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騎獣転生  作者: 赤月 朔夜
第04章 強制転移
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第092話 女子会(爬虫類)

 川から陸へ上がったシロさんは日向へ移動して横になると目を閉じた。

 水浴びをした後の日向ぼっこって気持ちいいんだよね。

 よし、せっかくだから私もやろう。


 そうと決まればと川へ入った。

 しゃがめば全身が浸かるくらいの水深がある。水は冷たくてそれがまた気持ちいい。


 私が水に浸かっているとエメさんも川へ入ってきた。

 数分後に川から上がる。エメさんもだ。

 次はどこで日向ぼっこをするか。


 私はシロさんの方を見た。

 せっかくだからシロさんとも仲良くなりたい。

 近くで日向ぼっこしたら駄目かな?


 私はシロさんへちょっと近づいては彼女の反応を見て、それからエメさんの方を振り返るということをした。


 シロさんまであと2mというところで目を開けて私を見た。

 私は足を止めて見つめ返した。


『この子、あなたと仲良くなりたいみたいなの。仲良くしてくれないかしら?』


 見つめ合う私たちにエメさんが言葉を発した。


 その通りなので助かる!

 本当に助かってる。

 でも、一緒に遊ぼうと言えずにモジモジしている幼い我が子へ、きっかけを作ろうとしている親そのものなんだよね。

 嬉しいけどちょっと恥ずかしい。


『私と? そう言われてもどうすればいいか分かりません』


 シロさんは何だか戸惑っているように見えた。

 エメさんが明朗快活な姉御肌の女性とすれば、シロさんはクールで冷静沈着な女性って感じかな。


『難しいことはしなくていいわ。一緒にご飯を食べたり水浴びをしたり、近くで眠ったりするだけでもいいの』


 彼女の言葉を肯定するように私は鳴いた。 


『それくらいなら構いません』


 本人からも許可はもらった。

 じゃあ仲良くするしかないよね!


 私は手を伸ばせば触れるくらいの距離までシロさんへ近づいた。

 そのまま彼女の近くの地面へ横になって日向ぼっこを始める。


『……行動力のある子ですね』


 シロさんが何とも呆れたように言う。

 でもその声は少し嬉しそうだった。


『いいわねー! 私も混ぜなさいよ!』


 そこへエメさんも加わる。


 私たちはそれなりに近い距離で地面へ横になり日向ぼっこをした。


 あー……ととのうわぁ。


 知らない土地、遭遇する様々な出来事、慣れない輸送の旅。

 自分でも気がつかないうちに色々と気を張っていたみたいだ。

 ローレンさんたちとはぐれたという不安はあるけど、ちょっとだけ休もう。

 私は目を閉じた。




 ズシンという低い音が前方3mほどの近距離で聞こえた。

 私が驚いて音の方を見るとエメさんの近くに1匹のウォルダムがいた。

 風に乗って漂ってくる匂いで彼がラルドさんだということが分かる。


 エメさんは今の音でも起きなかったようでグォーという豪快ないびきをかいて眠っている。


『離してくれませんか?』


 声の方へ視線を向ければ、そこには体を起こしたシロさんの後ろ姿が見えた。

 そして、彼女の尻尾は私の手元へと伸びている。


 私はシロさんの尻尾を抱き枕にしていた。

 しかも、よだれまでついちゃってる。


 いやー! ごめんなさい!


 すぐに彼女の尻尾から手を離す。

 私の腕の間からスルリと尻尾が抜け出した。

 シロさんがゆっくりと振り返る。


 これは怒られるかもしれない。


 オロオロしながらシロさんの顔と尻尾を交互に見ていると、シロさんがフッと笑った。


『水で洗い流すので大丈夫ですよ』


 その声音は穏やかで、不機嫌そうでも怒ってそうでもなかった。

 ホッとしているとシロさんは川の中へ入って水浴びを始めた。

 だったら私もと川の中へ入る。


 ラルドさんは眠っているエメさんの近くに座って私たちの方を見守ってくれていた。

 時折エメさんの方へ向ける視線は優しく、ラルドさんは本当にエメさんのことが好きなんだなと感じる。


『さぁ、そろそろ帰ろうか』

「ククッ」


 水浴びを終えて川から出た私はラルドさんの言葉にそう答えた。


『エメを起こさないとな』


 ラルドさんがエメさんに触れたり体を摺り寄せたり声をかけたりしているとエメさんが目を覚ました。

 むしろそこまでしないと起きないってぐっすり眠りすぎじゃない?


『あら、迎えに来てくれたの?』

『戻ったら2人がいなかったからな』


 クァーと欠伸をしながらエメさんはラルドさんへ体を擦り寄せた。ラルドさんもそれを受け入れる。

 少ししてそれが終わるとあの広場へ戻ることになった。


 そして、私は今ラルドさんの足に掴まれて空にいる。

 加減してくれているので痛いところはどこもない。

 飛び方も丁寧でエメさんに檻ごと運ばれている時よりも揺れが少ない。

 変な体勢というわけでもないし、物凄く気遣ってくれていることは感じる。


 でも、怖いものは怖い。

 私は何も起こらないことを祈りながら、ただ我慢して運ばれた。

 テバサキは自前の翼で飛んでついてきていた。羨ましい。


 そう遠くない場所だったことが幸いした。

 今回の空の旅は短かった。そこまで高くないのも良かった。

 それでも精神的に疲れた。


 やっぱり怖いって!


 広場で下ろされた私は檻の中へ入って置いたあった兎のぬいぐるみを抱きしめた。


 私たちが広場へ戻ってからしばらくしてシロさんが戻ってきた。シロさんは広場の端、誰もいないところへ下りた。ビックさんからもだいぶ離れている。

 他のウォルダムは数匹のグループを作って近くにいるのにシロさんは1匹だ。

 色が違うから遠巻きにされてる?


 まだ何とも言えない上、もしそうだとしても下手なことをすると悪化するかもしれない。まずは様子を見るしかないか。

 そう思ってビックさんとシロさんたちを見ていたけど、夜になって寝るという時間になってもそれらしい様子はなかった。


 その日、私とテバサキは檻の中へ入って眠った。近くにはエメさんたちがいてくれた。

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