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騎獣転生  作者: 赤月 朔夜
第02章 護送任務
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第017話 突入

 ジェフリーさんを追って廊下を駆ける。

 お城ほど広くはない。けれどドルフを乗せた私が問題なく走れるほどに屋敷の廊下は広かった。

 屋敷の中にも火の手が回っていて煙が凄い。今はまだ少し見えるけどすぐに何も見えなくなりそうだ。


 耐火魔法のおかげかそれほど熱は感じない。

 こんな魔法もあるんだね。


 屋敷に入ってからは隠すこともなく結界を繋ぐように脱出用と排気用の2つの結界を伸ばし続けた。

 それぞれに繋いでいる結界はきちんと屋敷用のものに変更している。

 私たちは脱出用の結界を進みながら進行方向に結界を張り続ける。そのおかげで煙に巻かれることはない。


 ジェフリーさんからの指示、探知魔法による構造把握もできているから結界範囲外で煙に視界を遮られていてもどうにかなった。


「煙が晴れて火が避けていく。便利な魔法だな」


 後ろからついて来ている人の1人が呟きが聞こえる。


「結界です。外に出ないように注意してください」


 レクシス様がその呟きに答えた。結界を張ったとは言っていないけどレクシス様が張ったと勘違いするような言い方に思える。

 私が結界を張っているとバレないようにかばってくれているのだろう。とてもありがたい。


 裏口からそう遠くない場所に階段はあった。階段があるおかげか煙はそれほど多くない。

 逆に言うと多くの煙が上の階へと昇っていることになる。


 結界を張ることで煙の晴れた階段の右側を駆け上がる。

 木製で今にも崩れ落ちそうなくらいにボロボロになっているけどそこは結界を足場にすることで対応した。


 踊り場で折り返して2階へ上がる。そして1つ、まずいことが分かった。

 階段は螺旋状になっていて2階から3階へも上がれるようになっていた。

 これでは階段を基点に他の階にも煙が回ってしまう。

 煙は横よりも上に広がる方が速い。確か横よりも上昇する速度は5倍くらい速いんだったかな。


 どうしよう。どうすればいい?

 当然ながら誰からも返答はない。私に何ができるだろうと必死に思考を巡らせる。


「3階に残っている者は?」

「居ません。私たち以外は全員2階に集まっています」


 だったら結界を防火扉の代わりにしておこう。阻むものは火と煙。これで煙が流れないようにしつつ階段からの延焼は避けられるかもしれない。

 2階に上がったすぐのところに防火扉用の結界を張った。


 ジェフリーさんに続いて2階の廊下を走る。壁が濡れていたりあちこちに消火活動の痕跡があった。それもあって1階よりはマシとは言え、2階もあちこちが燃えている状態だ。

 進行方向に結界を張って視界がクリアになった時、ローブを着て杖を持った男性の姿が見えた。男性もこちらに気が付いたようで私たちを見て驚いていた。

 直後に男性は笑みを浮かべる。


「遅い」

「これから巻き返します」


 そんな軽口を交わしてジェフリーさんは男性の横を通り過ぎた。


 その男性の横を通った先に火の手は届いていなかった。まるで火がこちらに燃え移ることを拒否しているようだ。

 男性から放出されている魔力から察するに、どうやら魔法で火の延焼する方向を操作していたらしい。

 そして彼の持つ魔力はそろそろ底を尽きそうだった。

 結界の中に入ったことで男性は魔力の放出を止めたようだ。


 目的の部屋に到着したようでジェフリーさんが扉を開ける。

 バックドラフトが起こる可能性も考えて他とは違って強力な結界を張っていたが、特に何も起こらなかった。


「ジェフリーさん!」


 部屋の中から女性の声が聞こえる。

 中を覗くと執事服を着た女性が1人、男性騎士が1人、ローブの男性が2人いた。

 床を見れば意識がないらしく目を閉じている横たわっている人がいる。その数は聞いたよりも1人多くて3人だった。うち1人の体格の良い男性は体に酷い火傷を負っていた。応急手当はされていてローブの女性がその男性の近くにいて涙を流しながら彼の手を握っていた。

 残る2人は意識がないけど見たところ外傷はなさそうだ。


 そしてベッドの上にはパジャマ的なゆったりした服を着た中年男性が横になっている。

 おそらくこの人がレントナム様なのだろう。彼の顔色も土気色で脂汗も滲んでいてとても苦しそうだ。意識はあるようで目は開いている。


「応急処置を行います」

「俺は今でなくていい。すぐにバルトを診てやってくれ」


 ドルフとレクシス様が私から降りる。

 直後にレントナム様が自分のことはあとでいいと言った。

 レクシス様はその言葉を聞き入れてすぐにバルトさんへと近付いた。

 屈んでバルトさんの火傷に両手をかざす。


 柔らかな光がバルトさんを包み込む。

 馬の怪我を治した時よりも激しい光で、光が消えればバルトさんの焼け焦げた皮膚が正常な肌に回復していた。


「……ん、ここは……」


 バルトさんが小さく呻いて目を開けた。ローブの女性が感極まったように嗚咽を漏らしてレクシス様にお礼を言いながら泣いていた。


「すぐに脱出します」


 倒れている人たちは一緒に屋敷へ入って来た人、それからコリーさんが運ぶことになった。

 そしてレントナム様はジェフリーさんが背負っている。

 ドルフが先に私に乗ってレクシス様を後ろに乗せる。


「俺たちが先導します」


 その言葉と指示に従って私は走り出した。

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