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騎獣転生  作者: 赤月 朔夜
第05章 人が変わるという噂と謎
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124話 姿見に映ったセレスさん

 姿見に映ったセレスさんに驚いた私は良く分からない声を上げて姿見から離れた。

 慌てて離れたせいでクローゼットにぶつかり、それなりに大きな物音を立ててしまった。


「何だ!?」


 そんな私のドタバタ劇にデニスさんも驚きの声を上げてこちらを見る。

 当然ながらデニスさん以外の全員もこっちを見ていた。


 私がディナルトスじゃなくて人間だったら恥ずかしくて赤面していたかもしれない。

 驚いたんだから仕方ないじゃない。


「驚いたな。だが、お手柄だラナ」


 姿見に映るセレスさんを見たドルフがそう言いながら私の頭を撫でてくれる。

 ドルフとデニスさんは笑ってないけどジェドさんは小さく笑っていた。


 もう、笑わないでよ! 本当にびっくりしたんだから!


 私がジェドさんを睨むと彼はピタリと笑うのを止めて肩を竦めた。


 ドルフが分かりやすく咳払いをして姿見にいるセレスさんへ話しかけた。


「こちらの声は聞こえていますか? 聞こえているなら頷くでも何でもいいので反応してください」

「き、聞こえています」


 セレスさんは頷きながら返事もした。

 彼女は座った状態で不安そうに体の前で自分の手を握っている。


 うーん? 何と言うか今のセレスさんとこれまでのセレスさんとでは受ける印象が違う。

 これまでのセレスさんはしっかり者だけど優しいお姉さんって感じだったけど、今のセレスさんは自信がなさそうでどこかオドオドしていて心配になる感じだ。

 オズワールさんとか私のことを怖がっていた時のリオルくんと似た雰囲気がする。


 ドルフから話しかけられた時、ドルフの方を見たけどすぐに視線を落としたりっていう行動もそうだ。

 私たちが話を聞きに行った時は、しっかりドルフの目を見ながら話していたからこそこの変化が気になる。


 私たちを眠らせたことに対する罪悪感とかかな?

 でも、私たちを眠らせた時のセレスさんは堂々としていたからそれも違う気がする。


「何がどうなっているか状況を聞かせてください」


 ドルフの問いかけにセレスさんは握っていた手をさらに強く握った。


「その……デニスさんたちが知っている私は私じゃないんです」


 セレスさんは1度深呼吸をするととても緊張した様子で告げた。


「ではあなたは何者なんですか?」

「わ、私もセレスです。デニスさんたちが知っているのは私が作った、理想の自分なんです」


 ドルフは情報を聞き出すことを優先しているようだ。ひとまずは話を聞いて彼女の言うことを否定したり内容に関する証拠などを求めることはなかった。


 話を聞きつつ整理していく中、セレスさんの呼び方に不便があった。ジェドさんの提案でこちらのセレスさんに裏、私たちが知っているセレスさんに表をつけて呼ぶことになった。彼女もそれでいいと許可してくれた。


「あなたと表セレスさんは記憶を共有している、しかし、あなたは体を動かすことができなかった。あなたができたことは、彼女のやりたいことを遅らせることとデニスに助けを求めることだったということですね」


 暗い表情でセレスさんは頷いた。

 デニスさんに夢を見せて助けを求めたのはこちらのセレスさんだった。表のセレスさんがデニスさんに魔法をかけていたからできたらしい。

 表セレスさんのやりたいことを遅らせた方法については、必死に止めようと呼びかけ続けることだった。そうすることで彼女を悩ませることができたそうだ。

 それでも、止めることはできなかったとセレスさんは暗い顔で言った。


「違う! セレスが教えてくれたから俺たちはここにいるんだ! 何をしたのかわからねぇけど、今なら止められるかもしれないだろ!」


 デニスさんは悲しそうなセレスさんを励ますように力強く呼びかけた。

 セレスさんは彼の声に驚くように体を小さく震わせて彼を見た。


「……オズワールさんなら何もしなくても恐らく無事です」


 裏セレスさんはオズワールさんに何かしようとしていた表セレスさんを止めたかった。しかし、それを止めることはできず実行された。


「彼女は失敗したんです。だからオズワールさんは無事に解放され、私と彼女はここにいます。デニスさんたちはそれに巻き込まれてしまったんだと思います」


 本当に申し訳ありませんでした。と、彼女はドルフたちに向かって頭を下げた。

 ドルフたちが何度か頭を上げるように言ってからようやく彼女は頭を上げた。


「私がそちらに出口を作ります。巻き込まれただけのデニスさんたちならここから出られると思います」


 彼女の言葉の真偽を尋ねるようにドルフはジェドさんを見た。


「確かに可能かもしれないな。だが、私たちが脱出した後はどうするつもりだ? セレス嬢は出られないんだろう?」


 セレスさんはゆっくりと首を左右に振った。


「いいんです。彼女は罪を犯し、私は彼女を止められませんでしたから」


 だからこれは私たちへの罰なのだとセレスさんが言う。


「ですが、デニスさんたちは違います。今なら私の力で脱出させられると思います」


 いつ状況が変わるか分からないから準備をしてくださいと言うセレスさんにデニスさんが待ったをかけた。

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