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一人だった少女と見守るこいびと

作者: 芽依

少しだけ人物紹介

奈々 本作の主人公で高校1年生。自己肯定感が低く、自信がない。いつもおどおどしていて、心を開いていても心の内の全ては話せずにいる。話したくても見捨てられる恐怖心から話せずにいることが多々ある。これが自身を追い詰めている原因だとは本人は気がついていない。高校でできた4人の友達が初めての友達。


晴翔(はると) 奈々の初めての友達であり恋人。高校生だとは思えない大きな器で奈々の不安や思いを受け止める。奈々を傷つけたくない、悲しませたくないと思っている。だが、泣かせる権利があるのは恋人だけだとも。


(しゅん) 晴翔とは中学の時からの友人。晴翔のことをよく理解していて、奈々と晴翔の間を取り持った回数はいざ知らず。奈々から晴翔の話を持ちかけられたらしっかり話を聞く。いつも2人のことを見守っていて幸せになってほしいと思っている。恋人の美緒のことを溺愛している。


美緒(みお) 隼の恋人であり、晴翔と奈々の友達。奈々のことをとても理解している友達であり、姉のような存在。誰よりも奈々の幸せを願っている。晴翔の次に奈々のメンタルケアを行い、奈々が抱いている悩み事の相談によく乗っている。晴翔の奈々に対しての愛情表現の少なさに晴翔に対して怒りを抱いていることも。そのせいか、ときどき晴翔に対して当たりが強い。


(れん) 奈々以外とは中学の時からの知り合い。この4人を大事な友人と認識している。この4人が幸せならそれでいいと思っている。ぶっきらぼうなところがあるが、とても面倒見が良く察する能力が高い。隼と美緒からの扱いはそこそこ、いやかなり?雑。

「あ、雪だ...」

3年ぶりに雪が降った気がする。

そして、高2への進級のタイムリミットが終わりに近づいている証拠(しるし)でもあった。

今日は朝から雪が降ってきた。起きたときはまだ雪は降っていなかったが、いつもより暖かいような気がしたことに納得しながら帰宅するための電車に乗り込む。そう、午前中に大雪警報が出たことで昼休み前に下校になったのだ。電車やバスが止まる前に帰らせてくれるのをありがたく思う反面、とても気分を憂鬱にさせた。理由は単純で帰ってからは何もする気力が起きないからだ。


私は奈々。高校1年でまだ進路が決まっていない女子高生、と言えたらどんなに楽なのか分からない。『決まっていない』のではなく、『なくなった』の方が正しい表現だからだ。

私は高校に入る時にエンジニアになりたいと思い、この学校で勉強をして卒業と同時に就職したいと考えて入学した。だが、小学校・中学校合わせて約5年不登校だった私は毎日学校に通うことで精一杯。進路について考える余裕もなかった。そのまま自分が何をしたいのかがわからなくなった。


初めての学校生活で疲れはあるものの、生まれて初めての友達が4人できた。小学校のときにクラスメイトはいたが、友達ではなかった。本当に友達だったらいじめられてるのを遠くから眺めていたり、いじめに加担することはないんじゃないかと周りにいた大人から聞き、これまで友達がいなかったという事実を知り、驚愕したことは未だによく覚えている。



友達の隼と美緒と蓮は私と晴翔が恋人であることを知っている数少ない人であり共犯者。なぜ共犯者かというと、私と晴翔が親と先生には恋人であることを黙っていたいことを伝えた上で誰にも言わないでほしいと頼んでいるから。理由は奈々が先生を信用できないこと、奈々と晴翔の関係性を勘繰ってくる先生に2人ともうんざりしているから。3人は分かっていてくれていて、何も話さないでいてくれている。それはありがたいけど、危ないときは何回もあった。


そして色々なことが繋がっていき、冒頭に戻る。

久しぶりに見た雪にテンションが上がっていく一方で表情は死んでいく。感情は忙しなく動いているのに表情筋が動かないことを奇妙に感じなくなったのはいつからだろう、思いながら電車の壁に寄りかかる。考えているのは“思い出せない”自分の過去。


私は小学5年生のときに担任とのいざこざとクラスメイトからのいじめで精神的に病んでしまった。

どんなに周りに助けを求めてもクラスメイトからは「奈々はわたしたちを馬鹿にしてるの?」と言われ、担任からは「奈々さんは優秀だし、助けがなくてもそのくらいできるよね」と言われる。失敗すれば「なんでできなかったの?」と責められる。ポジティブだった性格はだんだんと暗くなり、自信がなくなっていった。

