葉の意味がすんなりわかったわけでもなかった。それでもなぜか目が離せなくなった。


 改めてポスターを見直すと、中央の文の他に多少言葉が書かれていた。「若山牧水の歌です。興味のある方は短歌部へ」、そう書かれていた。


「短歌部…」


 気がつくと、口からつぶやきが溢れていた。そんな部活があることは聞いたような気もするが、特に気にも留めていなかった。今更、ポスターに書かれたものが短歌であることに気がつく。短い言葉の中に確かにメッセージと、そして力があるように思えた。



 教室に戻って入学生向けの案内を取り出す。部活紹介のページには、確かに短歌部の文字があった。毎週、水曜日と金曜日に活動しているらしい。


「短歌部か…」


 また声が漏れた。けれど、先ほどよりは言葉が形を持っている気がした。もしかしたら、面白い活動に出会えるかもしれない。そう思って今日の放課後に見学に行ってみようと決めた。


「短歌部?」


 放課後、今日は部活の見学に行くから一緒に帰れないことを告げると、そんな驚きの声が返ってきた。


「なんかあった気がしなくもないけど…文化部はあんまりよく見てないから分からないや。でも、」


 そこでまひるはこちらを向いて笑顔を浮かべた。


「しずくが楽しめるものが見つかるといいね!」


 その笑顔に背中を押された気がして、こちらまで笑顔になった。


「ありがと。また月曜日ね」


「うん。あっ、でも感想は待ってるね」


 まひるはそう言いながらスマホを手に持って振ると、荷物を持って教室を出て行った。いつも通り元気な彼女を見送って、一人になった私は荷物を手に短歌部の部室に向かうことにした。

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