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騎獣転生  作者: 赤月 朔夜
第05章 人が変わるという噂と謎
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128話 『夢世界』の崩壊が始まる

 それから少しして空や地面に亀裂が入った。その亀裂は割れたガラスに負荷がかけられているかのように広がり続けている。


「『夢世界』の崩壊が始まったようだな」


 ジェドさんの言葉の通り今も亀裂は広がり、空の一部からはガラス片のような物がパラパラと落ちてくるようになった。


 欠片が剥がれ落ちたところは真っ黒で不気味なんだけど大丈夫だよね?


 地面の方も大きくなった亀裂から崩壊を始め、地面に穴が空いていく。


「大丈夫なんだよな?」

「そう心配するな。大丈夫だ」


 デニスさんも不安になっていたようだ。

 ジェドさんの言葉を聞いても安心できなかったのか、デニスさんはセレスさんを見た。


「私も大丈夫だと思います」


 セレスさんからも大丈夫だと言われてようやくデニスさんは安心したようだ。


 やがて、私たちが座っていた地面も割れ、バラバラになるように崩れ始めた。


 私はというと、ずっとドルフにくっついて

地面に座っていた。

 大丈夫だって言われても怖かったからね。


 落ちているはずなのに浮遊感はなく、傾いているはずなのに体感的には平行のままだ。ずり落ちるような感覚もない。

 これもきっと『夢世界』ならではのことだろう。


 地面が割れたことでデニスさんとセレスさんとは離れ離れになった。彼らの方を見ると割れた地面と共に落ちていってやがて消えた。

 見えなくなったとかじゃなくて一瞬で消えた。


 私たちが乗っている地面も落ちている最中だけど、デニスさんたちが乗っていた方と比べて落下速度が遅い。


「ドルフ、何か私に聞きたいことがあるんじゃないか? 何か言いたそうな視線を時折感じたんだが」


 唐突に話し始めたのはジェドさんだった。


 このタイミングで!?


「あなたは本物のジェドさんではなく、この『夢世界』の一部であり審査官ですね。私やデニス、それからセレスさんがどうなるか聞いても良いでしょうか?」


 ドルフの言葉に彼は小さく笑った。


「何だ。やはりバレてしまっていたか。とんだ茶番を演じてしまったな」


 そして、楽しそうにドルフの言葉を肯定した。


 素晴らしい演武でしたと言うドルフに偽ジェドさんは苦笑いしながらお礼を言った。

 2人の雰囲気はとても和やかだ。


 何かこう、色々と都合がいいなとか思ってたけどジェドさん偽物だったんだ。

 探知魔法で反応がないのは本物と同じなんだけどどういう原理なんだろう。


「さて、少し整えるか」


 彼がパチンと指を鳴らすと私たちの下に椅子やらソファーやらが表れ、四方には窓付きの壁ができた。上を見上げれば照明と天井があり、私たちは一瞬で客室の中にいた。


「話に戻るが、ドルフたちには特に何もしない。巻き込まれたことについて何か賠償が欲しいということであればいくらか対応できる。それで問題のセレス嬢だが、彼女についても特に何かをするつもりはない」


 賠償かぁ。私にも何かもらえたりしないかな。

 セレスさんについても大丈夫そうで良かった。


「あなたは一体何者なのですか?」

「一言で言うなら『夢現ゆめうつつしずく』の魔法薬だ」


 正確には『夢現の雫』に組み込まれた魔法の機能の1つだと彼は言った。

 他にも『夢現の雫』を飲んだ者に夢見せ魔法をかけたり、使用条件が守られなかった時に使用者とその周辺にいた者を巻き込んで『夢世界』へ引っ張り込む機能など様々な機能があるという。

 偽ジェドさんの場合は使用者と巻き込まれた者がどういった者か不正に『夢現の雫』をしていないか調査して処罰を決めることなのだそうだ。


「権力者など力を持つ者を自分の言いなりにしたい者は多い。そうさせないようにするため、使用者と対象者は厳しくチェックするためだ」


 確かに人を操れるような薬が簡単に使えたら怖い。


「審査官として紛れ込む際、副リーダーのように動けるような人物を選出して姿を変える。その時に偽物だと見破られないよう『夢世界』で軽く対象者たちの記憶を調査する」


 だから今回は偽ジェドさんだったけど、その時々によって審査官は変化するそうだ。

 もちろん、『夢現の雫』の使用条件が守られていたら審査官が機能することはない。

 使用条件が守られていた場合にはまた別の機能が働くようだ。


「審査が終わり『夢世界』が消えた後は調査内容も消去される」


 なんてカッコよく言ったが。と補足説明がされる。

 偽ジェドさんが言うには、薬などと同様に『夢現の雫』を飲んだ者の体内に吸収される。その時に魔法構造も崩れるのでやがて効果を失い分解されるそうだ。


「こんなところか。他に聞きたいことはあるか?」

「姿見に映っていたセレスさんはどうなるのでしょうか」


 あぁ、と思い出したように小さく声をもらして偽ジェドさんは話し始めた。


「彼女については、いざという時に表のセレス嬢を止められるようにする」


 うん、それが良さそうな気がする。それができていれば今回のことは起こらなかったはずだから。


 他に質問はそう問われたドルフは首を横に振った。


「では、次は楽しみにしているかもしれない賠償の話と行こうか」


 そう言って偽ジェドさんは微笑んだ。

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