血の絆編 第一章
「詠、あの少年をあまり虐めるな。俺たちの計画に問題が生じるだろ。」
「は〜い!でもさ、棗彼奴俺たちのこと覚えてなさそうで、ムカつくんだよねぇ」
「だとしても、今は彼奴にちょっかいを出すな。折角目覚めたというのにまた眠られては困る。」
「まぁそうね。じゃあ今はまだ様子を見るとしますか。」
そういうと、詠と棗の姿は風と共に何処変え消えてしまった。
その頃楓は紅葉を見失ってしまい焦って居た。
紅葉もまた夢中で走ってしまい迷子になって居た。
「夢中で走りすぎちゃった。此処何処だろう?」
(楓、怒ってるかな?何で僕逃げっちゃったんだろう?・・・)
何で・・・何で・・・今の自分が何者なのかわからない・・・
自分は何のために生きているのかわからなくなる・・・
楓は何であんな顔をしてたんだろう?
何で僕此処に居るのかな?
一方楓は、紅葉が目覚めてくれて嬉しさのあまり紅葉を気遣ってやれなかったことを後悔して居た。
(また俺は繰り返すのか・・また彼奴を喪うなんて嫌だ‼もう、あんな思いしたくない‼)
楓はもうあの日の様な思いはしたくなかった・・
楓にとってあの日の出来事は、消えることの無い何時までも楓にとっては呪いのようなものなのだ。
あの日から楓はしばらくの間誰とも話さなかった・・
楓は闇に堕ちそうになって居た。
でも、今日、紅葉は目覚めた。
俺は、安堵していた。
俺は、紅葉が目覚めてくれて少し救われた気がした。
俺の罪が消えたように感じた
それは俺の自己満足だって分かってはいるが、それでも救われたように感じた
「此処本当に何処だろう?」
(楓を悲しませた。僕は何のために存在しているのかすらわからない)
紅葉は迷っていた。楓の気持ちに自分はどう応えるべきなのか自分自身には、
わからなかったから・・・・
(紅葉・・・・目覚めたのか?)
「えっ⁉誰。僕を呼んでるのは誰なの?」
(私は君の味方だよ。さぁ、私のところにおいで・・・君はあの楓という鬼族に騙されているのだよ)
「騙されている?僕が。」
(あぁ、君は騙されているんだよ)
「紅葉‼」
後方から、紅葉を呼ぶ声がした
紅葉は、慌てて振り返ると楓が居た
楓は息を切らしていて、息を整えるためか少しの間黙っていた。
(楓、僕を必死に追いかけて来てくれたのかな?)
「か、楓。いきなり走ったりしてごめん。僕もまだ今の状況がよく分かってなくて・・・。混乱してた。本当にごめん」
楓はなにか考えているのか黙っていた。
だが、沈黙が終わり楓は・・・。
「お、俺の方こそ紅葉の気持ちも考えず、素っ気ない態度をとった。ご、ごめんな」
楓は、少し恥ずかしそうに顔を赤くしていた
紅葉はそんな楓を、少し可愛いと思って居た。
楓もまた、紅葉が少しだけでも笑顔を見せてくれたことが嬉しく、二人はお互いの顔を見合わせながら微笑んでいた。
「紅葉、家へ戻るぞ」
楓は微笑みながら、紅葉に手を差し伸べた。
「うん‼」
紅葉は楓の手を取り、二人は笑顔で家へ向かった。
紅葉は、今まで自分の中にあった不思議な気持ちが何だったのか、帰りながら考えていた。
自分でも抑えが効かないあのモヤモヤとした気持ちは何だったのか?
そして、あの時聞こえた声は何だったのか・・・。
そして、まだ何かを忘れている様なこのどこか不安になる気持ちは、何なのか。
まだ、紅葉には理解出来ていなかった。
この感情が悲劇を生むことなんてまだ、誰も気づいてはいなかった。