第2章 税金?
結局、俺は商人に「正式な登録が必要です」と言われて、野菜を買ってもらえなかった。
山積みした野菜と果物を見ながら、俺はうなだれる。
「…なんでこうなるんだよ」
俺は能力を持ってる。
剣術も魔法も超一流。
鑑定もできる。
でも、そんな力を得ても、法律からは逃れられないのか?
くそっ、異世界でも社会のしがらみに縛られるなんて、悪夢だろ。
リーナがやってきた。
野菜を見ていう。
「ニート? 売れなかったの?」
「…ダメだった」
俺は商人のやり取りを、かいつまんで説明した。
リーナは苦笑しながら言う。
「仕方ないよ。この国では、土地を持ってる人は、登録が必要だもん」
「そんなもん、俺はしたくない!」
「でも、登録がないと何もできないよ」
「……」
壁を感じた。
俺がどれだけ「自由にやらせろ!」と叫んでも、制度が存在する以上、誰かが止めに来るのだ。
「納得いかねえ…」
その夜、俺はベッドに寝転がりながら考え込んだ。
税金を払うのは嫌だ。
でも作物を換金しないと、生活の幅が広がらない。
「…なら、裏ルートだ」
思いついた俺は、翌日、リーナに教えてもらって町に行き、商人たちの裏の事情を探り始めた。
何にだって抜け道はあるはずだ。
「国境を越えて取引すれば、登録の必要はないって?」
「まあ、理屈の上ではな。ただ、検問があるからな。大荷物を運んでたら、すぐにバレるぞ」
「検問か…」
「じゃあ、魔法でこっそり運ぶってのは?」
「そういうことをやってくれる魔法使いはいるが… 雇うのに金がかかる。あんた、作物を売って手に入る金より、雇う費用のほうが高くつくぞ」
「マジかよ」
結局、話を総合すると「普通に税金を払ったほうが安いらしい」という結論に行き着いた。
でも、それが一番腹立つんだよな!
次に俺が目をつけたのは、宗教団体だった。
町の広場で説教していた白いローブの女宗教家を見つけ、声をかけた。
「なあ、作物が余っているんだが、買い取ってくれないか」
「はい? 寄付ではなくて、買い取りですか。まあ、構いませんが、相応の献金をいただければ…」
「どのくらいだ?」
「そうですね… 収穫の半分を、寄付としていただければ」
「はあ?」
思わず二度聞きした。
半分!? それって、もはや税金よりひどくないか!?
「だから宗教は嫌いなんだよ! 何でもかんでも神の名で巻き上げやがって!」
俺が毒づくと、女宗教家は眉をひそめて、言い返した。
「そもそも、お金目的ではなく、あくまで寄付の一環なんですけどね」
結局、商人ルートもダメ、密輸ルートもダメ、宗教ルートもダメ。
俺は頭を抱え、畑の真ん中で寝転んだ。
「…なんでこうなるんだよッ!」
俺が望んだのは、ただのスローライフだ。
平穏な日々を送りたかっただけなのに、気づけば社会の壁に阻まれている。
「ニートには、住みにくい世界だな…」
そんな俺を見ながら、リーナは肩をすくめた。
「居場所なら、ちゃんとあるでしょう。素直に登録をすればいいだけ」
「俺は自由が欲しいんだよ…」
俺は悔しさの中でつぶやいた。