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騎獣転生  作者: 赤月 朔夜
第03章 リステラ症候群
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第044話 独善

 リオルさんはリステラに許可を取って話を止めた。

 そして彼女から聞いた話をドルフたちに説明する。


「――つまり彼女は、人間を死なせたくなくて今回の出来事を引き起こしたということか。さらには善意で願いが叶う夢を見せている、と」


 ドルフが確認するように要約すればリオルさんは頷いた。


「それ、残酷じゃないですか?」


 ハウロさんがポツリと呟いた。


 そうだよね。

 幸せな夢を見せられた後、起こされるんだよ。残酷すぎる。


 反論はなく、重い空気が漂っている。


「説得する方針で進めよう。リオル、私が話しても良いか彼女に確認を取ってもらえないか? 断られたら、すまないがリステラ症候群を解くように説得をしてもらいたい。エリック殿、説得ができず戦闘になりそうであれば、魔法陣の修復およびリステラの再封印を行ってください。ハウロ殿、戦闘になった場合にエリック殿をサポートしてください」


 一通りの指示を出したドルフはそれぞれを見て反論がないことを確認した。

 話し合いが再会する。


『お待たせして申し訳ありません。彼もあなたと話したいと言っているのですが構わないでしょうか? 私が通訳を行います。お手数かと思いますが、ご検討いただければ幸いです』

『分かった』


 機嫌を損ねないようにリオルさんは丁寧に伝え、リステラも承諾した。


『初めまして、ドルフと申します。この度は対話の機会を設けていただきありがとうございます』

『ロレットラリッサだ。長ければロレットでも良い』


 リオルさんが通訳を務めることで、ドルフと――リステラ改めロレットラリッサ様との会話が行われることとなった。


『リオルから話を聞き、あなたがどのような想いを持って人々を眠らせたかは理解しました。確かに、あなたに守られている間は死ぬことはないかもしれません。ですが、眠っている間の時間は停滞し、進むことはありません。それは本当に"生きている"と言えるのでしょうか』


 ドルフの言葉は丁寧ではあるものの、ロレットラリッサのやっていることに対して異議を唱えるものだった。

 分かってもらうためには必要なんだけど、いきなり言って大丈夫なのかな?

 ハラハラしながら聞き耳を立てる。


『……どういう意味だ? 彼らは眠っているだけで死んではいない。停滞? 見せている夢は非常に現実的で、実際にできること、できないことは反映するようにしている。だから夢の中で学ぶことができる。体を動かすこともできれば、筋力を強化したり技術を身につけることも可能だ』


 思っているより夢の内容が凄そうだ。何でそこまで配慮できるのに、こんなことになっているんだろう。

 ジナルドが作っていた書類にも書かれていたように、彼女の価値観はどこかずれているように感じる。


『なるほど。では、もしその夢の中で死んだ場合はどうなるのでしょうか?』

『そのような夢を見ていたとして、それを避けることができる時期まで戻り目を覚ます。寿命が死の原因であれば、1番強く後悔を感じた時期だ』


 夢の中で死を迎えると、それで終わることはなくどこかのタイミングで目を覚ます。つまり、夢の中でずっと生き続けることになる。

 それが良いのか悪いのかは分からないし、そこは問題じゃない。それでも尋ねたのは、きっとロレットラリッサの考え方を少しでも知りたいからだろう。


『ロレット様はどれほどの人間を眠らせるつもりなのでしょうか? その目標数の人間を眠らせた場合、かけた魔法はどれほど続きますか?』

『詳細な数は不明だが、可能であれば全ての人間を眠らせようと考えている。少なくとも現時点では、私が消滅するまで魔法は続く。今のところその予定はないが。途中で魔力が尽きることもない。人数が多くなり私の魔力が尽き、もしこの魔法が解けることはあっても彼らが夢の中でした経験は現実でも役に立つはずだ』


 話を聞けば聞くほど、彼女なりに善意で行動していることは分かる。


『夢から覚めた時に残っているのは、1番叶えたい望みが叶ったという幸福が消えた現実です。夢の中で成功していたとしてもその成功も消えます。それを残酷だとは思いませんか?』

『思わないが残酷なことなのか?』


 思わないのか。ここでも価値観の違いが問題になってる。

 これ、説得できるの?


『……残酷なことなので止めて欲しい、眠らせた人たちにかけた魔法を解いて欲しい、と言えば解いてくださりますか?』

『それはできない』


 ロレットラリッサは即答した。


『理由を伺っても良いでしょうか?』

『今の理由に納得がいかないからだ。言われたことは改善した。私は間違ったことをしているとは思っていない』


 探知魔法の反応は特に変化はない。けれど、空気が変わった気がした。

 ピリピリと肌を刺すような緊張感がある。


『説明はした。安心して眠りにっ……!』

「決裂だ。エリック殿、頼む!」


 動きを止めていた水の触手がドルフとリオルさんへと向かって行った。

 ドルフはリオルさんを抱えて後方へと退避し、エリックさんに指示を出した。

 エリックさんは触手が動き出した時点で走り出し、魔法陣へと駆けていた。


 触手の1本がエリックさんへと向かう。

 氷の壁が現れ、3人の下へと向かう水の触手の行く手を阻んだ。

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