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騎獣転生  作者: 赤月 朔夜
第03章 リステラ症候群
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第037話 ラテルの外へ

 話し合いの結果、私の案内でリステラ本体がいるであろう場所へ向かうこととなった。

 責任重大過ぎて寝ている時に悪夢とか見そう。

 会社でやったイベント進行役も緊張したけど、それも2時間程度だった。その時でさえ前日の夜に遅刻する悪夢を見たりしたのに。


 まずはレスターさんたちと合流しようと準備をしてから私たちは城を出ることにした。

 ドルフは私に、エリックさんは白い狼に乗って移動するとして、リオルさんの移動手段はどうするかとなった。

 移動速度や休憩のタイミングを考えればディナルトスに乗ってもらう方が都合が良い。


 ドルフがガルたちの居る小屋の扉を開けるとすぐに彼らは駆け寄ってきた。


『ラナ。何だかおかしな雰囲気だが何が起こってるんだ?』

『倒れてる連中もいたな。悪いものでも食ったか?』

『もしかして、倒れた人って寝てるの?』


 3匹とも町の雰囲気が違うことに気が付いていたみたいだ。


『町の人たちを眠らせている人が居るみたい。これからその人がいるんじゃないかって場所へ行くの』

『じゃあ今はつまみ食いし放題なのか』

『……ギル?』

『冗談だって』


 いや、本気だったでしょ。


 ギルの言葉に呆れながら様子を窺っていると、ドルフがリオルの騎獣に選んだのはグルだった。リオルさんは小柄で体形も細身。軽い騎手を好むグルに合っていた。

 問題はリオルさんが怖がらずにグルに乗れるかだった。私のことは可愛いと思ってくれたらしいけどグルのことは大丈夫かな?

 リオルさんの方を見れば、表情は硬く顔色も少し悪かった。最初の時よりはマシだけどグルのことを怖がっているように見える。


「ク~?」


 大丈夫? と聞くようにリオルさんを見つめて鳴く。


「大丈夫、大丈夫……」


 リオルさんは私を撫でた後、自分に言い聞かせるようにブツブツと呟いてからドルフに手伝ってもらってグルに乗った。

 少し不安は残るものの、様子見かな。落ちそうになったりグルが暴走するようなことがあったら結界で助けられるようにはしておこう。


 その後、レスターさんたちが同行してくれる可能性も考え、ガルとギルも一緒に連れて行くことになった。


 門の前には1人の騎士が立っていた。彼に挨拶を行い門の外へ出る。

 ドルフは私に、エリックさんは白い狼に、リオルさんはグルに乗って大通りを進んだ。

 不安が残るリオルさんだけど、騎乗技術はあるようで安定しているように見えた。

 何かあれば分かるようにと探知魔法を継続して使う。


 いつもは買い物客や店主の会話や呼び込みの声、最近だと本を朗読する声が聞こえているような賑やかな通りなのに、今はとても静かだ。

 それだけでなく、あちこちに人が倒れているという異様な光景が広がっている。ザックたちが移動させたのか、道のド真ん中に倒れている人は居なかった。

 その人たち全てに赤い魔糸が繋がっている。


 例によって動物たちは平気のようで野良猫や犬、鳥たちは眠っていない。馬などの飼われている動物は心配そうに飼い主に寄り添っていた。

 微かな吐息が聞こえるから倒れている人たちは眠っているだけなはずだ。でも、凄く不安を感じる。


 このままだったらどうしよう。

 嫌な考えが頭をぎる。解決するためにも私たちは行動しているんだ。私たちの頑張り次第でどうにかなるかもしれない。その不安を振り払うように、自分に言い聞かせる。


 そんなことを考えながら何かあってもすぐに止まれる速度で通りを走った。


 静かな町を走っていれば無事にザックたちと合流できた。

 簡単に状況整理を行ってからラテルを出ることをドルフが説明する。


「ラテルのことを頼む」

「任せてください」


 ドルフの言葉にザックたちは力強く頷いた。


 町を出るために魔力壁を通り抜けた時、魔糸が延びてきてドルフたちにくっついてしまった。

 すぐに見えない結界を張る。それだけで魔糸を切ることができた。


 無事にラテルを出られたのでドルフの指示に従って東にある湖へと向かう。

 その道中で馬車を掴んでこちらへと向かって飛んでいる巨大な鳥の姿が見えた。鳥の背にはレスターさんが乗っており、私たちに気が付くと手を振ってきた。


 レスターさんが指笛を鳴らすとその音を合図に巨大な鳥はゆっくりと地上へ下りてきた。地響きを立てつつ馬車は地面の上へと着地する。

 馬車からはマルコスと茶色のローブを着た人が下りてきた。その人は灰色の髪に金色の目をしていた。マルコスと同年代くらいに見える。

 ひとまずレスターさんたちと合流できたので探知魔法は切っておくことにした。何かあった時のために少しでも魔力を温存しておこう。


 彼らが来ていることは分かっていたけど、マルメを秘密にするため知らない素振りでドルフは対応していた。

 用件を聞くとエリックさんからブロワ村の報告を受けて先行隊として手伝いに来たとのことだった。


「エリック殿、彼らはルセルリオに所属している騎士団員です。左からレスター殿、マルコス殿、ハウロ殿です」


 ドルフがレスターさんたちをエリックさんに紹介する。


「ルセルリオ騎士団所属の第四小隊隊長のレスターです」

「第四のマルコスです」

「同じく第四小隊に所属しているハウロと申します」


 レスターさんとハウロさんは真面目に自己紹介していたけど、マルコスは面倒くさそうに欠伸をした後に名乗っていた。


「すでにご存知かもしれませんが、彼は冒険者協会に所属しているエリック殿です」

「初めましてエリックと申します。召喚術士として活動しているプラチナ級の冒険者です」


 それぞれ自己紹介も終わり状況の報告が始まった。

 ドルフはリステラ症候群について分かったこと、ラテルの状況、これから本体がいるかもしれない場所へ向かうこと、資料を参考にしており正確な場所も距離も不確定でどれくらいかかるか不明であることがレスターさんたちへ伝えた。


 さすがに私の案内でリステラ本体がいるであろう場所へ向かうことは伏せられた。


「リステラは不定形である可能性があります。ルガロフといった不定形の生物用に切断の魔法が組み込まれた剣を持ってきました。本体に通じるかは分かりませんが、無いよりは良いでしょう」


 そう言ってドルフはレスターさんたちに剣を差し出した。

 見た感じは普通の剣だ。ドルフの持っている槍と同じようなものなら魔力を流すことによってその魔法が発動するんだろう。

 どういう原理なのかは分からないけど効果があればいいな。

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