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第17話  聖剣だとか魔剣だとか

今回も遅くなりました……。

世界樹が、世界樹3が悪いんです!あのゲームが私を誘惑するんです!!

「アルティミシアさん、調子はどう?」

「ええ、大丈夫です。お気遣いありがとうございます」

「そうですか」

「ええ」

「…………」

「……………」


 対応に困る女性だなぁと思う。あまり他人と積極的に会話をするようなタイプではないのか、彼女は必要最小限のこと以外は喋らない。

 会話が続かないのだ。挑戦すること既に数回。そのいずれもが今のように、話の華が咲き開くことも無く終わりを告げていた。


「…………」


 仕方がないので、俺も彼女に倣って外の光景へと目を向ける。

 荷車の外に映る光景では、緑の大地がゆっくりと走っていた。







 現在、俺達は馬車の中で揺られている最中だ。あの後テオの治療を済ませた俺達は、オーガから救い出した女性――名前をアルティミシアというらしい。本人から教えてもらった――を連れて、共通の目的地である聖アルト王国へと向かっている。

 アルティミシアさん曰く、そこまでいけば本部の者と合流できるだろうとのことだ。


 ――本部の者、ねぇ……?


 ということは、アルティミシアさんは何らかの組織に所属している人間ということになる。例えば、商人やら軍人やら……いや、軍人の線は無いか。武器を持たない兵士など存在しないからな。

 仮に休暇中の兵士だったとしても、この世界で武器を持たずに街の外を歩き回るはず人間がいるはずがない。いや、ミラのように無手での戦闘が得意というのならば分かるが、彼女の身のこなしを見るにその可能性は無いだろう。あまりにも隙を見せ過ぎている。

 ……とくれば、商人だろうか?


 ――貴族だろうと思っていたんだけどなぁ。


 そんなことを考えながら、彼女の顔をチラリと見る。整った顔立ちが尚も外の光景を眺めていた。見知らぬ顔の中に紛れても一切気後れしていない。

 とはいえ、他人に対して必要以上に話すこともせず、ただひたすらに自然体のままで過ごしているその様子は、おっとりしている――というよりもむしろ、少しズレているという印象を俺に抱かせた。


「…………」

「――ハァ……」


 思わず溜息が零れ出た。この重い空気の中でよく平気でいられるよなと思う。

 一番後方に座るアルティミシアさんを右側に構えている俺は、そのまま左へと顔を動かした。

 チラチラとこちらへと目線を向けているミラと、視線がぶつかった。もっとも、彼女が視線を向けている先は俺ではない。件のアルティミシアさんである。

 ミラの表情は厳しい。まるで敵を見るかのように相手を射抜く視線を、アルティミシアさんに向けている。

 そういえば初めて会ったときから、彼女のアルティミシアさんを見る視線は厳しかったような気もする。何か思うところでもあるのだろうか?

 では、次に視線を前方に向けてみよう。

 そこで壁にもたれながら座っているのは、テオだ。彼もやはり、アルティミシアさんへ厳しい視線を向けている。その双眸に込められた感情は――警戒だろうか?少なくとも、憎悪の感情ではないように思える。

 はて?この二人の間では一体何があったのだろうか?少なくとも馬車に乗る前までは、こうではなかったように記憶しているのだが……。

 ――そういえば馬車が発進してすぐに、テオ達が何やら話していたな。残念ながらその内容までは聞き取れなかったが……もしかしてそれが原因なのか?


「…………」

「………………」

「……………………」

「――ハァ……」


 この重い空気に耐えきれない俺は、再度溜息をもう一つ。


 ――誰か助けて。






「そういえば――」

「ん?」


 ふとあることに思い立った俺は、御者台に座るミラに声を飛ばした。

 これにはこの重苦しい空気をどうにか払拭したい、話題が欲しいという思惑もあったのだが、それはさておき。


「結局、テオは魔法を使えるようになったのか?」


 もしもそうなのだとすれば、俺の固有魔法は――俺の判断は間違っていたということになるんだが……。


「あ~、うん。アレはねぇ……」


 そこまで言って、ミラは言葉を途切れさせる。

 しばし考え込んだ後、「どう説明したものかしら」という言葉と共に、彼女の口が開かれた。


「あれはね……。魔法というよりも、魔術に近い――かも?」


 かもってなんだ、かもって。


「うーん……。テオの短剣に、私が魔法を込めたのは知っているわよね?」


 盗賊達と戦った翌日のことだな。覚えているぞ。


「ああ、魔法が尽きた短剣にミラが魔法を込めたんだっけか」


 その時に込められた魔法が、ランシールの角を切り取る際にテオが使っていたモノだ。奴の角をバターのように切り裂いていたアレ。


「そう、ソレよ。今回の魔法はその剣を利用していたわけね」

「え?でも、あの時放たれた魔法は、あの時とは違う魔法だったぞ?」


 あの時オーガの腕を千切り落としていた魔法は、レーザーのような魔法だった。断じて、風の刃などではなかったと記憶している。

 まさかテオの短剣は、元々込められていたものとは別の魔法でも同じように、その身に溜めておくことができるのだろうか。


「私も最初は、テオの短剣は『風の魔法を溜めこむことができる』魔剣なんだと思っていたんだけど……、よくよくテオに聞いてみたら『どんな魔法でも溜めこむことが出来る』聖剣なんだって分かって――」

「待て待て待て」


 知らない単語が一気に出てきたぞ!?魔剣に聖剣だって……?

