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騎獣転生  作者: 赤月 朔夜
第04章 強制転移
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第054話 森からの脱出

 バートさんが合流して人数が増えたとはいえ、巨大カムデヨを倒せるのか不安があった。

 でも、それは杞憂だった。


 バートさんはカムデヨに詳しく、また観察眼が優れていて人の動かし方も上手かった。

 カムデヨの動きを読んでどんな攻撃が来るか警告を出しつつ、攻撃の機会を窺う。

 バートさんの指示は的確で出された側も忠実に動いた結界、少しずつではあるもののカムデヨに傷を与えることができた。


「今だ!」


 バートさんの合図で魔法使いのラウレーアさんが魔法を発動させた。

 カムデヨの顔の真下から土の柱が生えて下から突き上げる。


 浮き上がった体の側面からローレンさんが拳を叩き込んでカムデヨを裏返した。

 それと同時に、エルヴィオさんの構える大盾を足場に飛び上がったマルチェロさんの剣がカムデヨの頭を貫いた。


 背中は硬くても裏側は柔らかい。

 それを知っている人と裏返すことができること、止めを刺すことができる人がいたからこそ勝てた。


 決め手となる一撃を入れても彼らは油断することなくカムデヨの頭を潰し、それでようやく一息ついた。

 ローレンさんたちが私たちに近づいてきて、ラウレーアさんも私から降りた。


「じいちゃんが無事で良かった」

「そう簡単にくたばるかよ。だがまぁ心配かけて悪かったな。マルチェロたちもありがとう」

「いえ、ご無事で何よりです。それに俺たちの方こそ、ラウを助けてくれてありがとうございます」

「ありがとうございます」


 ラウレーアさんたちからのお礼にバートさんは「お互い様だ」と答えた。

 ……何だろう。ラウレーアさんがどこかキラキラした目でバートさんを見ているような気がする。

 確かにバートさん、かっこ良かったもんね。


 互いの無事を喜んだ後、4人は動かなくなったカムデヨを囲んで調査を始めた。


「ここまででかいカムデヨは初めてだ。色合いも一般的な茶とは違う緑色。変異種なのは確かだろう」


 私に乗ったままバートさんが言う。


 変異種? 初めて聞く単語だ。

 彼らの会話を聞いての推測だけど、突然変異した生物のことを指すらしい。

 そこまで解明されているわけではないらしいものの、魔力が多い場所や持っている魔力が多い生物が変化したり生んだ子が変異種になるケースはいくつか確認されているそうだ。

 そして変異種は同種よりも大きく強靭であったり、本来は使わない魔法を使ったりすることがあるという。ただ、変異種だから狂暴というわけでもないそうだ。

 あとは色が違ったり角が多かったりと見た目が違うことも多いらしい。


 どういう原理か分からないけど魔力が鍵になってそうだね。

 巨大なカムデヨの体には魔石の反応が2つあるし、その魔石の魔力量も結構多い方に感じる。

 そもそもカムデヨって魔物なの? 魔物なら魔石が体の中にあってもおかしくないかもしれないけど、そうじゃないなら魔石が2つもあるっておかしいよね。


「俺たちは調査を続けます。バートさんとローレンは先に村へ戻ってこのことを伝えてください」


 バートさんは怪我をしているわけだしそうなるだろうと思っていたら本人が渋った。


「このカムデヨはメスだ。卵を産んでないとも限らない。もしそうなら早く見つけた方がいい。で、早く見つけるにはカムデヨの知識がある俺がいた方がいい」


 しかも、説得力があるせいで反対もしにくい。

 マルチェロさんは難しそうに唸り、ラウレーアさんは「そうだとしても治療が遅れたらまずいし危ないから」と反対した。エルヴィオさんは「その情報も含めて現状報告をしておく方が安全だ」ということでバートさんを連れての調査には反対した。ローレンさんも「何かあったら無茶をしそうだから」と反対。


「バートさんが仰ることも分かりますが、何かあった時のことを考えるとこのまま調査に同行してもらうことはできません」


 それぞれの意見を聞き、マルチェロさんの出した結論にバートさんは諦めたように小さく息をついた。


「分かった。俺たちは村へ戻る。まぁ、一般的なカムデヨは産卵したら卵を抱えて守る習性があるから、その習性が変わってなけりゃ産卵はしてないだろう」


 そう言いながらバートさんは肩を竦めた。

 調査に同行したいがために産卵の危険性について示唆したらしい。


 同行することは諦めたのか、バートさんはいくつかカムデヨの習性について話した。

 暗くて湿気のあるところを好むとか、毒牙に噛まれたら熱湯で洗い流すと毒の成分が分解されて症状が軽減されるとか。


「無茶はするなよ」

「えぇ、注意します」


 最後にそう言ってマルチェロさんたちとは別れた。

 私はバートさんの指示に従って森を進む。

 速度はそこまで出ていないとはいえ、私はそれなりの速度で走っている。なのに、ローレンさんは余裕そうについて来ている。


「ところでその子は? うちで飼ってる子じゃないよな?」


 マルチェロさんたちが見えなくなった後、ローレンさんが不思議そうに尋ねてきた。


「洞窟で隠れていた時にテバサキが連れてきたんだ。恐らく何らかのトラブルで飼い主とはぐれたんだろう。飼い主を見つけてやれたらいいんだがな」


 そうやって気を遣ってくれるのは嬉しい。帰巣本能とか当てにならなさそうだからね。


「じいちゃんを助けてくれてありがとな」

「ククッ」


 どういたしまして。

 私も助かってるからね。1人だと凄く不安だったよ。


 その後はバートさんと一緒に調査へ来ていた人は無事に戻れたのかとか、他に森へ入っている奴はいないのかとか情報のやり取りをしていた。

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