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騎獣転生  作者: 赤月 朔夜
第04章 強制転移
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第057話 バートさん宅にて

 その後は色々と早かった。

 気絶したバートさんはローレンさんに背負われ運ばれた。

 ローレンさんだけだと心配だからと自警団員らしい男性も2人ついて来た。

 私はそのうちの1人に手綱を引かれている。

 テバサキはローレンさんの頭の上に乗っていた。


 一緒に居たドルフたちも同じように飛ばされていたら合流できるかもと少し期待していた。でも残念なことに探知魔法に反応はない。

 私だけが移動させられたならまだいい。けれどドルフたちも知らない場所に移動させられたんじゃないかと思うと心配になる。

 町とか村が結構ある場所ならいいけど、私はラテルの周辺しか知らない。

 ドルフたちが知らない場所に飛ばされて危険な目に遭っていたらどうしよう。

 もっと何か出来たんじゃないかっていう前世と同じ後悔はしたくない。


 そんな不安を感じながら歩みを進める。

 やがて到着したのは、大きな庭がある二階建ての家の前だった。

 庭にはいくつか小屋があって柵で囲われていた。牛や山羊ヤギ、羊、馬が放し飼いにされていて小さな牧場という雰囲気がある。

 家の方も結構大きくて両親と子ども2人くらいの家族なら2世代で過ごしても十分に余裕がありそうだ。


 ローレンさんはバートさんを抱えたまま器用に玄関扉の鍵を開けた。


「ベルナンドさん、じいちゃんを部屋のベッドへ運んでもらっていいですか? 俺はこの子を空き部屋へ連れて行くんで」

「あぁ、分かった」


 ローレンさんがベルナンドさんへバートさんを渡す。

 ベルナンドさんはこの家に来たことがあるのか慣れた様子で家へ入りバートさんを運んで行った。

 彼に続いてローレンさんが私の手綱を引いて家に入る。

 小屋とかじゃなくて家の中?


 2階へ上がりベルナンドさんは奥の部屋の扉を開けて中に入った。

 ローレンさんがその手前の部屋の扉を開けて部屋に入っていく。

 大人しくついていくと、そこは家具がなく窓があるだけの部屋だった。その窓にも鉄の格子がはまっている。

 天井は近くて少し圧迫感はあるものの、座ってしまえば気にならない。部屋は広いので十分に寛げる。


 その後、少しして戻ってきたベルナンドさんを含めてバートさんが起きるまで待つこととなった。

 ローレンさんとベルナンドさんは私のいる空き部屋、カルフォさんがバートさんの部屋で時間を潰している。

 私は座って木の器に入った水を飲んだりしながら寛いでいた。


「ところで、ローレンはこの生き物のことは知っているのか?」


 ベルナンドさんの問いかけによって私へと視線が集まる。

 ディナルトスになって結構見られるようになったから視線には慣れたけど、それでもじっと見つめられるのは少し居心地が悪い。なお、お子様の視線は例外とする。

 ラテルにいた時は友好的にアピールしていたけど、そうするべき? 今は命令にきちんと従うこと、大人しいことをアピールした方がいいような気もする。


「一応は。じいちゃんから聞いただけで実物を見たのは今回が初めてです」

「何て名前でどういう生き物なんだ?」

「名前はディナルトス。利口で獰猛であることに加えて、群れで狩りを行うので見かけたら注意するように、と言われました」


 少し言いにくそうにしながら彼は答えた。

 ベルナンドさんは私を見ながらゆっくりと手を伸ばしてきた。その手を見ながら大人しくしていると頭を撫でられた。

 私は目を閉じてクルクルと喉を鳴らした。


「……獰猛には見えないな」

「俺もそう思います」


 ローレンさんは小さく笑った。


 この辺りにはディナルトスっていないんだろうね。

 前情報のない人には「襲ってこないのか?」という警戒を、騎士団所属なことをどこかで聞いたらしい冒険者には「どうやって手懐けたんだろう」という興味津々な反応をされる。そのどちらかの反応が多い中、「あんな生き物もいるんだ!」という反応をする冒険者には若そうな人が多かった。

 ある種の指標になっていることは複雑な心境だけど、その反応の違いだけで何となく経験や知識量が推測できる。


 今回の場合だと、ディナルトスがいない地域まで移動させられたのか、いても局地的であまり情報が入って来ない地域ということが考えられる。

 知られていたら村に入れてもらえなかったかもしれない。そう考えると知られてなくて良かったのかな。


 まぁ、それはそれでラテルからどれだけ遠くの場所に移動させられたんだっていう不安が出てくるんだけどね!


「スカーフを始め手綱や足輪は上等そうな物だな」

「指示にもきちんと従うので良く訓練されています」

「貴族のペットか?」

「もしそうなら、巨大なカムデヨとの戦闘で怯えたり逃げようとしたりしませんか? でもこの子はそんな様子を見せることなくじいちゃんの指示に従って動いているように見えました」

「そりゃそうだな」


 じゃあ何なんだコイツ? という視線がいたたまれない。

 貴族のペットにしては戦闘に慣れていて、一般の人が飼っているとするには高価な物を身に着けているらしい。

 ドルフがくれたスカーフは肌触りもいいからお気に入りだ。どれくらい高い物なのか分からないけど、これからも大事にしたい。


 会話を聞きながら色々と考えているとあっという間に時間は過ぎた。

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