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騎獣転生  作者: 赤月 朔夜
第05章 人が変わるという噂と謎
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120話 不吉な知らせ

 フロイスがやってきて2日目の朝。

 昨日はセレスさんの話を聞いた後、ジナルドやザックと合流してラテルの西南にある森の調査を行った。

 その時にもフロイスは私たちについてきた。自分で飛ぶのが面倒なのか基本的にはリュックの中にいて、そのリュックをドルフが背負っていた。

 ふんや足跡、爪痕といった痕跡の他にどれくらいの生物を見つけられるかということも調べた。

 定期的な調査も行っているようで、ウォルダムたちがやってくる前に行われた調査結果と比べるとどちらも3割ほど減っているのだという。


 そして、今日も郊外の調査は行われる。

 ただ私たちは町の見回りなのだそうだ。


 その見回りの前にジェドさんの雑貨屋へと寄った。

 そう長居しないためお店に入ってすぐのところで話した。


 ジェドさんには、人手が足りず町の見回りをするので一緒にいることができないことを伝えた。

 それからペインターについて知っていることを尋ねたが、エリックさんが言ったことと同じようなことくらいしか分からなかった。


 用事が終わりそろそろ見回りへと向かおうとドルフが踵を返したところで雑貨屋の扉がドンドンと短い間隔かつ強めにノックされた。

 開店まであと30分はある。


 ドルフがジェドさんを見ると頷いたため、ドルフは脇へと避けた。


「おや、フィオニーさん。どうし」

「オズがいないの! どこかで見てない?」


 フィオニーさんは挨拶もなく、ジェドさんの言葉を遮った。

 早口で捲し立てるように言うフィオニーさんはかなり焦っているようだった。


「いや、見ていないな」


 ジェドさんはメイデナさんたちを見るが2人とも首を横に振った。

 ドルフも首を横に振っている。


「中へ入ってくれ。詳しくを聞こう」


 フィオニーさんは頷き雑貨屋へ入った。


「超がつくほど真面目なオズはいつも30分前には待ち合わせ場所にいるくらいなの」


 彼女とオズワールさんは朝から一緒にラテルを観光する予定だったのだという。

 しかし、約束の時間になってもオズワールさんが待ち合わせ場所に来ない。宿泊している部屋にもいない。


 だからフィオニーさんはオズワールさんに何かあったのではないかと考えた。

 それから必死に彼を探しているのだという。


「冒険者協会で捜索依頼もしてみたけど、今の状況じゃ本格的な捜索はできないって言われた」


 問い合わせて町の入出記録を確認した結果、記載はなかったので恐らく町の外へは出ていない。

 成人男性が町で1日いなくなったという程度ではそうできることはそうないと言われてしまったそうだ。


 特に今はウォルダムたちの影響でラテル周辺で生物の活動範囲が変わっている恐れがあるため調査が行われている最中だ。

 危険性の薄い問題にまで手が回らないのだろう。


「少しでもオズの情報が欲しい。今日見てないなら昨日はどう?」


 というのも昨日、彼女たちは別行動をしていたそうだ。

 フィオニーさんは広場で行われている市場や大通りにあるお店で服や雑貨などの買い物と食い倒れ。オズワールさんは時計台や町並み、お城、ラテル全体を囲う防壁や田畑といった建造物や人々の暮らしといった文化などを見て回ると言っていたという。


 残念ながら昨日についてもオズワールさんのことは分からなかった。


「力になれず申し訳ありません。見回りの時に聞いてみましょう」


 ドルフの言葉にフィオニーさんはお礼を言ってこの後の調査予定を教えてくれた。2時間置きくらいに冒険者協会顔を出すので何か分かったら、冒険者協会に伝えて欲しいと言って雑貨屋を出て行った。


「私も調べてみよう。店のことを頼む」


 ジェドさんはお店のことをメイデナさんとブライトさんに任せることにしたようだ。

 2人も特に拒否することなくそれを受け入れていた。


「あぁそうだ。見回りならラナを自由に歩かせてみるというのはどうだろう?」


 考えるように黙るドルフに対してジェドさんが続ける。


「ラナはこれまでにも地下室に閉じ込められた人たちを発見したり、火事となった屋敷へ飛び込み領主を助けたりもしたんだろう? さらには、リステラ症候群を解決する糸口になったとも聞いている」


 ジェドさん、その時ラテルにいなかったよね?

 この前といい今といい、ジェドさんからのご指名が怖いんだけど。


「そんなラナだからこそ、何かに気がつくかもしれない」


 私はドルフを見つめてクルクルと喉を鳴らした。

 オズワールさんを見つけられるか分からないけど、探知魔法があるので自信はある。


「やってみたいんだな」


 ドルフは微笑み私の頭を撫でてくれた。

 私はククッと鳴いて肯定した。


「ジェドさんの提案通り、自由にラナを歩かせてみましょう」


 ドルフはジェドさんへお礼を言った後、観察するようにじっと彼を見つめた。


「それにしても、ジェドさんの情報収集能力は凄いですね」

「情報は様々な事柄において重要だからな。方法については秘密だ」


 ジェドさんは得意気だ。どうやって情報収集しているんだろう。


「ドルフたちも聞き込みをするならこれを渡しておこう」


 そう言ってジェドさんが懐から取り出したのは4つに折りたたまれた2枚の紙だった。ジェドさんがそれを開いてこちらへ見せる。それぞれフィオニーさんとオズワールさんの似顔絵が水彩画風に描かれていた。フィオニーさんは仮面を着けたまま歯を見せた輝くような笑顔でオズワールさんは穏やかな微笑みを浮かべている。


 何でこんなの持ってるの?


「趣味で描いたものだ。使いやすいように使ってくれ」


 汚したり、なくしてもいいと言ってジェドさんはドルフに紙を渡した。ドルフは丁寧に紙を畳むと懐へしまってお礼を言った。


 私たちは雑貨屋を後にして、見回りへと向かった。

 基本的に町の見回りは騎獣を連れていかない。これまでの経験で私が何かに気がつくかもしれないという例外的な対応だ。

 さらにジェドさんの提案で私は自由に歩き回っていいらしい。

 見回りはいつも2人1組で行っているけど今回は人手不足のため単独だ。何かあった時に不便だけど仕方ない。


 ひとまず探知魔法を広めに発動させる。いつもは魔力の節約も兼ねて地下は省いているけど、今回は地下も探知対象に含めておこう。

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