スライム侍(10)
「スライムがグレーターダイカンの屋敷に忍び込むのですか? 無謀ですよ」
シェリアは怪訝な表情をした。
「……拙者はこれでも武士のはしくれでござる。困っている人を見て見ぬふりをするのは性分ではないでこざるよ」
スライム侍は胸を張る。
「スライムがそれを成し遂げたいと願うなら止めませんがグレーターダイカンの屋敷は危険です」
シェリアは懐から護符のようなものを取り出した。
「これはタリスマン・オフダです。強い身の危険を感じた時にこれを使うのです。潜入の大きな助けになるでしょう」
「かたじけないでござる……心配てしくれるだけではなくこのようなマジックアイテムを授けてくれるとは」
スライム侍はシェリアに感謝した。
「スライムよ……ご武運を祈ります」
「ミラー・オブ・アマテラスを探し出してみせるでござる」
シェリアの祈りのもとスライム侍はグレーターダイカンの屋敷に旅立って行った!
◆◆◆◆◆
同じ頃、カスミは魔法屋の店舗に戻り、店番をしていた。
「スライムちゃんはどこに行ったのかな?」
カスミはスライム侍の行方を気にしていた。恐らくスライム侍はそう遠くには行っていないはずだ。しかし、スライム侍の瞳には強い意志を感じられた。不退転という強い意志だ。
その時、店舗の電話が鳴り響いた。カスミは受話器を取った。
受話器越しの声を聞いたカスミは真面目な表情になった。
◆◆◆◆◆
グレーターダイカンの屋敷ではグレーターダイカンが部下の報告を聞いていた。
「1人の兵隊がクサハラ寺院の方向に向かって歩いていただと!?」
「はい、我々はあらかじめセクションを決めて旅人を探していましたが、勝手に行動している兵隊がいるようです」
部下の報告を聞いていたグレーターダイカンは不意に笑い出した!
「グレーターダイカン様……どうしたのですか?」
「ククククク……もしかしたら我々は旅人に関する尻尾を掴んだのかもしれぬ!」
グレーターダイカンの表情は強い愉悦の色を帯びていた!