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騎獣転生  作者: 赤月 朔夜
第04章 強制転移
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第074話 セオロアさんの話

 ローレンさんたちがセオロアさんの対面の椅子に座る。シーナちゃんはタタさんの膝の上に座ることになった。

 シークくんがセオロアさんの指示で食器棚から取り出したカップをそれぞれの前に置いてポットに入った紅茶を注いだ。それが終わるとセオロアさんの傍へ戻り控えた。


「あなた方をここへお招きしたのは誤解を解きたいと思ったからです」


 セオロアさんは椅子に座り静かに話し始めた。


「ご存知の通り、彼らは人間ではありません。元々が人間だったというわけでも、人間を材料にしたわけでもありません。今は人族の姿をしていますが、元は形を持たない粘性のある液体生物です」


 トルトイア国の法律は何ら破っておらず、怪しまれること自体は仕方ないが咎められる理由はないと彼は続けた。

 彼の話が本当であればと前置きした後、実験内容について聞いたらしいミラさんが確かに違法ではないと言った。


「シーナちゃんを助ける方法は?」


 駆け引きなんて一切なくローレンさんが尋ねる。


「そう急がなくても時間はあります。確かに自力で動けないなどの弊害はありますが、痛覚を切ることはできるので痛みはないでしょう」

「痛みがあるとかないの話じゃないんです。彼女は今も死の恐怖と戦ってる。少しでも早く解放してあげたい」

「申し訳ないのですが、彼女を直す直さないは交渉における重要なカードの1枚です。そう簡単に直すことはできないのですよ」


 あくまでもやんわりとセオロアさんは断った。

 続けて何かを言おうとするローレンさんをアントンさんが止める。


「お話を止めてしまって申し訳ありません。続けてください」


 アントンさんの言葉でセオロアさんが話を再開した。


「私が彼らを作った目的は人間の感情について理解を深めたかったからです。ただ、彼らには問題がありました。シークの言動を見てすでに気づかれたかもしれませんが、彼らには感情というものがないのです」


 だからまず彼らに感情を持たせるための実験を行ったという。それがシーナちゃんの言っていた実験だったらしい。

 シークくんに感情がないっていうのは感じたことだけど、シーナちゃんはそんな風には見えなかった。


「シーナちゃんには感情があるように見えますが」

「えぇ、これまでの実験で施設から逃げ出したのは彼女が初めてです。だから私としても、彼女を失うことは惜しいと考えています」


 シーナちゃんが怖がるように小さく体を震わせてタタさんにしがみついた。


「いや……戻りたくない……!」


 タタさんは落ち着かせるように彼女を抱きしめて頭を撫でた。


「彼女は私が作ったので所有権は私にあります。そうですね、馬や牛のような家畜に該当すると考えられます。彼女を返していただけませんか?」

「それを判断するのはあなたではありません。本当に問題ないか調査が必要です。家畜とは違い危険生物とされれば飼育するだけでも違法行為となります」


 落ち着いた様子でアルさんがセオロアさんの要求を拒絶する。


「シーナ、私のところへ戻ってきなさい。あなたがここからいなくなる前に行ったことはもうしませんし、何かをしてもらいたい時にはきちんと対話して嫌がればしませんから」


 穏やかに微笑み彼女を見て言うセオロアさんは嘘を吐いているようには見えない。だけど、その言葉が信じられるかと言われれば首を傾げる。本当か嘘かが分からないという感じだ。

 シーナちゃんはセオロアさんを見ると首を横に振って激しく拒否した。


「そうですか。それなら仕方ないですね、残念ですが諦めましょう。しかし、そうなると私がすることはありません」


 予想はついていたけど酷い。

 シーナちゃんの命がかかっているのに言うことを聞かなければ助けないつもりだ。綺麗な微笑みが憎たらしい。


 これまでの事件と違って打開の糸口が見えない。

 相手を倒せばいいわけじゃないし、誰かを助ければいいわけでもない。時間稼ぎをしたらどうにかなるわけでもない。

 ほんと、やりづらい相手だ。


「まだ時間はあります。この施設も自由に見ていただいて構いません。何か聞きたいことがあればお答えしましょう。私がご案内しても良いのですが、気が休まらないのであればここで待っています。しかし、少し危ないところもあるのでシークかシーナに聞くと良いでしょう」


 施設の調査をすれば何か情報が出るかもしれない。

 私以外にもそう思ったようで、このままセオロアさんの話を聞くグループと地下施設の調査を行うグループに分かれることとなった。

 セオロアさんの話を聞くのはアントンさんとミラさん。

 施設の調査を行うのはローレンさん、アルさん、タタさん、シーナちゃんとシークくんだ。


 シーナちゃんを嫌な思い出が残っている施設へ連れて行くことはどうかという話にもなったけど、セオロアさんと一緒にいることの方が嫌だと彼女が言ったためその意見が優先された。

 セオロアさんの話を聞くのが後衛らしい2人だけというのは心配だ。

 まぁ私もいるからセオロアさんが何かしそうなら結界に閉じ込めようとは思っている。

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