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騎獣転生  作者: 赤月 朔夜
第04章 強制転移
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第058話 食事と持ち物チェック

 ローレンさんとベルナンドさんの会話を聞くこと30分。バートさんが目を覚ました。

 カルフォさんに肩を借りてやってきたバートさんは何が起こったかを聞いて「くそ、あのババア」と毒づいていた。

 見た目で言うならバートさんの方が年上だけど、ルチアーネさんの方が年上だったりするのかな。それとも単なる罵倒?


「迷惑かけたな」


 気絶したことやルチアーネさんがいないことでバートさんは冷静になっていた。

 気まずそうに頭を掻きながら彼らへ謝罪とお礼を言う。


「いや、これくらいどうってことない。その怪我じゃ色々と大変だろう。何か困ったことがあったら遠慮なく言ってくれ」


 バートさんは改めてお礼を言って彼らを見送った。


 その後、ローレンさんはエサを用意してくれた。しかし、そのエサは死んだネズミだった。

 無理、本当に無理。そこまで空腹を感じていないから特に。


「ん? 食わねぇのか?」

「クー……」


 私は悲しそうに鳴いた。

 せっかく用意してくれて申し訳ないけど、食べたくない。


「何で食べないんだろ。お腹いっぱいなのかな?」

「さぁ、俺にも分からん」


 2人して私のことを見つめている姿は不思議と家族なんだなぁということを感じさせた。


 次に用意されたのは生きたネズミだった。

 生きたのじゃないと食べないってことじゃないんだよ!


「次はイセロを持ってきてくれ」


 知らない名前だけど、次は何が持ってこられるんだろう?

 正直に言えば嫌な予感がする。

 幼少期にジナルドから様々な虫をエサとして出されたことを思い出しちゃうんだよね。


 そして、その予感は的中した。


 ローレンさんはスマホサイズの真っ白で大きな芋虫が入ったカゴを持ってきた。

 元気そうにウネウネと動いている。


 いやぁぁあぁっ!

 ふっと! でっか!

 え、これが成虫になったらどうなるの……?

 蝶でも蛾でもノーサンキューだ。

 ……それ以外のパターンってあったりするのかな?


 そんなことを考えながら、私はトングのような物に挟まれた芋虫から顔を反らした。


「魚と木の実ー」


 どうしようかと考えているとテバサキの声が聞こえた。


 最初に私が何を食べたのか覚えていたみたい。

 テバサキ、ナイスー!


「あぁ、魚と木の実は食べんのか?」

「そう」


 次にバートさんが持ってきたのは魚と木の実が入った器だった。

 どちらも食べられるものだったのでありがたくいただいた。


「俺をここまで運んでくれてありがとな」


 バートさんに頭を撫でられながら私はクルクルと喉を鳴らした。


 こちらこそ、気遣ってくれてありがとね。

 バートさんたちが優しい人で良かった。


「テバサキもな。お前のおかげで助かった」


 テバサキの頭を撫でた後、バートさんはトングで挟んだ芋虫を差し出した。

 芋虫は突かれながら食べられていった。


「テバサキ賢い、テバサキ有能! お茶の子さいさい!」


 テバサキはそう言いながら嬉しそうにはしゃいでいた。


 そんなこんなで無事に食事が終わった。

 そして、私が身に着けているものを調べることになった。


「大丈夫だとは思うが、もし暴れそうになったら止めてくれ」


 ローレンさんは頷き、身体強化魔法を強くした。


 もちろん、私は暴れることなく静かにしていた。

 スカーフには残念ながら何も書かれていなかった。

 しかし足輪には、私の名前と「ラテル」の文字、それからラテルのお偉いさんのものであろう家紋が描かれている。

 それらがバートさんによって紙へ書き写された。


「……何語だ?」

「さぁ……」


 しかし、残念ながら2人にはその文字や家紋の意味が通じなかった。


 うん、そんな気はしてたよ。ラテルではあまり聞かないような印象の名前の人が多いし、話している言葉の語感も違った。

 イタリア語はチンプンカンプンだったとしても、発音や話し方なんかで日本語や英語じゃないことだけは分かるって感じかな。


 謎の翻訳能力のおかげで言葉が分からないことで困ったことはない。さらにこの能力、意識すれば翻訳前の言葉も聞けるという親切設計だ。完全に能力をオフにすることもできれば、映画のように吹替はなしで字幕はありのような設定もできる。実際に画面はないから、知らないはずの言葉の意味が頭に浮かぶっていう感じになるんだけどね。

 だから違和感に気が付けた。


 考えたくないけど別の国まで来ちゃったみたいだね。

 ラテルからそう遠くなければいいんだけど……別の世界にいるとかないよね?


 1度体験している身としては、ないとは言えないことが怖い。


「これを持って聞いてこようか? 誰か読めるかも」

「そうだな。帰ってきて早々で悪いが頼む」

「任せてくれ。だからじいちゃんも安静にな」


 笑顔で言うローレンさんに了承を返したバートさんは彼に支えられて部屋を出て行った。

 その後、少ししてからローレンさんは家を出て行った。走っているのかあっという間に探知魔法の範囲外になる。


 考えておかないといけないことは多いけど精神的に疲れてそんな気も起きない。

 無理に考えるよりはいいだろうと今のうちに休むことにした。


 私は探知魔法を切ると目を閉じた。

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