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騎獣転生  作者: 赤月 朔夜
第03章 リステラ症候群
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第041話 狩人フェル

「私はラテルの騎士団に所属しているドルフと申します」

「フェルと言います。クスト村で狩人をしています」


 少し警戒した様子のフェルさんだったけど、ドルフが所属と名を告げたこと、恰好を見て本当だと思ったのか自身も名乗ってくれた。

 クスト村……ドルフに見せてもらった地図にも書かれていた気がする。今いる森を南東に抜けたところにある村だったはず。


「村の人たちが眠ったまま起きないんです。僕ではどうにもならなくて、どうか助けてください」


 騎士だと分かったからか、フェルさんが必死さを滲ませてドルフに訴えかける。


「眠った方の右腕には4本の線がありましたか?」


 ドルフはフェルさんへいくつかの質問を投げかけ、クスト村の状況を確認した。

 クスト村でもリステラ症候群患者が出ていて、フェルさん以外は眠ったままなのだそうだ。その他の症状も同じで目新しい情報はない。

 最初の発症者が出たのは19日前だそうだ。11日前に発症者が現れたというブロワ村よりも早い。


 そこまで話を聞いたところで、エリックさんたちが私たちのところへとやってきた。

 ドルフが周囲を警戒するように告げる。

 どうするかの判断はドルフに任せているようで、エリックさんたちは言われた通りに警戒しながら少し離れた距離に居て静観している。


 フェルさんがなぜリステラ症候群を発症していないか、本人も分からないと答えた。

 ブロワ村でエリックさんが発症していないかったことを考えると、村といったグループの中で1人だけはリステラ症候群から逃れられるのではということが推測できる。

 でも、意図的に1人だけ残されたというよりはリステラ症候群の対象外になっている人がそのグループに紛れ込んでいた、という方がありそうな気がする。

 フェルさんの場合、魔族だったからとか。それを確かめる方法はないけどね。


「ラテルでも同じ現象が起こっています。我々は原因を探るためにやってきました」


 次にドルフが尋ねたのは、この森の東に何かあるかということだった。


「東……水神みなかみ様の祠があります」

「場所は分かりますか?」


 ドルフが懐から地図を取り出してフェルさんに見せた。

 地図を見たフェルさんは現在地を示してから指を真っ直ぐ右へ滑らせた。


「ここです」


 太い魔糸がどこまで続いているかは不明だ。でも、フェルさんが示したのは太い魔糸の直線上に重なる位置にあった。


「……なるほど。その水神様というのは? 詳しく教えてもらえないでしょうか」


 真剣な顔をしているドルフに対して、なぜそんなことを聞くのかとフェルは少し困惑した様子で口を開いた。


 曰く、祠には水を司る神様が住んでいてこの国を見守ってくれているという。

 しかし、水神様は未熟で勉強をしている途中だと言われているらしい。だから安易に願い事をしてはいけないし、世界を見て勉強をしているから悪いこともしてはいけない。なぜなら水の神様が間違っていることを正しいことだと思ってしまうから、と。


 事実かは不明だと前置きしてから、森へ入って魔物に襲われそうになっていた村人が水で出来た女性に助けられたという話もあるとフェルさんは話してくれた。

 うん、聞いた感じだとリステラっぽいね。


「その祠はどのようなものですか? 大きさや造りは?」


 祠は石で造られていて大きさは10m四方で高さは7mほどあるらしい。

 南側に観音開きの扉があるだけで窓などはなく、その扉にも鍵がかかっていて中は見たことがないという。


「情報提供、ありがとうございます。我々は調査に戻ります。フェルさんも気を付けてお帰りください」


 ドルフが私の上に乗る。


「待ってください。祠へ行くというのであれば僕も同行させてください」

「しかし……」

「どのような調査を行ったか、どうなったかを村長へ報告する必要があります。それに、僕は斥候としてお役に立てると思います」


 フェルさんの申し出にドルフは口ごもる。

 続けて行われるフェルさんの主張も当然のものだった。祠のことを教えたのはフェルさんだし、おかしなことをしないか何をするか見ていたい気持ちも分かる。あとは純粋に手伝いたいとか。

 それに彼女自身、ワニに対しての立ち回りとか、メンバーを見て斥候が居ないのではと察して売り込むのも上手いと感じた。

 気になる点としては、彼女の言ったことはあくまでも自己申告であり本当かどうか分からないということだ。


「……分かりました。よろしくお願いします」


 ドルフは少し考えた後、了承を返した。


「まずは当初の予定通りに進みます」


 簡単な自己紹介を行った後、予定通りに私の案内で進むこととなった。

 そこでフェルの移動手段はどうするかという話になった。

 しかしフェルさんは、身体強化が使えるから大丈夫と誰かと一緒に騎乗することはなかった。


 そして、言葉の通りに森の中を走る私たちと並走していた。

 身軽に木々を飛び移りながらね。

 さらに言えば、魔力が使用されている反応がないため身体強化を使ってないという。


 フェルさんは移動しながらも木の上から周囲を見ているようで、危険性のある生物を発見したら知らせてくれる。

 その上、私たちが通りやすいように木が少なかったり足場が安定しているところへと誘導してくれている。

 フェルさんが加入してくれる前、私もきちんと探知魔法で分かる範囲で通りやすい場所を選んで走っていた。それ以外にも太い魔糸だったり動物や魔物の反応にも注意しなければならなかった。

 その役目をフェルさんが代わってくれたおかげで私の負担が軽くなったし、移動速度もアップした。

 戦闘の時も敵の目を矢で潰したりと活躍している。

 他の役割と比べたら地味かもしれないけど、凄いなと感じた。


 そして、探知魔法に建物らしきものの反応が引っかかった。

 太い魔糸がその建物の内部へと続いている。


 恐らく、ここが太い魔糸の終着点だ。

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