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騎獣転生  作者: 赤月 朔夜
第03章 リステラ症候群
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番外編 慰労会という名の打ち上げ

「それじゃ、リステラ症候群の収束を祝ってカンパーイ!」


 マルコスの音頭と共にそれぞれが持っていたカップがぶつけられる。

 打ち上げはドルフが薦めた飲み屋の一室で行われた。音消しの魔道具も使用され、室内での会話は漏れないように細心の注意が払われていた。


 メンバーはドルフ、リオル、マルコス、ハウロ、エリックの5人だった。

 不要な情報の漏洩を避けるためにもリオルが【恩恵持ち】であることをすでに知っている者だけが集まった。

 1つの大きな丸いテーブルの上には豪華な料理が並び、どれも非常に美味しそうだ。

 テーブルを囲むように右回りにドルフ、リオル、ハウロ、マルコス、エリックの順番で座っている。


 乾杯の音頭の後、カップに入っていた酒を飲み干したのはマルコスとエリックだった。


「お、エリックさん、いける口ですか?」

「お酒には強いと自負しています」


 2人とも微笑みを浮かべていた。


「エリックさんは酔ったらどんなタイプですか?」

「残念ながら酒に酔ったと感じたことがありません」


 流れるように次の酒を注文した後、問うマルコスにエリックは苦笑いして答えた。


「それはまた随分な酒豪ですね」

「楽しそうに酔っている人を見ると酔ってみたいと感じることはあります」

「いいじゃないですか。エリックさんがどんなふうに酔うのか興味があります」

「酔って醜態をさらす人も見ているので、この場で酔うほど飲もうとは思っていません」


 それは残念です、とマルコスは肩を竦めた。


「ジェフリー殿は息災ですか?」

「あー……徹夜続きだったみたいでそれが発覚した時に、半ば強制的に休まされるってことはあったみたいです。何人かで押さえられて運ばれていくところを見ました」


 忙しくしているだろうとは思っていたが、ドルフの予想以上の返答が返ってきた。


「俺たちがラテルへ来る前はある程度落ち着いていたので、その時ほど忙しくはないはずですが」


 ハウロは苦笑いした。


「リオルくんは鳥や虫、ディナルトスの言葉も分かるんですか?」

「聞こうと思えば分かります。普段は使わないようにしていますが」

「確かに聞こえる全ての鳴き声が言葉として理解できたら落ち着かないですね」


 リオルの返答にハウロは納得したようだった。


「リオル殿、召喚術を学んでみるつもりはありませんか? 悪魔についても知識を深めることができますし、召喚獣と意思疎通ができれば召喚術士として強みになります」


 ドルフの肩越しに身を乗り出してエリックは言った。

 その提案にリオルは心惹かれたが、自身にとって都合が良すぎるために警戒心の方が勝った。


「ええと、ありがたい申し出なのですが、それに見合った対価を払えるとは思えないです」

「俺は悪魔に興味があるんです。負担にならない範囲で悪魔について教えていただければそれで構いません。欲を言えばリオル殿に憑いている悪魔と対話をしてみたいです」


 それならとリオルの心が揺れる。しかし、不安はぬぐえない。


「各2時間、3回までは無報酬で構いません。まずはその3回で考えてもらえないでしょうか?」


 ここまで言われて断ることはリオルには出来なかった。


「その講義に私も参加できませんか?」

「ドルフ殿でしたら構いませんよ。悪魔について知っておきたいということも分かりますし、リオル殿も心強いでしょう」


 微笑みエリックは了承した。


「マルコス殿はどうですか?」

「え、俺?」


 唐突に名を呼ばれたマルコスは食事の手を止めた。


「はい。あなたの悪魔に対しての見解を聞いてみたいと思いまして」

「いやー、俺は別に」


 マルコスは困ったように眉尻を下げた。


「また考えておいてください」


 微笑んだ後、エリックは酒を煽った。


「『生活を営むこと、目標へ向かって努力を重ねることも"生きる"こと』っていい言葉ですね」


 打ち上げも進み、赤ら顔になったマルコスが気分良さそうに言った。


「恩人からの受け売りです。祠ではリステラの説得をしてくださりありがとうございました」

「イチかバチかの賭けでしたけどね。まともに戦って勝てるような相手じゃなくて、感情を持っていて会話が通じるなら煽るしかないと思いました」


 ククッと喉の奥で笑ってからマルコスは唐揚げにフォークを刺して口の中へと入れた。


 そろそろこの会も終わろうという時、リオルとハウロは酔いつぶれて眠ってしまっていた。ドルフとマルコスはほろ酔いではあるものの問題はなかった。そしてエリックは、誰よりも飲んでいたにも関わらず酔っている様子は見られなかった。


「酒豪ってどころじゃないですね。人間ですか?」

「さてどうでしょうね。マルコス殿はどう思います?」


 眠っているハウロに肩を貸すような状態で支えつつ、窺うように言うマルコスに対してエリックは小さく笑った。


「人間じゃないと思っていますよ」

「では何だと思います?」

「さぁそこまでは」


 マルコスは苦笑いした。


「さて、帰ろうか」


 支払いを済ませたドルフが部屋へと戻ってきてリオルを背中に乗せた。


 エリック以外の者は騎士寮へと戻り、エリックは町の宿屋へと向かった。


 辺りはすっかりと暗くなっていた。


 宿へと戻ったエリックは部屋へと入り1匹のマルメを呼び出した。

 そのマルメに指示を出し映し出された光の中には、地面に地図を描くラナの姿があった。


 ディナルトスは賢いとはいえ、果たして地図を描くことが可能なのかとエリックは思考を巡らせた。

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