そのまま学校に行くことがとても苦痛となり、学校に行けなくなった。そこから中学3年まで不登校だった。

学校に行けなくなってからはずっとフリースクールのような場所に通っていたが、部分的な記憶喪失で不登校のときの記憶がほとんどない。あるといっても家族との記憶が断片的にあるだけ。

現在(いま)は高1で16歳だが、記憶がおよそ5年半ないので精神年齢は10歳あたりだろう。16年しか生きていないのに、16年のうちの5年以上の記憶が無いのは進路を考えるのにはかなり“不利”だった。おまけに本人は同年代と同じか、それ以上に現実が見えてしまっている。本人が進路を考える上で辛くなっていくのは当然とも言えた。


家の最寄り駅に到着するアナウンスが聞こえ、ふと意識が浮上した。考えながらそのまま寝てしまったらしい。よく起きれたなと思いながら電車を降りる準備をする。

やっぱり外は寒く、息が白く染まる。それを見ながらそっと細く息を吐き出す。今後のことをもう考えたくないと言うかのように...


それから1年が経った。進路を考えたくないと言いながら、現実逃避かのように中学校の範囲から勉強していった結果、偏差値60程度の大学には問題なく入れるのでは?と周りに言わせるほどの学力になった。今は学費免除を狙い大学進学希望を出しているが、学費免除がもらえないのだったら大学に行かなくてもいいやと思っている。これ以上は家に負担をかけたくないし、奨学金を借りてまで大学にいく必要が自分に感じられなかったからだ。奈々は大学は未来の自分への先行投資と考えていて、自分に先行投資をする必要性が感じられなかったことが大きい。自分に自信がないことが余計に自分を苦しめていた。

学校に行っても最近は友達に会うのも辛い。会えるのは嬉しいけど、進路をまだ決められてない自分と進路がほとんど確定している友達を勝手に比べ、劣等感に苛まれているから。そんな状態で自分は彼女らに会っていいのかと考える。


それからさらに1年が経った。

「奈々ちゃんおはよう!あれ、晴翔くんは一緒じゃないの?」

と学校に着くなり美緒ちゃんに言われた。美緒ちゃんの後ろには隼くんと蓮くんもいる。

「美緒ちゃんに隼くん、蓮くんもおはよう。私は晴翔くんといつも一緒なわけじゃないよ」

と言ったら、美緒ちゃんにありえないって顔をされた。なんでそんな顔をするの?いつも一緒にいられるわけがないのに。

私以外のみんなは大学受験が終わっている。晴翔くん以外は年を越す前に終わっているし、晴翔くんも合否結果が出たらしい。残るは私だけ。入試形式的に遅くなっているけど、これは私がダメなのかなって、もっと違う未来が作れたんじゃないかって思い詰めることが増えた。それでも誰にも相談しなかったから、美緒と晴翔をとても心配させていることに気づくことができなかった。

いつも通り一緒に話していると、結局辛くなってきて最終的に話の輪から外れる。いつも自分がダメ人間に見えてきていつも落ち込む。今日は下校までその状態にならなかったからいつもより少しは頑張ったなって、てくてくと考えながら歩いていた。すると、隣から頭を撫でながら「奈々、どうした?」と晴翔くんが聞いてきた。それに答えるときに少しだけ口角を上げて、

「何もないよ。あるとしたら美緒ちゃんと隼くんは今日も仲良いなって思ったことくらいかな」

と少しだけ嘘をつく。今日も仲がいいなと思ったのは本心ではあるが、本心でもない。やっぱり何かに気づいた晴翔くんは少し話そうって言って繋いだ手を引っ張った。


「奈々は何を隠してる?」

と、開口一番に言われた。私は驚きすぎて声を失っていると、

「何かを隠そうとしているのは気付いていたよ。でも、それで奈々が辛そうにしているのを見て見ぬふりすることはできなかった。」

と言われ、言葉に詰まった。晴翔くんは私のことをかなり見抜くのだ。それでもここまで黙って見守ってってくれた恋人に何も言わなくていいのか、と悩む。話せるなら話したい。でも、とおろおろして考えがまとまらないでいると、そっと抱きしめられた。

「僕は奈々が話してくれるタイミングを待つよ。そんなに焦りすぎなくていい。奈々は奈々なんだから。」

と。私は結局何も言えずに恋人の腕の中に収まっている。

(みんなの進路は大学が決まっていくにつれて具体的になってるのに、自分は大学が決まっても未来が見えないから、なんて晴翔くんには言いたくても絶対に言えない。これで嫌われたらぞっとする。嫌われたくない、見捨てられたくない...)

