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騎獣転生  作者: 赤月 朔夜
第02章 護送任務
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第011話 クロートの森

 ちょっと待ってジェフリーさん、それどういうこと?


 裏切者がいるという言葉に動揺する私をよそに、ドルフもレクシス様も落ち着いている。

 まるでその可能性があることを知っていたかのようだった。

 気が動転していたこともあって、崖の上に誰かいたか探知魔法で調べるということもできていない。これも反省だね。


「だが落石だけでは根拠が薄いんじゃないか」

「落石だけではありません」


 ジェフリーさんはそう言ってレクシス様を乗せていた馬車の扉を河原から持ってきた。


「扉の開閉部分を見てください。他の箇所に比べてわずかに黒みがかっています」


 私も扉の側面を見てみる。下の部分が少しだけ黒みがかった茶色になっていた。それ以外の部分は少し明るい茶色だ。


「カマノフの液が塗られていたのか。だから扉が開かなかった」


 カマノフの液が何か分からないけどどうやら馬車の扉に細工がされていたらしい。


「この程度なら休憩や野営の時に人目を盗んで、例えばカマノフの液を手に付けて触れてしまえば塗ることができるかもしれません。そして裏切者がいるのは恐らくうちの隊です。こんなことに巻き込んでしまって申し訳ありません。合流するとかえって危機に陥る可能性があります。合流はせずこのまま我々だけでルセルリオへ向かいましょう」

「分かった」


 合流しないということで意見は一致したらしい。

 私は彼らの会話を呆然と聞いていた。


 あの人たちの中に裏切者がいる。

 ジナルドが彼らを案内して私の所へ来た時、ジナルドが嘘を吐いていたから一応は警戒していた。でも、信じたくない気持ちがある。


 でも実際に偶然とは考えられないようなことが起こってしまった。


「馬の治療を行ってもいいでしょうか? このくらいの傷であれば1時間ほどで魔力が回復するので差し障りがないと思うのですが」


 振り返ると馬の近くにはレクシス様が居た。良く見る必要もなくその馬は足に怪我をしていた。


「よろしくお願い致します」


 ジェフリーさんがドルフに視線を向け、ドルフが頷くと了承した。

 レクシス様が馬の怪我に手を翳す。不思議なことにレクシス様の手がほのかに光っていた。


「ラナにレクシス様を同乗させることは可能でしょうか?」

「可能だ」


 2人が会話を再開する。


 ドルフとジナルドを乗せて走ったこともあるから自信はある。

 意外と大丈夫だったんだよね。でも流石に出せる速度が3割くらいは落ちた。

 レクシス様は軽いからそれほど支障はないはず。


「マルコス殿から渡されたこれはどうする?」

「見せてください」


 ドルフがマルコスから投げ渡された点火棒をジェフリーさんに渡す。


「例えば点火棒に点火以外の魔法、使用した位置情報を知らせるような魔法が組み込まれている可能性は?」


 そう言えば騎士団の支給品の方は燃費が悪いような気がするって言ってたね。位置情報を知らせる魔法の分まで魔力を取られているから燃費が悪いように感じたのかもしれない。


「……考えられますね。それからこれは騎士団の支給品ではありません。恐らく彼の私物です。底に刻印がありません」


 点火棒の底を確認したジェフリーさんがドルフに見せる。


「回復しました」


 レクシス様の方を見ると光が消えていて馬の足の怪我も治っていた。


 レクシス様、凄い!

 回復魔法が使えるから厳重に護衛されていたんだろうね。


「話を聞いていたのですが、私ならその点火棒に点火以外の魔法が組み込まれていないか調べることができるかと思います」


 だったらということでレクシス様が点火棒を受け取り両手で挟んで目を閉じる。


「点火用の魔法以外は刻印されていません」


 1分くらい経ってからレクシス様が目を開けて言った。

 問題なさそうだということで必要に応じて使うということで話がついた。


「さて、では移動についてです。私は馬に乗るのでレクシス様のことはお任せしてよろしいでしょうか? 何か起これば私には構わずレクシス様を我が主のところまでお願い致します」


 なるほど、ジェフリーさんたちの主を治すためにレクシス様を送るという任務だったのか。

 つまり裏切者の目的はレクシス様の到着を邪魔してその主さんを回復させないことである、と。


「話もまとまったところでそろそろ移動しよう。クロートの森には様々な危険生物や魔物が生息しているため危険だ」


 え、玄人の森?

 何それ聞いてない。


 というか危険生物って何よ。ヘビとかワニとか?

 大きなムカデとか虫だったら嫌だな。


 あ、住んでる生物が危険だから森を進むのではなくあの崖沿いの道を通っていたのか。


 何でこんな道を通るんだろうと疑問だったけどそういう理由があるなら納得できる。

 でもそんな危険な森をこの人数で抜けるというのは無茶では?


 ドルフは強いけどレクシス様やジェフリーさんを庇いながらだと厳しいのではないだろうか。


 危なかったら結界でフォローして、最悪の場合結界を足場に空中を駆ければ大丈夫だよね!


 と、信じたい。でもその場合、馬はついて来てくれるかな?

 まぁ、目立つし飛ぶ敵対生物が居ないとも限らないから油断しないようにはしないといけない。

 とりあえず襲ってくるかもしれない生物がいるということで探知魔法を発動させることにした。




 ジェフリーさんから魔物の反応がするんだけどどういうこと?


 次から次へと問題が起こって頭がパンクしそうだ。


 落ち着いて整理しよう。

 魔物の反応と言ってもそれはあくまでも私が設定した魔物の反応で、探知魔法の設定で言えば体内に強い魔力を発する部分があるということだ。

 もしかするとペースメーカーのように体内に魔法の道具を入れているのかもしれない。

 ……そんな高度な技術ある?


 そうでなかったら体の中に魔石がある種族だろうか。

 それっていわゆる魔族なんじゃないの?

 ファンタジーものでは魔族が悪という場合が多いような気がする。だけどこれまで接してきたジェフリーさんが悪い人だとは思えない。


 気になるけど話せないため確認することができない。

 そりゃあ、私がジェフリーさんを威嚇したらドルフは警戒してくれるだろう。でももし悪い人じゃなかったら不要な警戒や不信感を持たせただけになってしまう。

 ジェフリーさんがピンチに陥った時、その不信感がドルフを迷わせ行動を遅らせる恐れがある。少なくとも私がそういう状況になったら迷う。


 警戒はしておくことにしてこれまでと同じように振る舞おう。


 ドルフがレクシス様の手を引いて自分の前に乗せ、ジェフリーさんは馬に乗り私たちは森へと入った。

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