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騎獣転生  作者: 赤月 朔夜
第03章 リステラ症候群
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第048話 クスト村

 最後に祠を出たマルコスが石扉を閉める。施錠はハウロさんによって行われた。

 その後すぐにフェルさんが戻ってきた。


「遅くなり申し訳ありません」

「いえ、こちらも先ほど調査が終わったところです」


 会話もそこそこにラテルへと引き返す。


「……その、何か分かったことはありますか?」


 聞いていいのか迷ったようで、遠慮がちにフェルさんは尋ねた。


「確実なことはまだ言えませんが、1時間もすれば目覚めている者がいるかもしれません」


 ラテルまではここからだと2時間はかかる。ロレットラリッサの言葉を信じるのであれば目を覚ましている人がいるはずだ。

 脳裏に浮かぶのはジナルドやカイル、ルナといった眠ってしまった人たちのことだった。大丈夫かな? 目を覚ましているといいな。

 早くラテルへ戻って彼らの元へ行きたい。


「それは、問題が解決したということですか?」

「経過観察は必要ですが、その通りです」


 その言葉を聞いたフェルさんが安堵したように息をつきお礼を言った。

 フェルさんが住んでいるクスト村もリステラ症候群で住民が眠ってしまったと言っていた。彼女も心配で仕方が無かったんだろう。


「フェル殿はこの後どうするんですか?」

「クスト村へ戻って眠ってしまった人の様子を見ます。ここから1時間ほどの距離なのですが、目が覚めている人がいるかどうか確認のために村まで来ませんか?」


 このままラテルへ戻って調べるよりは、クスト村で調査をする方が結果を早くに知ることができる。

 もしリステラ症候群が治っていなかった場合もそう時間をかけずに祠へ行ける。


「そうですね。村の状況も確認しておきたいので案内してください」


 ドルフは少し考えた後、その提案に乗ることにしたようだ。

 特に反論もなく、私たちはフェルさんの案内でクスト村へと向かうことになった。


 南下し森を抜けて平原を進む。フェルさんはマルコスと一緒にガルの上に乗った。


 クスト村は木材で作られた壁で覆われていた。探知魔法で調べてみると動いている人たちの反応があった。微かに人の話している声も聞こえる。

 魔糸や糸玉の反応は無かった。


 木製の扉をフェルさんが開けもらい、私たちはクスト村へと入った。


「フェル! 無事だったのか!」


 村へ入った直後、ドルフは私から降りて他の人も降りた。

 フェルさんに気が付いた彼女と同世代に見える少年が駆け寄ってきた。

 そして私たちを見ると驚いて足を止めた。少年は私たちを気にしていたけどすぐにフェルさんへと意識が移ったようだった。


「それはこっちの台詞。眠ったまま起きなくて心配したんだからね」

「こっちだって! 目を覚ましたらどこにもフェルがいなくて、危ないのに1人でラテルへ向かったんじゃないかとか、攫われたんじゃないかって心配したんだぞ」


 フェルさんは苦笑いして少年に謝った。

 うん、フェルさん1人でラテルへ来ている途中だったかもしれないね。


「ラテルから騎士様たちが来てくださったんだ。それで、村の状況も確認したいってことだからラスも手伝って」


 少年ことラスくんは力強く頷いた。


 その後、2人と共に調査を行った。

 ラスくんが簡単に説明をして村の広場へ人を集め、リオルさんが彼らを調べてリステラ症候群が治っているかを調べた。

 ドルフはフェルさんと一緒にまだ眠っている人たちの様子を見て回っていた。

 マルコス、ハウロさんは人手が足りなかったり力仕事など困っている人たちの手伝いをしていた。

 私たちは広場の端で待機し、エリックさんが見張りをしている。


 広場に集まっているのは健康そうな人たちだった。気のせいかもしれないけど、リステラ症候群にかかった順番とは逆に目が覚めている印象を受ける。まだ眠っているのは子どもや高齢者がほとんどだ。眠っている人の右手には羽マークがまだ残っているものの、魔力は減っている。羽マークの魔力が尽きたら目が覚めるようだ。

 調査中に目を覚ます人もいた。


 眠っている間のことを覚えているかに関しては、「楽しい夢を見た気がする」というようなぼんやりとしたものだった。多少は夢の内容を覚えている人はいても、そう詳しく覚えている人は多くなかった。


 一通り回り終わったのかラスくんが広場へ戻ってきた。


「ラスは何か覚えてる?」

「んー、フェルと冒険者になって依頼をこなしてる夢を見たような気がする。そういうわけだから一緒に冒険者になろう!」

「ヤダ。起きてても寝てても大して変わらないね。いつ諦めてくれるの?」

「断られても諦めずに1日1回は誘うって言ってるだろー」


 2人はとても仲が良いようでそんなことを話していた。


 必要な調査は終えた。

 ロレットラリッサは約束通りにリステラ症候群を解いてくれたようだ。


 ドルフに許可を取ったエリックさんは、前の時のように自己紹介をしてから集まった人たちにカードを配った。

 ラスくんはエリックさんの正体がプラチナ級の冒険者だということが分かり、尊敬の眼差しで彼を見た。まるでファンが推しと対面した時のようだった。 

 それでもいきなり質問攻めにしたりはせず、質問していいかを確認していたので礼儀正しいなと思った。


 そんなこんなで私たちはラテルへ戻ることになった。

 フェルさんや村の人たちに別れを告げ、私たちはクスト村を後にすることにした。


「あの、そのディナルトスに触ってもいいですか?」


 村を出ようという時、ラスくんがキラキラした目で私たちの方を見て言った。

 恐がられることが多いから珍しい反応だね。


「構いませんよ。優しく体を撫でてください」


 ドルフの言葉に元気良く返事をしたラスくんは私に近づいてゆっくりと手を伸ばして体を撫でてくれた。


「凄い、かっこいい」


 嬉しそうにラスくんは呟き、ドルフにお礼を言って離れた。


 こうして私たちはクスト村を出発した。

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