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騎獣転生  作者: 赤月 朔夜
第04章 強制転移
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第051話 草原から森へ

 閉じた瞼越しにも感じるほどのまばゆい光。それが治まってから恐る恐る目を開ければ、そこには青々とした木々があった。

 周囲を見回しても木ばかりで他のものは見当たらない。


 ドルフやカイルとグル、商人らしき男性と彼の護衛、荷馬車などそれまで近くにあった人や物が何もない。

 そもそも私たちは草原のド真ん中にいた。間違っても森林には居なかった。


 訳が分からない。

 混乱する頭で私は何が起こったかを整理する。


 私たちは任務の一環で街道の見回りをしていた。

 それ自体は日常的なことでこれまでにも何度か経験がある。


 読書祭どくしょさいの直前や開催中、終了直後は変則的で人数が多かったり見回り時間が長かったりしたけど、今は平常時のパターンに戻っていた。

 特別に何かを警戒しているような感じはなかった。


 街道を進んでいる商人に声をかけ、来訪理由や何か気になったことや困ったことはないか、ここからどれくらいでラテルへ到着するかなどを話していた。

 ドルフが商人と会話をしている間にカイルが荷馬車の確認をしていた。


 特に怪しいものもなさそうでカイルが荷馬車から離れた時のことだ。

 発動させていた探知魔法に魔力反応があった。

 荷馬車の中から反応があり、荷馬車本体や自分を含めその場にいた全員を透明な結界で覆った。


 その直後、魔法が発動した。


 荷馬車から衝撃波のようなものが広がり、壊れた箇所から強い光が漏れて何も見えなくなる。

 目を閉じている間、辺りに広がった強い魔力のせいで探知魔法が使い物にならなくなった。


 そして光が治まり、目を開けると今の状況だった。

 探知魔法も機能するようになっていた。ただ、ドルフたちはもちろん人の反応はない。森林ということもあって動物の反応はある。

 それから、私を覆っている結界はそのままだった。


 転移魔法とかそういう類の魔法が発動したのかな?

 探知魔法の反応が正しいとすると幻とかではないし、結界ごと転移させられたと考えると結界が破られていないのも分かる。


 問題はここがどこでこれからどうすればいいかなんだけどね。


 何で私だけ!?

 おかしいじゃん! 近くにいたドルフたちはいないの?


 探知魔法の範囲を広くする。

 悲しいことに直径500mの範囲に人の反応はなかった。


 どうしよう。どうすればいいんだろう。

 こちとら箱入り娘よ? 大切に大切に育てられてきた温室育ちよ? 狩りすらしたことないよ?


 あ、駄目だ。そんなこと考えてたら不安になってきた。

 気持ちを切り替えよう。ポジティブに考えてみよう。


 砂漠とか海とかに放り出されなかっただけましだ。

 ……待って、孤島とかじゃないよね?


 よし、まずは村とか町を見つけよう。人を見つけられたらどうにかなるかもしれない。

 そして人を探すためにも生きるためにも川や湖といった水場を見つけよう。


 歴史の授業でも川とか湖の近くに村とか町ができるっていうのを聞いた気がする。

 年号とか人名を覚えるのは苦手だったけどそういう話は好きだったんだよね。武将がいる時代の話で馬に乗って崖を下りたとかいう話も印象に残ってる。誰がやったかとかは覚えてないけど。


 ひとまずの方針が決まり、私は森林を移動することにした。

 移動する前に木の幹に爪で傷を付けておく。最初にいた場所が重要になるかもしれないからね。


 生息している生物は知らないものの方が多かった。

 植物も同じで見たことのない実がなっている木や花も見かけた。


 視界の悪い地上を歩き回るよりも、結界を足場にして空から探す方が効率は良い。でも、誰かに見られてしまうかもしれない。

 最初だからこそ慎重に動くべきだろう。


「助けてー! 誰か助けてーっ!」


 森林を西へ移動している時、女性と思われるそんな声が聞こえてきた。

 少し遠くからではあるけど、血の臭いや争っているような音は聞こえない。

 声がしているらしい場所も探知魔法の範囲内ではある。しかし人の反応はない。


 代わりに、というのはおかしいけど鳥の反応がある。


 この声、キュルケルなんじゃないかな。

 別名叫び鳥だっけ? 他の生物の鳴き声を真似て獲物を呼び寄せて、他の生物に襲わせるって話だったよね。

 その話を聞きつつ声のする場所へ向かった時はワニが居たんだっけ。


「誰かーっ! お願い助けてーっ!」


 声だけ聞くと本気で必死そうだ。前の時も本気で助けを求める女性にしか聞こえなかった。


 行くべき? 行かないべき?

 探知魔法では鳥以外の反応はないけど、罠が生物じゃなくて別の何かかもしれない。


 悩んだ結果、私は声の元へ向かうことにした。


 ある程度の距離まで近づいてからは音を立てないようにしながら鳥へと距離を詰める。


「ケテ、助けてーっ!」


 思った通り「助けて」と騒いでいるのはキュルケルだった。鳴きすぎたせいか声が少し掠れている。

 さらに言えばそのキュルケル、首からネームタグのような物をぶら下げていて足環まで付けていた。


 誰かに飼われてる?


 もしそうなら近くに飼い主がいるかもしれない。

 そしてその飼い主が助けて欲しい状況なのかも。


 私はキュルケルの反応を見たくて分かりやすく音を出して茂みから出た。


「助けキャアアァッ!」


 キュルケルは私の方を見てそんな悲鳴のようなものを上げると木の枝に止まったまま羽をばたつかせた。

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