第三話 英雄
注・本作は、残酷な描写が含まれています。
15才以下の方は閲覧を控えることを推奨します。
目の前にそびえたつのは巨大な城…魔法学院だ。
門が開く。城内はまさしく城といった感じで、石造りの豪華な作りだ。
当たりには大勢生徒がいる。俺はもちろん友達はいない。
一から友人を作らなければならないというのは少々不安だが、
なんとかやっていくしかないと思えた。
全員制服を着ている。袖が少し長めの軽いコートのような服だ。だが髪の色がそれぞれなので
見分けは大体つきそうだ。
「新入生の皆さまは、この場所に整列してください」
先生の号令に合わせて一斉に生徒たちが並びだす。
俺も遅れないようにそのあとを付いていく。
だがほかの生徒はまだ小学生4年くらいだ。
俺の方が身体能力を生かせる。
いちばん最初に列に並べた。
「それでは皆さん並びましたね?こんにちは!私の名前はジェルシー・バイオレットです。
気軽にジェルシー先生って呼んでね!」
喋り方がいい先生だ。こちらの緊張もほぐれてくる。
では今日のスケジュールを発表します。
今日はこの学校初日なので、学校中をめぐってみましょう!今回で道を
覚えてくださいねー?」
この城は本館、東館、西館の三つの館に分かれている。
三階建ての本館から。
一階は大食堂、大聖堂、初等部1~3年生教室がある。
二階は中等部1~3年生教室、図書館がある。
三階は高等部1~3年生教室、そして部活動の部室がズラリ。
部活動と言っても、サッカーとか野球とか、そういうのじゃなく、
魔法研究部や、種族研究部など、魔法に関する部活動だ。
東館は、資料館のようになっていて、
世界の歴史や魔法の歴史、種族の歴史など様々な文献、資料が展示されている。
西館は、魔法訓練施設…つまりは体育館のようになっている。
魔術実習時によく使われ、壁が損傷してもすぐに壁の素材は再生され、元通りになる。
「とまあ…こんな感じです!」
ふー。意外と魔法学院が広く驚いた。
あと、途中で知ったのだが、この学院の正式名称は「ベネドフ魔法魔術総合学院」
というらしい。
この世界において「魔法」と「魔術」とでは大きな違いがある。
「魔法」は属性における5段階の|ランク(レベル)に分けられた属性効果のある攻撃。
属性は「炎」「水」「雷」「風」「土」が基本としてある。
また、上位属性として「光」「闇」がある。
全7属性に分けられており、それぞれ使いこなすものも多い。
だが防御魔法など、無属性魔法と言われる例外もある。
また「魔術」は魔法以外の「術」に特化したもの。
属性効果が一切ないため、魔法よりも高度な技が多い。
基本の魔術がいくつかあり、その上には「禁術」と言われる最強の術もある。
だが自己流の魔術を扱う者もおり、強さで
五級~一級魔術師と決まる。
最初の試験で決定するのだが、昇格試験も受けられるため、ランクを上げることも可能だ。
「さて、最初は属性適性試験を受けていただきます!」
属性適性試験?なんだそりゃ?
「皆さんの属性を引き出すため、特別なテストを行います!
内容はとても簡単!言われた通りの呪文を7つ唱えるだけ!
それぞれの属性の呪文を読むことで、自分の属性と反応し、属性覚醒が起こるでしょう!
それでは、名前をお呼びしますので一人ずつお越しくださいねー!」
なるほど。つまりはその呪文とやらを読めば自分の属性が分かるってこったな。
「83番、レンドさん!来てください」
これは…声じゃない…脳内に直接語り掛けられているみたいだ。
これも魔術か?
「それでは、まずは炎の呪文から。…反応はないようですね。
それでは水の呪文…
それでは最後に闇の呪文…反応はないようですね…」
俺はまさかの全ての属性に適していないらしい。
「あら…このケースは初めてだわ…まさかとは思うけど…この子は無属性…?」
教頭先生たちも集まってくる。
「どの呪文にも反応しないだと?」
「無属性の子は初めてですね」
「レンド君。属性がないとなると、君に適性な属性が分からないから、教えるコースを自分で選ぶことになる。つまり君は、特別生徒枠だ。」
「それって…いいことなんですかね。」
「ああ。君は特殊な人材だ。すべての属性に特化していない…つまりこういう見方もできるわけだ。」
「こういう見方とは…?」
「”どんな属性の魔法でも使える”ってことだよ。」
「無属性の人ってあんまりいないんですか?」
「ああ。そうなんだ。私も今日今この瞬間初めて見たよ。」
「私も初めてです。10年に一度とかのペースでしか現れないそうですからね。」
「あの偉大なる英雄、ティアン様も無属性だったらしいからな。もしかしたら君も偉大な人物に慣れるかもな…ってそれは早いか。はっはっは」
教頭先生も気さくな人だ。親しみやすい。好かれている先生なんだろうな。
ところでティアン様って誰だ…?
「あの、ティアン様って誰ですか?」
「…君、まさか知らないのか?」
「は、はい…」
「そうなのか…あれ…君って確か…まあいい。」
何か別のことを言いかけたようだったが、本題に戻された。
「ティアン様とは、300年前、大災厄からこの国を救ってくださった英雄だ。
偉大なる大魔法使いだったらしいな。その証に、今もうちの中庭には記念の銅像が建ってる。」
そうだ。思い出した。確か中庭に大きなツバの帽子をかぶり、長いローブを着た
魔法使いの男性の銅像が建っていた。
「中には|解視(ビジョン)で彼のステータスを見た当時の者がそのステータスに驚いて失神を通り越して死にかけたのだとか…そういう伝説もあるらしいな。
全ての属性の技も使用できたっていうし、君もいつかそうなれるかもな。」
「はい…頑張ります!教頭先生!」
「でも、あんまり無理するなよ。君は今日からうちの大事な生徒だ。
よろしく。レンド・フレーン君。」
「よろしくお願いします。エルシード教頭先生!」
ダルロ・エルシード先生。うちの教頭だ。俺にとっては、気さくで親しみやすい先生である。
「あ、そうだ。君は確か、寮だったね?」
そうか、寮なのか…少し憧れていたんだよな…
「はい!」
「じゃあ、あとは管理の人によろしく!転移!」
俺の足元に一瞬で魔法陣が現れた。
今日の、魔法図鑑!
今日はコレ!【炎魔法レベル3 火矢!】
いちばん最初にマートンさんが使った魔法だ!
マートンさんは手から二本溜めて打っていたが、実は、力を溜めることで何本も連続で発射できるんだ!
ただし、自由に攻撃を動かせる便利な魔法だから、その分魔力を使いすぎて疲れちゃうかもだから、
気を付けて使わないとな!
それじゃあ、次回もよろしくなッ!