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一対多

5人のうちの、一番背の高く、体もしっかり鍛えられてる男が先頭を歩いていく。

残りの4人が私の周りに張り付いて逃げるのを防ごうとしている。


周りにはまばらに生徒がいたが、皆恐怖心や警戒心から近づこうともしない。

私はこの移動している間にふてくされているふりをしてポケットに手を突っ込んで

中に入っている携帯電話の短縮から小十郎に電話を入れて

更に左手は時計の留め具に仕込んである発振器をつけた。


これは日頃、父が誘拐犯から身を守る術として用意してくれたものである。

まぁ実質誘拐されているようなものだし使っておくことに越したことはないだろう。




そうしているうちに人気もない屋上への階段へと差し掛かる。

そんな彼らの動きを見ていて若干の不自然さを感じた。

動き……いや不自然なのは服だ。

学生服が微妙に袖丈などがフィットしていないのだ。


恐らく外部の人間を連れてきたのだろう。

となると連中、本気で襲ってくることも考えられるな。


そして一番ガタイがいい男がドアを開け、屋上に出ると

外から手で外に出ろと合図してくる。


私は言われるがままに屋上へとでた。


他の四人も連れ添うように屋上に出てきた。

四人が全員中に入った時点で四人目の男はドアに鍵をかけた。

連中慣れてやがる。


五対一か……些か以上に分が悪い。

よく漫画やら映画でたった一人が大立ち回りをして

大勢をなぎ倒していくシーンがあったりするがあんな物は現実的にはない。

よっぽどの実力差がある前提でも多人数は厳しいのだ。


まぁ大男以外の四人はさほど問題ではない。

ただの人数合わせというレベルだが、正面にいる輩は身長は百八十もあろうかという巨体である。

しかも体の軸がブレることはなく体格から言って何らかの格闘技を修めている可能性が高い。


まともにやりあえばまぁ良くて袋叩きだろうか。

彼らの目的を探るためにも軽く会話を交わしてみるとするか。


「わざわざ一人相手に五人も連れて来るだなんて大げさだねぇ。

 それとも私が怖かったのかしら?」

「なんだとてめぇ!」


おーおー怖い怖い。

自分の力が測れないっていうのはとても怖いねぇ。

包帯を巻いた男は息巻いているが他の男達は釣られる気配はない。

すると大柄の男は静かに語りだした。


「本当はお前と一緒に居た四人全員連れてくるつもりだった。

 だがお前は一人で場を去ろうとしただ。

 一人だけなら見逃してやってもいいかなともおもったんだがなぁ……」


そういうと男はわざわざ顔を近づけて私を威圧するように言った。


「お前は見逃してやってはいけないという気がしたんだ。

 あの残り三人はいつでもやれるがお前は『やれない』」

「何故そう思った?」

「根拠はない、勘だ。だが……いまお前の顔をみて気がついたことがある。

 お前のその目だよ、俺とまるで同類のような目をしてる。

 こんなお坊ちゃまお嬢様学校に居ていい目をしてねえよお前」


こういう鼻が効くタイプは厄介だ。

ただの力自慢の馬鹿ならどうとでもなるのだが

この手のタイプはそう上手くいなすのも難しい事が多い。


「で、それだけの理由で私一人をリンチしようってわけ?」

「そうだ、十分すぎると俺は思うがね」


そういうと周りの四人が私の包囲をより狭めるように動いてきた。

なるほど、こいつら手慣れてる。

大男は動かず私をじっと見ている。

一方残りの四人はじわじわと距離を詰めてきている。

連中の狙いは私の動きを拘束することか。


あたりを目線だけで確認する。出入り口は一つのみで鍵がかけられており

屋上は落下防止のために高い柵で覆われているのみで他に逃れる場所はない。

強いて言えば校舎の上ということでスペースが広いということぐらいか。


それも今現在男たちに囲まれて逃げ回る余地すらない。





戦いの基本は先手を取ることにある。

既に先手を取られている私にとっては打開の一手が必要だった。

私は身をかがめる程に左足を捻り、射出されるかのように右足を前に出して二歩前へ

敵の一人、包帯を巻いていた男に飛びかかった。


箭疾歩。


ある種の奇襲技の一つである。

左右の手足を同時に動かして接近するために相手の反応を遅らせることが出来る。

相手の顎を狙って一撃を掌打で加えた。

そのまま相手を確認せずに隣りにいた者に繰り返し箭疾歩で近づきローキックを決めた。


あまり深く相手の状態を確認まではしてない、そのまま包囲から逃げ出そうとした瞬間

あの体の大きさにに使わない凄まじい速度で私の前に立ちふさがった。


「おーおーやってくれるねぇ……おいお前ら高々女一人に殴られたぐらいで伸びてんじゃねえぞ!」


そうはっぱをかけられると男たちはよろよろと立ち上がった。

確実にダメージは通ってるようだったが前世のように一撃で相手を倒すには程遠かった。

体の鍛錬は不十分、体も育ちきっていない。二人転倒させられただけでも上出来ではあった。


ただ今に限っては上出来以上を求められている場面である。


よろよろと二人は起き上がると再び状況はもとに戻った。


「おいお前ら、多分相手にならないから逃げないように亀になっててもいいから

 こいつを絶対にがすな、俺が相手するわ」


大男はガタイに似合わず背中を丸めて両手を広げるように構えた。

なるほど。

多少殴られようとも捕獲しようという考えだな。

一番されて困ることを適切に判断している……鼻が効くやつはやはり厄介である。

正直鍛錬を怠った訳では無いがこの体でアレだけの人間を裁けるかと言われれば

あまり自信はない。


前世から元々化勁はあまり得意ではなかった。

たかだか十年程度の付け焼き刃で十全に使える技術ではない。

恐らく相手は柔道かレスリングに類するものを見に付けていると考えられる。


そう考えてるうちに相手が動いてきた。

ほぼ予想通り極端に体を低い体勢にもっていってからの突進。

タックルとかいう厄介極まりないものである。

私はそれを予測し、箭疾歩の流れでそのまま膝を相手の顔面に蹴りつけた!