 俺はちらりと腰に携えている二本の魔剣へと視線を落とす。魔剣というのは、このゲザさんから受け取った剣の様な物のことだよな?それと――聖剣……?

 その名前だけならば、ロトの剣とかエクスカリバーだとか、そういった高性能の武器を思い浮かべるわけだが……この世界でもそういう認識でいいんだろうか?


 ――たぶん、違うんだろうな。


 というよりも、違っていてほしい。だって、そんな聖剣クラスの物が量産されている世界って嫌じゃない?今のミラの台詞だと、この世界では聖剣魔剣の存在は、俺が思っているよりも遥かに身近な存在なんだということが明らかなわけだし。

 ……天空の剣が店で売られていたら、どう思うよ?3000Gとかで売られてたら。

 

 ――イヤでしょ?


「あー、うん……。そうか、ショウには聖剣と魔剣の説明もしなくちゃいけなかったわね」


 そして、ミラ先生の授業が始まった。






「――というわけ。分かった?」

「ああ、問題ないぞ。成程な、そういうことだったのか」


 ミラの問いかけに対し、首を縦に振る。

 聖剣と魔剣の違いは、簡単に言えば『その武器に付加されている能力や魔力が先天的な物なのか、後天的な物なのか』という点に因るもので、両者の間にはあまり差がないとミラは言う。

 元々は普通の武器とは違って特殊な能力を持つ聖剣は稀少価値が高かったそうなのだが、それが使用する鉱石と特殊な製法さえ揃えば誰にでも作ることが出来ると知られてから後、今では普通に――それでも通常の武器よりも高価なのだそうだが――市場に出回っているとのことだ。

 まあ簡単に言えば、聖剣とは『特殊な鉱石と手法で作られた武器』のことだと認識していればいい。最も、鉱石と手法さえ揃えば聖剣を作ることは出来るが、それでも出来上がる製品は職人の手腕によってピンからキリまであるのだそうだ。……値段も含めてな。


 ――出来の悪い聖剣は聖剣と言えるのかという疑問は置いておいて。


 その聖剣に対しての魔剣の存在だが……、此方は『何らかの要因によって後天的に特殊能力を得た武器』と認識して貰いたい。

 ――この場合の何らかの要因というのは、大概が『血液』によるものらしい。

 ミラ曰く、その生き物の魔力が最も多く含まれているものが血液であるらしい。

 ちなみにこれは合間にテオから教えてもらった情報なのだが、なんと血液には魔獣の換金部位よりも遥かに多くの魔力が含まれているらしい。ただし、買い手にはそれがどの魔獣の血液なのかが区別がつかないため、血液の次に多く魔力を含んでおり、見分けが容易につく換金部位を主に買い取っているのだそうだ。

 閑話休題。

 そしてそれを幾多の戦いを経て浴び続けた結果、何らかの魔法要素を持つようになったもの――それが魔剣だ。

 ……なんて言っても、いまいちピンと来ないだろうな。そうだな、例えを出すとすれば、向こうの世界での『妖刀村雨』を想像してもらえばいいかもしれないな。

 アレは人を斬り過ぎて、やがては血を求めるようになった呪われた刀のことだ。原理としては、此方の魔剣も同じようなものだ。

 材質や手法から能力を得た聖剣に対して、返り血に含まれる魔力を吸い取って能力を得た魔剣。


 ――この魔剣も、大量の血を吸っているんだろうか。


 チラリと、腰の魔剣に視線を落としながら、そんなことを考えた。






「だから、伝説の勇者の武器は聖剣でありながらも同時に魔剣でもあるのよ」

「……ああ、そうか。魔王の血を歴代に渡って吸ってきたわけだからな」


 生贄として捧げられた魔王の血、か。それはまた、極上の餌だな。そんなものを一度ならず数回も浴びれば、あっという間に魔剣に変わるだろうさ。

 ……っていうか、聖剣の特性と魔剣の特性って並び立つことが可能なんだな。


「――まあ、武具としては創られてからの年月が経ち過ぎているから使えないだろうけれど、でも魔力媒体としては超がつく程優秀よ。というよりも、これ以上の物は存在しないでしょうね」

「あ、伝説の武具はもう使えないんだ?」

「そりゃあだって、創られてから何千年も経ってるからね」

「さいですか……」


 変なところでリアルなんだな。伝説の武具も、寄る年端には勝てないということか?


