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騎獣転生  作者: 赤月 朔夜
第05章 人が変わるという噂と謎
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125話 分からないことだらけ

「待ってくれ! 俺たちが脱出したらセレスはどうなる? そもそも、どんな罪を犯してどんな罰があるんだ?」


 デニスさんの問いかけにセレスさんは謝罪した。話すつもりはないということだろう。


「彼女に悪気はありませんでしたが、だからといって許されることではありません」


 セレスさんはこの『夢世界』から脱出するつもりはないようだ。

 説得を続けようとするデニスさんをジェドさんが止めた。


「この後どうするか我々で話してくる。何かあれば声をかけてくれ」


 ジェドさんの提案に反論はなく、私たちは隣の書斎へ移動した。


「デニスがセレス嬢のことを助けたいのは分かっている。ドルフはどう考える?」

「私も彼女を助けたいとは思います。ですがそれは、私たちが危険な状況になってまでするべきことではありません」


 デニスさんの気持ちもドルフの考えも理解できる。

 そもそもの話、分かってないことが多すぎる。下手に助けようとして事態を悪化させたり被害を広げることになりかねない。


「私はもう少し調査をしたい。具体的にはこの廃墟の北東へ向かって何があるかの確認だな」


 何かあると言い切ることはできないが何かある可能性は高い。もしそれが核であれば『夢世界』を解除することができる。核でなかったとしても核へ繋がる糸口が見つかるかもしれない。


「セレスさんの話では彼女は罰を与えられるのでしょう? 彼女を襲おうとする何かがいて我々も狙われる恐れがあるのではないですか?」

「ドルフだけ脱出しても良いぞ」

「できるわけがないでしょう」

「では、ついてくるしかないな」


 いい笑顔で言うジェドさんにドルフは小さくため息をついた。

 私はドルフを慰めるように近づいて体を摺り寄せた。


 その後、私たちは話し合った結果をセレスさんへ報告するため寝室へと戻った。

 ドルフからの報告を聞いたセレスさんは危険だと彼らを説得しようとした。


「ここから出られなくなるかもしれないんですよ!?」

「ただ追い出されるだけかもしれない。仮に眠ることになったとしても、いずれ魔力が尽きれば目を覚ます。それが『夢世界』だろう?」


 ジェドさんの言葉にセレスさんは視線を落として考え込んだ。唇を噛み締め、落ち着きなく視線を彷徨さまよわせている。焦りながら色々と考えているようだ。


「……もし、何日もずっと眠り続けることになったらどうするんですか」


 眠っている間は当然ながら飲み食いできない。人って水分をとらないと3日とかで命の危機になるんじゃなかったっけ。


「そうなる前に脱出する」


 ジェドさんはそう言い切って止めるセレスさんには応じず寝室を出た。


 『夢世界』のことを良く知っているからかもしれないけど、ジェドさんの自信は凄いな。

 その自信のおかげで何とかなるかもしれないと思える。……実ははったりでしたとかないよね? 勝手に信じるよ?


「死ぬまで眠り続ける。それがセレス嬢に下される罰なのかもしれない」


 建物から出た時のジェドさんの言葉でデニスさんは心配そうに建物を振り返った。でも、すぐに前を向いて私たちについてきた。


 セレスさんへの罰がジェドさんの言った通りだとしたら、セレスさんは何をやろうとしたんだろう。

 表セレスさんに悪気はなかったらしい。そうだったとしても、他者へ自分の価値観を押し付けたり何かを強要するのは良くないことだ。


 考えすぎて頭が痛くなってきたような気がする。


 頭を休ませようと空を見れば、空にある目は相変わらず北東を見ている。

 夢の主の心理状態を表しているのかずっと曇り空だ。

 曇っていることも含め、あまり状況が変わっていなさそうなのはまだ良かったのかな。


 町の中央にある通りを歩きながら北東へ向かっていると、道を進むにつれて周辺の建物がさらにボロボロになっていくことが分かった。

 遠くから見た時はどれも同じくらいの損傷具合だったのに、今では扉がなくなっていたり壁に穴が空いていたりする。


 何だか「近づくな」って言われているような気さえしてきた。

 ドルフたちも建物の雰囲気が変わっていることに気づいているようだけど何も言わない。

 何があるか分からないから音をさせないように会話を避けているんだろうけど不安になってくる。


 先頭を歩いていたドルフが手で合図を出す。


『ここを曲がる』


 人差し指を曲がり角へ指示しているのでそんな感じの意味だろう。

 そろそろ曲がり角へさしかかろうという時、周辺の建物が消えた。


 いきなり広場へやって来たようにたいらな地面が続く景色の中、反射的に北東の方をみる。


 そこには真っ黒でボロボロのローブを羽織った骸骨が立っていた。本来目がある部分に目はなく、火の玉が青白く発光している。

 彼の足元には傷だらけのセレスさんの姿があって血も流れていた。

 ここで戦闘が行われたのか、周辺の地面はえぐれあちこちに血の跡がが残っていた。


 その骸骨はどこにそんな筋力が残っているのかと言いたくなるような大きな鎌を持っており、それを振ると顔を上げて私たちの方へと向いた。

 しかし、私たちに興味はないようですぐに視線を下ろしセレスさんを見た。


 そして、持っていた鎌を振り上げた。

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