天地がヒックリがえる……


ドサッ!


強い衝撃が背中と後頭部に加わる。

どうやら私の軽い肉体は男を抑え込むことが出来ず、そのまま倒されてしまったようだ。


男の様子を見ると顔面に入れてやった膝蹴りで鼻血を流していたがそれでも

強烈な力で離すまいと私は抑え込まれていた。


「おいお前ら、押さえつけろ」

そういうと四人はそれぞれ私の手足を押さえつけてきた。

それぞれの力はさほど強い訳では無いが四人に両手足を抑え込まれては流石に

離脱することは叶わなかった。


アドレナリンが出るのを感じる。

この期に及んで私はこいつらをボコボコにしてやることを考えていた。

そんな私を見て大男は言った。


「ったくこんなに手こずるとは思わなかったぜ、ただの小遣い稼ぎ程度だとおもってたからなぁ」


そういうと男は私の胴体の上にまたがり両腕を抑えると

周りの人間にハンドサインを送り、包帯の男以外は離れていった。


「さあお前の言う通りあとは好きにするといいぞ」

「なんだ、お前がここから相手をしてくれるんじゃないのか」


バゴッ!

頬に強烈な痛みが走ると同時に反対側も地面に叩きつけられて両方に激痛が走った。

今の一撃で口の中が切れたらしい。

口の中が血の味で満ちていく。

口元も切れたようで血が滴る。


アドレナリンが出るのを感じている。

前世ではこういう感覚が高揚感としか解らなかった。

昔からこうだった、血を見ると戦闘欲求が止まらなくなる。


どうやら包帯をした男が殴ってきたようだった。

男は抑え込まれている私を殴ったらしい。


ペッ!


私は血が混じったつばをその男に吐きつけてやった。

包帯の男は正に怒りに気が狂ったかのような表情をしている。


大男は言う

「まかりなりにも女だ、顔はやめとけ」


そうすると男は狂気にも似た表情で私の胸元に両手を当てると

衣服を一気に引き裂いた。


胸元が開けブラジャーだけが露出した姿になった。


私はひどく興奮していた。

……ぶち殺してやる。

すると大男は言った。


「当初の予定では軽く脅す程度だったはずだが?」

「この女は俺をバカにしたんだ! 己の愚かさを解らせてやる!」


大男はやれやれと言った表情をしていたが

私は包帯の男の目を射抜くように見続けていた。

上等だ、いくらでも殴ってきやがれ……。


と思ったが男はどうやら私からブラジャーを剥ぎ取ろうとしているようだ。

だが取り方がわからないようだ。

女の扱いがわからないような奴だからそういうことになる。

今にも隙さえあればぶち殺してやろうと離脱する方法を考えているが

この大男の力と体格差はいかんともしがたかった。


やがて力任せにブラジャーを取ろうとして取れなかったりで

男は私にベタベタと不愉快な手で身体を触りまくっていた。

頭の中は血がのぼりぶち殺してやるの一文字で染まっていた。

それと同時に女は男に触られた時このような不快さを味わうのだなと痛感していた。


「ハァ……ハァ……お前が、お前が悪いんだ!!!」


そしてようやく背後のホックを取ればいいと理解したようで

剥ぎ取られた瞬間であった。


ガチャ……。


それは開くはずのない扉が開いた瞬間である。


ダンッ、ガッ、ダンッ、ガッ!


一瞬にして扉の前に居た男と私の上にまたがっていた大男はぶっ倒れていた。

そして私の上半身をベタベタと気色悪く触っていたガキは両手で首を締め上げられて

全身が浮き上がるほどに吊し上げられていたのである。


「お嬢様に対してのこの行い、万死に値すると知れ」


私は興奮する小十郎に肩を叩く。


「もうそのへんにしておけ、お前がやられたわけじゃないだろう?」


そう言って私は包帯の男の顔面にハイキックをお見舞いしてやった。

男はその時点で意識を失ったのか気絶するように倒れそうになったので

私は追撃の掌打を顔面に打ち込もうとして今度は小十郎にその手を掴まれた。


「お嬢様、お怒りも最もですがとりあえず衣服をお召になってください……」

そういうと地面に落ちていたブラジャーを軽く叩いて私に渡した。

それをつけるのを確認すると小十郎はいつも着用している背広を私の

上着代わりに被せてきた。


私は燃え上がるように頭の中に立ち上っていたものが急激に冷めていく一方で。

しかしこの馬鹿どもをどう始末してやろうかと、今度は腹から滾るものを感じていた。

細々とですが継続して書き続けていきたいと思いますので

良ければ評価やブクマをいただけると継続の励みになりますので

何卒よろしくお願いいたします。

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