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第20話  雷纏う蛇

遅くなりました……。ここまで遅くなった理由は、活動報告に書いてあります……。申し訳ありませんでした……。

「見ろ!まるで敵がゴミのようだ!」


 思わずそう口走ってしまうほどに、戦況は完全に覆っていた。あれ程苦戦を強いられていたというのに、今では高笑いしながら魔法を放てる程に余裕が生まれている。

 テオが時間を稼ぎ、敵との十分な距離を作ってくれた結果だ。


「お前の努力は無駄にはしないぞ、テオ……!」

「僕はまだ死んでないよ!?」

「――意外と耳聡いんだな」


 俺の呟きを敏感に察知したらしく、背後に位置するテオが抗議の声を上げた。

 ちなみに、剣に込められた魔法を全弾撃ち終えてしまった彼には、最早戦闘手段が無い。剣を振るうことくらいならば出来るだろうが、相手はその身の硬さからダイアモンドの名を冠された魔獣、ダイヤウルフだ。

 素人のテオではまず間違いなく、相手に傷を負わせることはできないだろう。


 ――まあ、方法ならあるんだけどな……。


 テオに、再び戦闘手段を与える方法が一つだけ存在する。

 ……簡単な話だ。銃の弾が尽きれば補充すれば良いように、剣に込められた魔法が尽きたのならば、俺かミラが再び補充してやればいいだけの話。


「――まあ、そんなことをする必要もないんだけど、さ」


 目の前に映る光景を眺めながら、一人呟く。

 ……そこでは真横に走る雷という、自然界ではおよそ発生しないであろう現象が、狼達の命を奪い去っていた。

 言うまでもなく、ミラが放った魔法だ。

 いかに硬い敵であっても、体内を巡る電流には耐えきれないのだろう。彼女の掌から放出されている雷に触れた狼達が、次々と倒れていく。

 お前はジェダイの騎士かと一言申したい。その内、フォースと共にあらんことをなんて言い出しそうだ。


「フッ!!」


 ミラの、短く切るような呼吸音が周囲に響いた。

 そして、その一瞬で身体に力を込めた彼女は次の刹那に、自らの右腕を振るった。――雷を掌から放出したままで。

 今も尚掌から放出され続けている雷が、彼女の右腕の軌道に沿って縦横無尽に蛇のごとく動き回る。


「さあ、来なさい……!」


 その言葉と共に、彼女は身構えた。掌から放出し続けている雷をあたかも鞭の様に扱いつつ、自身へと迫る五つの敵影を迎え撃つ。

 

 ――お前はどこの女王様だよ……。いや、『王』であることには変わりないんだけどさ。


「――シィッ!!」


 声と共に雷の鞭が放たれた。一瞬にしてゼロからトップスピードへと加速した彼女の右腕は、文字通り必殺の一撃を魔獣の群れへと撃ち放つ。

 まずは一手。地を駆ける四匹を、雷の鞭を一文字に薙ぎ払うことで焼き払った。


「こんのっ……!」


 ならばと天に届くかとすら思えるほどに高く跳び上がる狼の姿もあったが、斬り上げる要領で振るわれた雷に触れ、そのまま天高く昇っていってしまった。

 ――先程までの苦戦が嘘だったかのように、敵がバタバタと倒れていく。

 ――彼女がその腕を振るう度に、魔獣の数がガリガリと減っていく。

 ……無双という言葉は、きっとこういうことを指すんだろうななどと、ぼんやり考える。

 圧倒的、という言葉すら生温い。最早、戦いの趨勢は誰の目から見ても明らかであった。

 そしてそれは、ダイヤウルフ達にも当てはまる。

 当初は俺達を取り囲むように布陣していた魔獣達だが、今ではその布陣も機能していない。

 ……それもそのはずだ。その布陣が機能するだけの戦力――頭数を、今の彼らは有していないのだから。

 現状の敵の布陣は、ただ単に横に広く展開『だけ』のものに過ぎない。そこにこちらの突破を防ぐ効果も、確実に獲物を仕留めようとする意志も認められなかった。

 ……既に、勝負は決していた。


「――ハァッ!!」


 裂迫の掛け声と共に、ミラは雷の鞭を振るう。

 彼女に操られた雷の蛇は、まるで本当に命があるかのように大地を這い、地を駆ける魔狼を飲み込んだ。

 だが、それも一瞬のことだ。担い手の令に従い、大蛇は次なる標的の下へと身を翻す。

 ……雷蛇が通り過ぎた後には、狼の姿をした肉塊の姿がそこには残っていた。為す術もなく大蛇に食べられた狼の、なれの果て。

 おそらく、苦しむ暇すら無かっただろう。飲み込まれた時の姿をそのままに、狼だったモノは、肉が焼き焦げる異臭を辺りに撒き散らしていた。

 ……相変わらず、魔法の威力が段違いだと思う。

 さっきから俺も魔法を撃って、戦闘に参加してはいるのだが……正直、俺の魔法が全くといっていいほど目立たない程に、俺と彼女の魔法には、大きな差が開いている。


「っていうか、俺の魔法は必要なのか?無くてもいいんじゃないのか?」


 そんな呟きが思わず漏れるくらいに、今回の俺は目立っていない。居る必要があるのかと自問してしまうくらいだ。

 ……いや、頑張ってはいるんだぞ?ミラが撃ち漏らした敵を倒したり、死角から迫る敵を倒したり。結構貢献していると自負している。ただ――、


「なんというか――地味、ですよね……」

「正直な感想をありがとうございます!?」


 戦闘の終わりを敏感に感じ取ったのか、いつの間にか荷車の中から出てきていたアルティミシアさんが毒舌を放つ。――っていうか、戦闘前といい今回といい、俺に何か恨みでもあるんですかアルティミシアさん。

 正直に言ってくれたおかげで、思わず涙が溢れてきたぞコンチクショウ。


「見ろ……。まるで俺がゴミのようだ……」


 目の前でミラが最期の一匹を焼き尽くしている中、俺は仲間からの思わぬ精神攻撃により、まっ白な灰へと化していた。

短いですね……。とりあえず、今回はコレで勘弁してください……。

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