報道
七、報道
その日、陽太は自分のワンルームマンションの部屋で、美羅とともに遅めの朝食の準備をしていた。
いつも通りの日常だった。
陽太は、トーストが載った皿をリビングのテーブルの上に置くと、傍らのクッションの上に腰を下ろした。
トーストを手に取りながら、キッチンの美羅に声をかける。
「多分、今日は夕方までに戻れると思うから、晩ご飯は一緒に駅前のイタリアンレストランで食べようよ」
スクランブルエッグとレタスのサラダが盛りつけられた皿を両手に持った美羅が、不思議そうな表情になった。
「どうしたの、今日に限って? あんなに高そうなレストランで夕食なんて」
決して超高級というわけではなかったが、ただでさえ金のない大学生にとっては、確かにちょっと贅沢といえる、そのくらいの価格帯のレストランだった。
「今日で会社説明会も一段落するから、たまにはちょっと奮発してみてもいいかなと思って。いつも応援してくれる美羅へのお礼っていう意味もあるし……。嫌かな?」
美羅の顔が、ぱっと明るく輝くのがわかった。
「ううん、嫌じゃないよ。むしろ、嬉しい!」
そのときだった。
つけっ放しにしていたテレビで、ニュース番組がはじまった。
トップニュースは、政治家の汚職に関する内容だった。続いては、物価の値上がりに関するニュース。三番目のニュースが流れはじめたとき、陽太は今まで聞き流していたテレビに意識を向けた。
「三月二十日に埼玉県坂尾市の山中で発見されていた女性の遺体の身元が、判明したとのことです」
十日ほど前に発見された、身元不明の遺体の続報だろうか。嫌な予感がした。
女性アナウンサーが、抑揚を書いた口調で、ニュース原稿を朗読する。
「女性の名は……」
佐伯美羅さん
二十歳
――え?
陽太は一瞬、耳を疑った。
美羅が、持っていたスクランブルエッグの皿をテーブルの上に置き、陽太の右側に腰を下ろした。
テレビ画面に集中していた陽太は、美羅がいつもより近くに座り、体を密着させるようにしてきたことにも気がつかなかった。
美羅の右手が、陽太の左手に重なった。細くて華奢な美羅の薬指には、おうし座をモチーフにした指輪が光っていた。




