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騎獣転生  作者: 赤月 朔夜
第04章 強制転移
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第056話 村へ到着

 休憩の後、1時間くらい走っていると石壁が見えてきた。

 石壁の奥には家らしい建物と人の反応がある。

 門もあって門番も2人いた。1人は若い青年でもう1人は中年男性だ。


「バートたちが帰って来たぞ! お前は先生を呼んできてくれ」


 私たちに気が付くと中年の男性が青年に指示を出した。青年は慌てた様子で門の奥へと消える。

 残った中年の男性がこちらへと駆け寄って来た。

 私を見て少し顔を引き攣らせた後にバートさんへと話しかけた。


「良かった。心配したんですよ」

「そう簡単にくたばってたまるか。問題の変異種らしいカムデヨも【黎明れいめいともがら】が仕留めた。彼らはそのまま調査を続けてくれてる」


 【黎明の輩】? 何だろう、中二病チックな名前だけどマルチェロさんたちのパーティー名かな? テバサキが『黎明3人』って言っていたからそんな気がする。

 ともがらは仲間って意味だよね。黎明れいめいは黎明期とか言うよね。新しい時代とか文化が始まろうとする時期とかそんな意味だったような気がする。それから考えると「新しい時代を作る仲間」っていう意味なのかもしれない。


「仕留められたんですか!?」

「冒険者サマサマだな」


 そんなことを言ってバートさんは肩を竦めた。

 門番さんは安心した様子を見せた後、観察するようにじっと私を見た。


「ところで、その生き物は? 肉食獣のように見えるのですが……」


 あ、これ私のせいで中に入れない感じ?

 中で暴れられたら困るもんね。一緒に入れないなら外で待っておこうかな。

 残念だけど、この人もきちんとお仕事してるだけだし仕方ない。


「恐らく飼い主とはぐれたんだろう。大人しくて俺の指示にもきちんと従うから大丈夫だ」


 中へ入ることを諦め始めている私とは違ってバートさんが門番さんの説得を始めた。

 ありがたいけどごり押した後の立場とか大丈夫?


「確かに見た目は狂暴そうなんだけど、大人しくて人懐っこいんだ」

「人懐っこい……?」


 ローレンさんがフォローしてくれるものの、門番さんは半信半疑どころか8割方疑っているような懐疑的な目で見てくる。

 同じ立場だったら「その見た目で人懐っこいはないわ」って思うから門番さんの気持ちは良く分かる。


「そうはいっても獰猛そうな見た目ですし、今は大人しくても何かに驚いて暴れることだって考えられますから」


 まぁ、手足の爪は鋭いよね。食事に出されたお肉を刺して食べるくらいにしか使ってないけど。

 爪の背中や腹でルナを撫でたりするけど、これは爪っていうより指として使っている。

 尖ってきたら結界にゴリゴリ擦り付けて爪先を丸くするというお手入れも欠かさない。


「村の外へ置いている間に他の生き物から襲われるかもしれない。俺はこいつのおかげで助かったんだ。無事に飼い主の元へ帰してやりたい。家の中に入れておくし、もし暴れた時は俺がどうにかする」

「俺も一緒に見て目を離さないから」

「ですが……」


 渋る門番さん。

 うーん、これは無理そうかなぁ。


「おい! 何をグダグダやってんだ! さっさと患者を連れてこい!」


 諦めて地面に伏せてからバートさんが降りるのを待とうと思ったところに、女性としては少し低く男性としては高い声が聞こえてきた。

 その声は門の後ろから聞こえる。


「はぁ……分かりました。エラルト、俺と変わってくれ」


 青年の返事が聞こえ、門番さんは門を開けてくれた。

 どうにか入れてもらえることになったらしい。


 門の奥には石材で作られた家々が並んでいた。パッと見た感じだと中規模な村という印象を受ける。

 話が伝わっていたようで門の近くにはバートさんたちの無事を喜ぶ人たちが集まっていた。


 彼らの真ん前、開いた門のすぐ近くには20代前半くらいに見える若い人が仁王立ちしていた。レクシス様のように耳が長くて細身ながらもすらりと伸びた身長は中性的な見た目をしている。薄緑色の長い髪を後ろで1つに括っていて目の色は金色だ。外見では分かりにくいけど女性だろう。

 バートさんから指示を受けて門をくぐる。


 彼女はちらりと私を見たがすぐにバートさんへ手当てを始めた。

 魔法で治すという感じではなかったけど、調べるために魔法を使ったようだった。

 バートさんの足に触れてから少しの間、先生の手から魔力の反応があった。

 調べた後は迷いのない動きで消毒をして患部をしっかりと固定するなど手当てをした。


 私はというと、バートさんを降ろす時に地面へ伏せた状態となりそのまま彼の背もたれとして活躍している。

 ローレンさんや中年の門番さんは私が暴れても対処できるようにという感じ近くに立っていた。


「できる限りの手当はした。骨が折れてるから治るまでに最低でも2ヶ月はかかるだろうな。まずは2週間、大人しくベッドで横になってろ。リハビリは2週間後に経過を見て判断する」


 手当を終えた後、バートに診断結果を伝えた声は門が開く前に聞こえた声と同じだった。


「はぁ? 2ヶ月もかかんのか? その上、2週間もベッドにいろなんて退屈すぎておかしくなりそうだ」

「安心しろ。囮になって変異種の相手を1人でする時点で十分おかしいんだよ。てめぇの歳を考えろドアホウが」


 先生は診断内容に不満を漏らすバートさんの胸倉を掴んでから睨みつけると怒りを抑えているように低い声で言った。

 見た目は怖くないのに威圧感が凄い。


「あの状況じゃ他に手はなかった。大して知りもしない素人が余計な口を出すな」


 しかし、バートさんは一切怯むことなく言い返した。


「もう少し言葉を選んでください」

「ちょ、じいちゃん落ち着いて。怪我に響くから」

「ルチアーネさんも、せっかくバートさんが無事に戻ってきたんですから」


 2人の言い争いを周囲の人たちが止めようとそれぞれ宥め始める。


「確かに、オレは戦闘に関してはさっぱりだ。だが、怪我と病気についてはプロだ。分かったんなら、大人しく、言うことを聞け」

「まだ原因が調べられてない。ここ最近、森の生き物たちの行動が引っかかってたんだ。変異種に関しても自然発生以外ではなく何か理由があるかもしれない。ことが起こってからじゃ遅いんだぞ」


 けれど2人は互いに譲らずヒートアップしていった。


 どちらの言い分も分かる。ただ、私としてはバートさんにゆっくりと休んで欲しい。

 その調査結果をバートさんに伝えてどう次はどう調べるか判断を……うーん、それができるなら言い争ってないか。実地調査でしか分からないこともあるだろうし、難しいね。


 チッと舌打ちが聞こえた直後、ルチアーネさんはバートさんに頭突きを食らわせていた。

 周囲に何とも言えない鈍い音が響き、バートさんが沈黙する。


「さぁ、患者様のお帰りだ」

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