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騎獣転生  作者: 赤月 朔夜
第03章 リステラ症候群
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第042話 太い魔糸の終着点

「グルグル」


 私は足を止め威嚇するように祠を見つめながら低く鳴いた。


 肝心の祠はというとフェルさんが言っていたような外観をしていた。

 10m四方に7mはあろうかという石造りの壁がそびえたっている。窓はなく石の外壁に囲まれていた。森の中にあることもあって石壁には植物のツタが絡みついている。

 そしてその祠のてっぺんからは太い魔糸が合計で5本伸びていた。太い魔糸と言ってもその太さは微妙に違っていて、ラテルへと向かっている魔糸が1番太い。

 ラテル、ブロワ村、クスト村以外にあと2箇所、被害に遭っているってことだと思う。

 観音開きの石扉には金属製らしい大きな錠前がかかっている。


「ここがその祠でしょうか」


 ドルフがフェルさんに尋ねると彼女は肯定を返した。


「……喉が渇いたので近くの川で水を飲んできます。15分ほどで戻るつもりですが良いでしょうか?」

「えぇ、気を付けて行ってきてください」


 祠を見ながら何やら考えていたドルフにフェルさんが話しかけた。そして会話もそこそこにフェルさんは居なくなってしまった。

 まぁ、視界からは消えたけど少し遠くからこっちの様子を窺っているんだけどね。探知魔法内から出ていないから丸分かりだ。


 多分だけど気を利かせてくれたんだろうと思う。

 中を調べるには錠前を外す必要があるけど、祠の管理? をしているかもしれない村の関係者がいると勝手に入る訳にはリスクがあるから。

 しかもフェルさんの話では、クスト村では水神様という神様として崇められているらしい。

 もしフェルさんが信心深い人なら、ドルフの祠へ入る発言があったらその時点で敵に回るかもしれない。


「よし、15分だ。その間に中へ入って調べよう」


 その問題もフェルさんが居ないなら悩む必要はない。

 当然、ドルフもフェルさんの意図に気が付いていたんだろう。

 ドルフの合図にそれぞれが騎獣から降りた。


 それはそうとどうやって中へ入るの?

 いやまぁ力技で錠前を壊すことはできるけど、それは最終手段だろう。


「ハウロ殿、開錠できそうですか?」

「やってみなければ分かりませんが、何度か鍵開けの経験はあります」

「お願いします」


 ハウロさんは石扉に近づいて錠前を片手で掴んだ。

 どうするんだろうと見ていれば、ハウロさんは錠前を持っていない方の手を人差し指だけ伸ばした状態で鍵穴に近づけた。

 微かに魔力の反応がある。


 1分もしないうちに魔力の反応が少し強くなったと思ったら、ハウロさんは鍵穴から人差し指を少し離した。

 人差し指からは水が出ていて、縦に広がり摘みのような形になったと思えば次の瞬間には凍っていた。


 ふぅ、とハウロさんは小さく息を吐くと摘みを捻る。

 カチッという音がして錠前は外れた。


「よっし!」


 控えめながらも歓喜の声を上げるハウロさん。

 そんな彼の額にはうっすらと汗が滲んでいた。


 湿度は高いけど気温自体は普段よりも涼しいくらいだ。

 それでも額に汗を滲ませるほどに神経を使う作業だったんだろうね。


 少ない魔力の方が簡単に扱えるかといえばそうじゃない。むしろその逆で扱いが難しくなったりする。

 例えるなら、金盥の水を零さないようにしながらペットボトルの蓋に注ぐようなものじゃないかな。

 細かい作業は苦手だから考えるだけで面倒臭いし、やりたいとは思わない。


「おー、凄い。さっすが~。部屋の鍵を失くした時なんかは頼むね」

「その時はきちんと上長に報告して始末書を書いてください」


 マルコスがパチパチと拍手をしながら軽口を叩く。

 ハウロさんは苦笑いして答えた。

 ドルフも彼に労いの言葉をかけていた。


「んじゃまぁ、さくっと開けて中を見てきますね」


 まるで町を散策中に興味があるお店を見付けた時のような軽さだ。

 ハウロさんが鍵開けに集中している間、なーんかマルコスがストレッチしてるなーと思ってはいたけど。


「待て」


 そんなマルコスにドルフが待ったをかける。


「誰かが入って確認しないといけないですし、もしものことを考えたら俺が適任でしょう?」

「悪くはない。だがもしものことを考えるのであれば、情報を持ち帰る者が必要だ。マルコス殿はここに残ってもらいたい」


 ドルフの言葉に納得したのか、マルコスは肩を竦めて了承を返すと扉の前から離れた。


「エリック殿は魔法陣の調査、可能であれば修復。ハウロ殿は戦闘が起こった時のサポートを頼みたい」


 2人に指示を出した後、ドルフはリオルさんを見た。


「それからリオル、頼めるか?」


 問いかけられたリオルさんは少しの沈黙の後、口を開いた。


「もちろんです」


 しっかりとドルフを見返しながらはっきりとした口調で答えた彼は、覚悟を決めたような顔をしているように感じられた。


「明かりを用意します」


 言葉の通り、エリックさんは何かの召喚術を行ったようで彼の魔力が減った。その直後に彼の足元には魔法陣が出現し、その魔法陣から何十匹もの蝶が飛び出してきた。

 その蝶の大きさはアゲハチョウより少し大きいくらいで、羽に複雑な模様はなく青一色で微かに発光しているように見えた。

 蝶たちは散らばることなくエリックさんの近くを飛んでいる。


「完了です」


 ハウロさんが補助的な魔法をかけた時、私もそれぞれに身体強化をかけておいた。

 ドルフが左の石の扉を引く。

 石の扉が低い音を響かせながら開いた。

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