第九話 廻乱
注・本作は、残酷な描写が含まれています。
15才以下の方は閲覧を控えることを推奨します。
「キャアアアア」
「うわあああ」
レンド「何だ?」
ルオール「おい、あれ見ろ…」
目の前は市場だ。だが、斧や剣、岩を持ったゴブリンが大量に襲来してきている。凄惨な情景だ。
レンド「クソ…もう追手がここまで来たのか…?」
「おーい!」
ふと見ると、向こうから別行動していたヘルンとニーナがやってくる。
ルオール「よし。レンド!お前のその剣、試してみろ!」
レンド「ああ!」
俺は一気にゴブリンの元へ駆ける。
ルオール「いっけー!」
レンド「おりゃああああああ」
俺は、この時忘れていた。剣を扱う術など、まったくもっていない事実を。
ただただ剣を振り回し、盾を持って突進する。
レンド「喰らえええええええ」
「ギャオオオオオ」
何体か倒せたようだが、まだまだたくさんいる。
ルオール「すげえ…あんな乱暴な斬撃でもしっかり倒せているぞ…」
ニーナ「大丈夫か!?二人とも!」
ヘルン「…無事みたいだね…」
ニーナ「しかしすごいな。レンド、剣術校にも通ってないのに【乱斬撃・攻】を習得してたのか?」
ルオール「え?あれ、ただ振り回してるだけじゃねぇの?」
ニーナ「いや、あの素早さと速度はまさしく中級剣術【乱斬撃・攻】そのものだ。」
ルオール「あんなのが剣術なのか…?まあいい。危なくなったら加勢するか。」
ニーナ「ここはひとまず、|流れ弾|(攻撃を逃れた奴ら)を三人で殲滅するとしよう。行くぞ!」
面白いようにゴブリンが切れていく。ゴブリンには知能はあまり見られない。近接武器は盾で防ぐのは簡単だ。だが、たまに飛んでくる石に対応するのはかなり厄介。盾を構えていても構えていない隙間から抜けていく。何発か腹に直撃するからめっちゃ痛ぇ。突撃しか今のところ方法がないから攻撃をかわすのはほぼ無理だ。でも、こんなとこで負けてはいられねぇ…
またモンスターに滅ぼされるのはこりごりだ。必ず勝ってやる!
「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
一!二!三!四!五!
無数のゴブリンへ斬撃のコンボを叩きこむ。
俺は戦闘中に弱点に気づいた。|こいつら(ゴブリン)は、すべての個体の腹部に痣のようなものがある。こいつを斬ると、一撃で倒せると気づき、俺は攻撃を腹部の痣に定めて続けた。
30分ほど経ち、ようやくすべてのゴブリンを退治した。
「ハア…ハア…ハア…」
呼吸が荒い。さすがに体は限界のようだ。
情報はすぐに脳へ入ってきた。どうやら俺は剣術を習得したようだ。
【乱斬撃・攻】という技らしい。
乱斬撃・攻とは、中級剣術の一つである。
また、乱斬撃系統の攻・守・均の中の一つ、攻の技である。
攻撃力に特化しており、前方に無数の斬撃を与えることができる技である。
ルオール「ふう…ゴブリンはまあこんなもんか…」
ニーナ「確かに、たかがE級モンスター。だがこう束で来ると厄介だ…」
「皆さま…!」
「よくぞご無事で!」
「ありがたやありがたや…」
物陰からたくさんの村人が出てきた。逃げ遅れてずっと隠れていたのだろう。
レンド「安心してください…ゴブリンは殲滅したので…ゴホッ」
ヘルン「…レンド君…大丈夫…?」
レンド「ああ…大丈夫だよ。少し力を使いすぎた…」
魔力は消耗していないが、体力をかなり消耗したようだ。
攻撃もそれなりに受けていたせいで小さい傷をあちこちに負ってしまった。
ルオール「まあ初めてはそんなもんだから気にすんな!よし!それで…お前たち…何してたんだっけ…」
二ーナ「ああ。しっかり食料は買った。最低でも5日ほど持つだろう。とりあえず…レンド。これをやる。食べてから行こう。」
そういわれて渡されたのは大きなパンのようなもの。別の名前があるのかと謎に期待していたが、まったく同じ「パン」だった。
異世界固有のご飯だけでなく、しっかり転生前の世界のご飯も一部存在しているようだ。
ルオール「結局情報はどうすんだ?」
ニーナ「実はな、さっき高い塔があったんだ。そこに行けば何か見えるかもしれない。行ってみないか?」
塔…か。確かに、高いところならここがどこかわかるかもしれない。
レンド「ああ。良いよ…モグモグ…」
…
「うん。結構うまい。」
俺たちはニーナの言う、高く聳え立つ塔へと向かうことにした。