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騎獣転生  作者: 赤月 朔夜
第04章 強制転移
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第081話 シーナちゃんとアルさんたちの話

 探知魔法で石部屋の様子を窺うつもりだったのに、2人のいる場所すら分からない。


 出だしから想定外なんだけどどういうこと!?

 石の箱は探知魔法で中の様子が分かったのに。


 もしかすると魔力すら入り込めないくらいに密閉されているのかもしれない。

 体感的なものだけど、探知魔法の原理は蝙蝠の超音波みたいなんだと思う。蝙蝠は声を発してそのはね返りで位置関係なんかを把握しているらしい。だから魔力が入り込めないくらいに密度が濃い物の中身は調べられないんじゃないだろうか。

 それ以外だとついさっき起こったみたいに魔法が無効化されているとか?


 どうにか石部屋の中を調べる方法はないかと考えてみたものの、残念ながら思いつかない。

 結局、私もローレンさんたちと同じように中がどうなっているのかヤキモキしながら待つしかなかった。

 アントンさん、大丈夫かな。


「ねぇシーナちゃん、今話せるかな? 山でのことを謝りたくて」


 ミラさんが優しい声音でこちらを見ながら言った。

 山でのことっていうのはたぶん、シーナちゃんが人間じゃないと分かった時のことだろう。


「今する話か?」

「何がどうなるか分からないじゃない。心残りは1つでも減らしておきたいなって思って」

「縁起でもない……」


 ミラさんの気持ちが分からないこともないけど、アルさんの言いたいことも良く分かる。


「わ、私の方こそ隠していてごめんなさい。それに怖くなって何も言わずに逃げたことも」


 2人のやり取りを見た後、シーナちゃんは困惑しながらも謝罪をした。


「俺も怒鳴って悪かった。あの状況で怒鳴りつけられたら逃げるしかないよな」


 アルさんも申し訳なさそうに謝り、シーナちゃんはそれを受け入れた。


「良ければコールにも会ってくれ。シーナのことを心配してる」

「怖がられてないの?」

「あぁ。むしろ怖がってしまったことや動けなかったことを後悔してるくらいだ」


 あまりこじれていないようで良かった。

 コールくんも良い子そうだし、ぜひとも会ってちゃんと話して欲しい。

 そのためにもシーナちゃんの治療をしないとね。


 話は一区切りつき、沈黙のまま時間が過ぎる。

 何か変化はないかと私は石壁の印に目をやった。

 案1を示す数字の1が出っ張っている。他に変化はないので案1を実行中であることが窺える。


 失敗前提らしいけど長くない?

 案を試すまでに時間がかかってることも考えられるけどどうなんだろう。


「セオロアに指示を出したのは誰なんでしょうね」


 ローレンさんがポツリと呟く。


 セオロアの言ったことが本当なら彼に『勤勉でいるように』って指示を出した人がいるということになる。その指示の内容自体は悪いことじゃないけど、何でそんな指示を出したんだろう。


「黒い粘性生物を使役する人物ということであれば、1人心当たりがあります」


 こういう時、話せるなら奇遇って言えばいいのかな。

 私にも黒い粘液を見て思い浮かんだ人物がいるんだよね。


「【悪夢の召喚者】という二つ名を持つ、プラチナ級の冒険者であるエリックさんです」


 うん、私が思い浮かべた人物と同じだ。


「ただ、黒い粘液が同じものかと言われれば確証はありません。彼の召喚獣である黒い粘液には人の腕が生え、赤子の声で鳴きます。さらに生物を容易に溶かすことが可能のようでしたが、何かに姿を変えることはありませんでした」


 アルさんは私が言いたいことを代弁するように私が気になっていることも話してくれた。


 今回の黒い粘液に指示を出せばエリックさんの召喚獣と同じことができるかもしれない。

 でも、それだけでは同じ生物だとは言えない。かなり似てるとは思うけどね。

 だからアルさんも確証はないと言ったんだろう。


「俺はその方を知らないんですが、どんな人なんですか?」


 ローレンさんが尋ねると彼は少し考えてから口を開いた。

 まずはエリックさんの見た目について。私が知っているエリックさんと同じだ。

 次に召喚術士であることや白い狼を連れていること、他のパーティーと共同で依頼を受けることはあるが基本はソロで行動していること、魔石を集めていること。これも知っている。


「性格は冷静かつ誠実で人当たりが良く、物腰が柔らかくて協調性が高い。容姿も良くプラチナ級冒険者ということもあって非常にモテている印象です。これは聞いた話ですが、告白されても全て断り交際はしないそうです」


 本人にその気がないならモテるっていうのも大変そうだね。

 エリックさんの場合、名声や金銭を目的にしている人も多そうだからなおさら。


「話を聞いている限り、今回のような恐ろしいことをするような人ではないですね」


 私も同意見だ。

 それに、もしエリックさんが指示を出していたとして目的は? 『勤勉でいるように』って指示の内容が大雑把すぎない?

 エリックさんの召喚獣だったりするのかな。


 そんなことを話している時、石壁に描かれたマルのマークが押し出されるようにゆっくりと出てきた。

 案1を示す1のマークは出っ張ったまま。


 駄目で元々って言ってなかった?

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