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騎獣転生  作者: 赤月 朔夜
第03章 リステラ症候群
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第036話 今後についての相談

 ドルフは考えるように小さく唸った後、リオルさんを見つめた。


「リオルはこれまでの話の中で何か気になったことはあったか? 今の案についてどう思った?」


 ドルフはこれまで黙って話を聞いていたリオルさんに話を振った。

 リオルさんは「え、あっ……」と少しワタワタとした後、覚悟を決めたように1度深呼吸をした後に話し始めた。


「……僕が気になったことは2点です。」


 そう言ってリオルさんは右手を上げて親指と人差し指を立てた。

 指で数を表現する時、人によって地味に違うんだよね。リオルさんは親指からカウントしているけど、ドルフは小指から数える。日本のように人差し指を1としてカウントする数え方は異世界に来てからまだ見ていなかったりする。リオルさんのように親指から数える方法が一般的な印象だ。


「まずは今の案についての考えからお話しします。僕は現段階では賛成とまでは言えません。理由は、もしリステラが近場から狙っているのだとしたら東側にいるのではないかと思ったからです。ヤンクイユは西にあるので、西を探すことには反対です。ラナの心当たりがもし東なら賛成です」


 ブロワ村がどこにあるか詳しい場所は分からないけど、エリックさんがブロワ村から一直線にラテルへ向かっていたのであれば東にあるはずだ。


「気になることの1つ目ですが、リステラの共犯者、または教唆きょうさした者がいるのではないかという恐れについてです。リステラが封印されていたのではないか、という推測には賛成です。それを踏まえた上で、その何者かがリステラの封印を解きそそのかしたのではないかと考えました」


 リオルさんは眼鏡を中指で上げた。そして「根拠として語るには不十分だと思いますが」と少し不安そうに言ってから話し始めた。


「資料に書かれたリステラは物事の捉え方の違いから結果として様々な問題を起こしていました。ですが、神官ククルクが注意したことについては改善が見られました。その点から、彼女なりに人間へ歩み寄ろうとしていたのではないかと考えられます。そんな彼女がこれほどの事態を引き起こしたのは、何が理由があるのではないか、と思いました。それが共犯者、教唆者の存在です」


 彼の考えも凄く納得できる。確かにそういう存在がいてもおかしくない。


「言葉が通じるのかという問題はありますが、僕たちが知らないだけでどこかの国で一般的に使われている言葉かもしれません。特に今は読書祭どくしょさいが行われています。観光目的の旅人がリステラと会話できる言語を知っていたかもしれません」


 もし教唆者がいるとしてその人の目的は何だろう?

 ラテルを滅ぼしたかったとかだと恐ろしいな。襲撃されたこともあるから無いとは言えない。


「2つ目は、ルナがラナを庇った後、依り代が行動を止めたことについてです。都合の良い推測かもしれませんが、ルナをリステラ症候群にするつもりはなく、動揺したために行動できなくなってしまったのではないでしょうか。もしその場合、リステラは不測の事態に弱くそのような状況になった時に行動できなくなる可能性があります。以上です」


 話し終わった後、リオルさんは不安そうにドルフとエリックさんの様子を窺った。


「とても参考になる話だった。ありがとう」


 穏やかにドルフがお礼を言えばリオルさんは心底安心したように小さく息をついた。

 リオルさん、どうしてこう自信がないんだろうね。


「また気になることがあれば遠慮せずに話して欲しい」


 その言葉にリオルさんは嬉しそうにこくりと頷いた。


「私はラナの言う心当たりへと向かってみようと思う。同行してくれるのであれば助かるが、無理にとは言わない。2人はどうする?」


 そう言ってドルフはエリックさんとリオルさんを見た。


「もちろん、同行させていただきます」


 エリックさんは微笑み即答した。

 ドルフはお礼を言ってリオルさんへと視線を移す。


「僕も同行したいです。でもその、戦闘は不得手で足を引っ張ることになる恐れがあります。それでもいいのであれば同行させてください」

「ありがとう。可能な限り補助は行う。こちらこそよろしく頼む」


 その言葉にリオルさんは力強く返事をした。


「私はこれまでの経験からラナのことを信頼していますが、2人がラナの案内で進むことに関して否定的でないことに驚きました」


 普通ならディナルトスが適当なタイミングで鳴いただけだろう、と言われてもおかしくない。

 結界を張ったのが私だとしても、それとこれとは話が違う。

 結界は短期的なものだし害になることも少ないようなもの。案内は不確定要素が多くて不安定なものだからだ。


 例えるなら橋のようなものじゃないかな。

 結界の時は橋だと気が付かずに渡り終えていた感じ。


 でも案内の方はそうもいかない。

 橋には靄がかかっていてどこまで続いているのか、橋の下がどうなっているのかも分からない。

 ドルフには石の橋に見えているかもしれないけど、エリックさんやリオルさんには頼りない吊り橋に見えているはずだ。


「俺が召喚術士だからかもしれませんね。動物や魔物と接する機会が多く、彼らに助けられたことも少なくありません。素直な反応をしてくれる分、人間よりも信用しているくらいです」


 小さく笑ってから穏やかな微笑みを浮かべてエリックさんは言った。


 その言葉を信じるなら、エリックさんにも私の案内は石の橋に見えているのかもしれない。

 でも、そこまで信用されるようなことをしたかな?


 そう考えていたらエリックさんが私の方を向いた。


「だから、俺とも仲良くしてくれると嬉しいな」


 エリックさんは私の反応を見ながらゆっくりと手を伸ばすと私の体を撫でた。


 あれ、もしかして引き抜き対象として私自身が狙われてたりする?

 少し不安になったので、何も知らない風を装って首を傾げた。


「ラナが賢くて優しいディナルトスなのは分かっているつもりです。それに、僕はラナを信頼するドルフさんを信じています」

「ありがたいことだ。その信頼に応えられるよう全力を尽くそう」


 こうして話はまとまり、私たちは太い魔糸を辿ってみることにした。

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