スライム侍(1)
異世界。クサハラ村の近くの草原。一匹のスライムが歩いていた。
そのスライム侍はプルルンとしていたが心は武士だった。
「遠くに村が見えてきた……今日はこの村に泊まるでござる」
村が見えてきてスライム侍の歩く速度が自然と速くなり、数十分後には村にたどり着いた。
「それでは宿屋を探すでごさるか」
スライム侍はプルルンと動くと旅人の姿になった。スライムの変身能力である。
これでスライム侍は村人には怪しまれずに村を歩き回れる。しめやかにスライム侍は村に入った。
「……」
「……」
村の中はひっそりと静まり返り、村人は遠巻きにスライム侍を見つめていた。
「?」
村の様子に違和感を感じながらも、スライム侍は村の宿屋に入った。
「宿屋よ……村の様子がおかしいでござるが、どうしたのでござるか?」
スライム侍は宿屋の主人に村に何が置きたのかを尋ねたが宿屋はしずかに涙を流し始めた!
「……実は我が村にグレーターダイカンに空気税を課されようとしているのです」
「空気税……なんたる非道でござるか」
「……はい。都につながる空気を無料で使うとはけしからんということです」
「……事情はおおよそわかったでござる」
スライム侍はこの村の事情をおおよそ理解した!
「グレーターダイカンはとても横暴で、機嫌を損ねるとひどい目に遭うので村民は震えています」
「……その件について拙者にまかせてもらってもいいでござるか」
「えっ!」
宿屋の主人はスライム侍の言葉に驚いた!
「拙者はこれでも武士の端くれでごさるよ」
「あなたが武士ですか……武士にはとても見えないですよ」
「ボロを着てても心は錦……拙者の心は武士でござる」
「言われてみればそんな気がしてきました」
スライム侍はドンと胸を張った!