「まあ、聖剣と魔剣の違いは分かったよ。んで、テオの魔法の件だが……」


 とはいえ、ここまで来れば大体の答えは予想出来ているんだが。


「そうだったわね。――テオ、ちょっと短剣を貸してちょうだい?」

「……うん」


 ミラが差し伸べた手に、テオが短剣を乗せる。

 返答に時間がかかったのは、今も尚彼がアルティミシアさんを警戒していたからに他ならない。本当に、何があったんだよ?


「つまり――こういうことよ」


 そう言って、彼女は右手に握る短剣を天に――いや、この場合は屋根か――に掲げた。


「魔法が創造されてこの世に現れるその僅かな瞬間に、この剣をその魔法が現界する場所に置いておくの。そして、あとはこの剣にその魔法を吸収させる起動呪文トリガーを言えばいい」


 そして、言葉通りにその点に対して集まる魔素と現れ出る力。

 それはまさしく魔法生成の現象であり、其れを彼女は確かに、


「弱化版『炎の球』――装填」


 創造した魔法を、短剣に込めた。本来ならば掌に現れる筈だった力の塊は、しかし現界することなく剣に収められる。

 魔法を込められた際に短剣が一瞬輝いたことを除けば、目の前の世界にはなんら変化が生じることはない。


「じゃあ、他人の放った魔法を吸収することは出来ないのか?」

「無理ね。この剣が魔法を吸収することが出来るのは、その魔法が完全に形作られるその僅かな瞬間のみよ」


 「まあ、それでも十分に凄いんだけどね」とミラは続ける。「普通の聖剣は、保有できる魔法は一種類しかないはずだから」とも。

 それが本当ならば、この短剣はとんでもない性能を抱えていることになるな。


「確かに、テオには魔法を唱える力は無いわ。でも――」


 次に、彼女は剣の先を外へと向けた。


「でもこうすれば――私や貴方が剣に魔法を込めてあげれば、彼にも魔法を扱うことが出来る」


 ミラはそこで一息を吸い、


「出でよ、『炎の球』」


 ……解放のキーワードを口にした。

 短剣に今まで封じられていた魔法は、しかしその楔を外された瞬間に自由の身となった。寸分も待たずに剣の先から炎の球が現れ出る。

 先は適わなかった現界の恨みを晴らすかのように、その炎球は周囲に熱気を撒き散らしていた。


「――発射」


 令を受けた魔法は、その意に従い宙を走りだす。荷車から飛び出していった炎の球はやがて空の彼方へと消えていった。


「改めて見ると、凄い聖剣ですね……」


 その光景を眺めていたアルティミシアさんが、感嘆の溜息と言葉を吐きだした。

 そういえば彼女は、先の戦闘でもテオが魔法――いや、魔術か?――を使っているところを見ているんだっけ。


「――ええ、そうね。剣自体にも限界があるから余り強い魔法は込められないし、扱う魔法が変われば制御法も変わるという難点もあるけれど……その点さえ除けば、優秀な武器よ。これは……」


 そう言ってテオに短剣を返すミラだったが、その表情はどこか硬い。

 本来ならばその理由を問いたいのだが、生憎ここは馬車の中だ。内緒話を持ち掛けようにも、簡単にはいかない。

 ……まあ、ミラの表情が硬い理由に関しては、ある程度見当は付いているんだけどな。さっきの説明の中で、俺も違和感を確かに感じていたのだから。


 ――ならば……。


(なあ、ミラ……)

(……!――なに?)


 以前盗賊との戦闘でミラがやっていたように、俺も周囲に気付かれないように言葉を風に乗せる。

 練習も無しで発動させた魔法だったために上手くいくか心配だったが、どうやら成功したらしい。俺の言葉を聞き取った彼女も同じように、魔法で風に言葉を乗せて返答してきた。

 ……成程、これは便利だな。対象以外には声が漏れることもないから機密保持は完璧だ。


(テオのことなんだが……あの剣はそう簡単に手に入るようなものなのか?)

(……いえ。アレは紛れもなく一級品よ。少なくとも、一般人では手も出ないわね)

(そうか……)


 成程、やっぱり彼女の表情が硬かった理由はこれだったか。ここに来てテオの素姓に関しての疑問が上がったことが、彼女の悩みのタネだったわけだ。

 今までは、テオはただの村民の息子だと俺達は思っていた。盗賊に襲われて滅んだ村の、身寄りのない少年なのだと。

 だが、彼が持っていた短剣は一般人では手も出ないような一級品の武器だとミラは言う。

 だとすれば、


 ――テオは、一体何者なんだろうな……?

 14,5話の前書きで書いたことなんですが……既にエンディング(ルート)が複数完成しているんですよね……。


 とりあえず、よほどキャラの人気が偏ったりさえしていなければ、本来のエンディング(ルート)で進めていこうかと思っています。

 

 そして、話が完結した際に要望や余力があれば別キャラのエンディング(ルート)を書いていくという感じにしようかと思いますが――どうでしょう?


 分岐ルート直前で読者の皆様にアンケートをとるという方法も考えたのですが、ねぇ……?


 ――まあ、当分先の話ではあるんですが……

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