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騎獣転生  作者: 赤月 朔夜
第02章 護送任務
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第021話 帰宅

 次の日の夜、私たちが何かをするということはなかった。


 特に罠があったわけではなく、家に入ったマルコスからの合図で家へと踏み込んだジェフリーさんやレスターさんによってフレイさんは捕らえられた。

 びっくりするくらいあっさり終わった。


 フレイさんは納得がいかないという様子でマルコスを見ていた。

 その視線に気が付いたマルコスは何も言わずに肩を竦めた。


 フレイさんを捕らえたことで分かったことも多いらしい。どうやって聞き出したのか手段については何も聞いていない。


 数日が経った。

 レントナム様の容態は快方に向かっているという。薬の作り方も主治医やジェフリーさんに伝えているそうだ。


 そして、私たちもそろそろ帰ろうかという話になった。

 もっとここに居て手伝えることがあるじゃないかと思うけど色々と事情があるのかもしれない。


 今日は帰りの準備、翌日の朝にルセルリオを出発するという話だ。

 カイルに連れられて家の外や屋敷回りを歩いている時に訓練をしているレスターさんたちの姿を見つけた。


 カイルがレスターさんと話している時にマルコスもやってきた。


「これからラナと走りに行くんですか?」

「えぇ、そのつもりです」

「良ければその前に1度手合わせをお願いしても?」

「構いませんよ」


 2人が少し広いところに移動してそれぞれ木剣を構えた。

 どうなるのだろうと興味深く眺めていたらレスターさんが開始の合図を出した。


 カイルとマルコスが木剣で打ちあっている。体格的やリーチではカイルが優勢。でもマルコスも素早い動きでそれをカバーしている。カイルがパワー系ならマルコスはスピード系のように感じる。

 タイミングを図ったり素早く打ち込んでカイルを翻弄しているマルコスだったが、カイルも落ち着いて対応している。

 カイルの鋭い突きをマルコスが木剣で防ぐ。しかし勢いを殺しきれずにマルコスの持っていた木剣が弾かれた。


 いやちょっと待って。こっち飛んできてるんですけど!?


 反射的に横に飛びのく。木剣は壁に当たって地面に落ちた。

 避けなくても当たらない位置だった。


「大丈夫かラナ?」


 驚いて取り乱しても宥めるつもりだったのか少し警戒しながらカイルが駆け寄ってきた。落ち着いている私を見ると体を撫でてくれた。

 

「すみません。大丈夫でしたか? でも、さっきの驚いて飛びのいたラナ、面白かったですね」


 マルコスも少し遅れて私の近くに来た。

 最初は申し訳なさそうにしていたくせに、平気そうな私を見るとぷぷっと噴き出して笑い始めた。


 とりあえず軽く唸って睨んでおいた。


「ごめんって」


 そう言って私の頭を撫でようとするので驚かせてやろうとその手に噛みつく振りをした。

 避けれるように速度は落としていたにも関わらず、マルコスは避けようとしなかった。


 結果、マルコスの手は私の口の中にすっぽりと入った。


 周囲の空気が固まった。


「ラナ!?」


 すぐに我に返ったカイルが慌てて私の口を開けようとする。

 私は素直に口を開いた。


 歯は閉じていなかったのでマルコスの手に傷はない。


「いやー、偉いですね」


 当人はというとまるで動じた様子もなく、懐から取り出したハンカチで私の涎が付いた手を拭ってから私がくわえた方とは別の手で私の頭を撫でてきた。

 何なの!?


 木剣が飛んで来たのは偶然だろうかと疑問が浮かぶ。でも意図して私に向かって木剣を飛ばす理由はなんだろう。結界を使わせたかったとか? でもそれなら当たるように狙えばいいよね。


 なし崩し的に手合わせは終了し、私はカイルと共に町の外を走りに行った。


 そして翌日の早朝、私たちは予定通りラテルへ帰ることになった。

 メンバーはドルフを含むうちの騎士たちだ。

 レクシス様用の馬車もある。


 ジェフリーさんやお屋敷の関係者に見送られて私たちはルセルリオを出発した。




 ハプニングなどもなく私たちはラテルに戻って来た。

 お出かけした時に走る辺りまで帰って来た時はようやく戻って来たんだという実感があった。

 知らない道もワクワクするけど見知った道は安心できていいね。


 お城の厩舎に戻ってきた時の安心感が半端ない。実家のような心地よさだ。


『ただいまー!』

『おかえり』


 私はガルたちに迎え入れられた。


『ラナから知らない奴の匂いがするー!』

『何だと!?』


 私の首元辺りを嗅いだグルが声を上げる。

 グルの言葉にガルが私の首元辺りを嗅ぐ。


『ちょ、そんなに嗅がないでよ』


 クンクンされて私は後退した。


『一体どいつだ? そいつはどこにいる?』


 何のことだろうと不思議だったけど、はたと思い出す。

 そういえばクロートの森で野生のディナルトスたちに護衛してもらったわ。別れる時、その群れのリーダーらしきディナルトスが私の首元に頭をこすりつけていた。

 あぁなるほど、それで彼の匂いが付いたのかと納得する。


『任務の途中で助けてくれたディナルトスに頭を擦りつけられたの』


 別れの挨拶みたいなもんだと思っていたからすっかり忘れていた。


『ところでルナは?』


 なぜかルナの姿が見当たらない。モフりたかったから悲しい。


『まさか……』


 私が居ないからって食べたんじゃ? とガルたちを見る。


『食べてない。人間が城の中に連れて行った』


 まぁ無事ならいいか。


 初の任務が終わって数日をのびのびと過ごした。

 ルナも私が帰って来た次の日には小屋に戻って来た。思う存分モフったらしつこすぎたのかキックされた。


 そんなこんなで私は今日も平和に過ごしている。

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