こんな思いがあってもこの思いが音に、言葉になることはなく、涙と一緒に溢れた。そんな奈々を晴翔は大丈夫だよ、大丈夫なんだよと言いながらずっと抱きしめていた。




高校を卒業してからなんだかんだで2年が経った。大学2年生になってもみんなと交流があり、いつも私の家に集まって近況報告とか、高校生のときの話とかをしている。私の家といっても晴翔くんと私が同居している家だ。

私は家族に迷惑をかけたくないと言って、学費免除で大学に入ってからは一人暮らしを始めたが、一度だけ音信不通になったことがある。倒れたわけではなく、普通に睡眠不足状態でレポートをやり、レポートが終わった直後に気絶するかのように寝てしまったから連絡に気がつかなかっただけなのだが。心配した友人たちはここぞとばかりに同居を進めてきた。晴翔くんが一人暮らしをしていたからっていうのもあるだろうが、あの時の3人の気迫は怖かった。それと今はお互いの親が恋人なのを知っているからいいが、知らなかったらと思うと...普通に怖い。いや、まじで怖い。

そんな懐かしいことを思い出しながら、ベランダに出る。ベランダから見える景色は都会と田舎の中間あたりで綺麗な夜景に見えなくもない。一緒に高校のことも思い出す。まだ自信はついていないし、自己肯定感は低いままだから、高校生のときと同じだろう。だけど、大学に行ったことで少しは成長できているといいなと思って夜景を眺める。

そうしていてどのくらい時間が経ったのだろう。後ろから急に抱きしめられた。だけど後ろを見なくても誰かはわかる。

「ねぇ、晴翔くん。いきなり抱きしめられたら誰だって驚くし、ちゃんと怖いからやめて」

とまずは苦情。言わないで察しては私はとても苦手だから、なるべく言いたいことはお互い言うようにしている。だけど晴翔くんは私の心の中を見抜いているのかただ笑っているだけ。不貞腐れてむぅっと頬を少しだけ膨らませると、抱きしめ直しながらとても優しそうな目で私のことを見つめてこう言った。

「そんなことを言ったってね。僕が抱きしめたかっただけだし、奈々も本気で嫌だったわけではないでしょ?」

そのあとに少し間を置いて耳元で何かを囁いた。それを聞いた私は顔を真っ赤にさせて「ばか、ずるい、好き」とだけを言った。晴翔はその反応に嬉しそうにしながらおでこをくっつける。それで余計に顔が赤くなる私を愛おしそうな目で見ていてくすぐったく感じる。


急に部屋から「晴翔たち早く戻ってこいよ!ゲーム大会するぞ!!」と蓮くんが言っているのが聞こえてきた。ふと晴翔くんの顔を見上げると優しい目でこっちを見ていた。目が合うとすごく恥ずかしいし照れるけど、嬉しいとも思う。そんな思いを抱きながら、みんなのところに戻ろっかと言って私たちは手を繋ぎながら部屋に入っていった。




晴翔が奈々の耳元で囁いた言葉。それは


「好きだよ。いままでも、そしてこれからもずっと“あいしてる”」

最後まで読んでくださりありがとうございました。


隼と蓮があまりにも喋ってくれなくて何回も書き直したのですが...無理でした。

2人が全然喋ってくれない((T_T))

あとあと奈々と晴翔はもっといちゃついて!!恋人同士がいちゃついても誰も咎めないよっていう個人的な偏見などがありましたが、この形に落ち着いたみたいです。

奈々の過去を考えると砂糖吐くぐらいいちゃついても誰も怒らない気がするのは私だけ?

キャラクターたちがそのうち意志を持って行動するようになることがあるって過去に聞いたことがあるのですが、こういうことなのでしょうか??


よければ他作品も読んでくださると嬉しいです。(1作品しかないけど...)

感想といいねもぜひぜひお願いします!!

(語彙力が死んでいてごめんなさい。またどこかでお会いできたら嬉しいです!)

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