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騎獣転生  作者: 赤月 朔夜
第05章 人が変わるという噂と謎
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108話 招かれたジェドさんの雑貨屋

「ぜひ雑貨屋へ来て欲しいとのことだ」


 散歩にジェドさんたちがついて来た日から2日後、雑貨屋開店の準備ができたらしい。

 明日開店するということでぜひ見に来て欲しいそうだ。

 そして、招待されたのはドルフだけでなく私もだった。


 雑貨屋に魔物を招待するって本気?

 暴れたりしないと思ってもらえているのは嬉しい。

 でも、うっかりぶつかって壊すことも考えられるからちょっと怖いな。尻尾が当たったりしないよう気をつけよう。

 雑貨屋を見て狭そうなら入るのは止めるっていうのもいいよね。


 色々注意は必要だけど楽しみだ。どんな物があるんだろう。可愛いのとかあるかな。


「ラナの気に入る物があったら買おうな」


 ワクワクしていることがドルフに伝わったらしい。

 少し恥ずかしく思いながらも私は彼の言葉に返事をした。

 そして私たちは出かける準備をした。具体的にはくらやら手綱、あぶみを装着された。


 町から出る予定がある人には遅く、昼食をとるには早いという中途半端な時間帯。

 人通りも落ち着いている。


 ドルフに手綱を引かれて歩き、大通りから横道に入り10分ほど進んだところでドルフが足を止めた。

 彼の前には横が10m、高さ8mほどの2階建ての家があった。石造りの家でラテルでは良く見かける。入口の扉は両開きになっていて、室内は私が余裕で入れるほどの広さがある。

 看板やお店の名前らしきものは見当たらない。

 窓から中を見ると様々な木彫りの雑貨らしいものが見えた。


 もっと良く見たくなって窓に近づく。部屋の中央にはカウンターがあってジェドさんの姿が見えた。何かを書いているのか下を向いて右手を動かしていたが、手を止め顔を上げると私の方を見た。


「いらっしゃい」


 出入口へとやってきたジェドさんに私たちは迎え入れられた。

 部屋にはジェドさんしかいなかった。


 室内の左右には等間隔で机が並べられており、その机の上には多様な木彫りの雑貨が置かれている。

 中央のカウンターの奥には扉と2階へ上がるための階段があった。


 ドルフが屈んで近くにあった木彫り雑貨を眺める。

 私も色々と見てみる。

 猫がコップを抱えていて猫の胴体が持ち手になっているもの、小物入れらしいものもある。

 食器や入れ物以外には木彫り人形もある。足元に丸い台座があるタイプじゃなくて足で自立しているタイプだ。


「全てジェドさんが作ったのですか?」

「あぁ、なかなか上手いだろう?」


 私も屈んで近くの木彫り人形を見た。

 近くで見ると毛並みも細かく造形されていることが分かる。


 これは犬かな? 狼かもしれない。

 違いが分からない私には見分けることはできないけど、ジナルドなら種別すら当てそうなほどに精巧だ。


 他にどんな物があるんだろうと部屋を見る。

 机の中央には値段が書かれた紙が1枚置かれていた。紙を押さえる文鎮ぶんちん代わりに木彫り人形が置かれている。

 机ごとに同じ値段の物を置いているらしい。別の机には違う値段の書かれた紙が置かれていた。

 値段は500円から5000円くらいと幅広い。安い方は角ばっていながらもデフォルメされたようなデザインで可愛らしさがある。高い方は精巧な上に色まで塗ってあるため非常にリアルな仕上がりだ。


「ディナルトスの彫刻が多いですね」

「売れると思っているからな」


 他の生き物は多くて5個だけど、ディナルトスだけは10個ある。ディナルトスのみ置かれている机があるくらいだ。

 立っていたり座っていたりポーズは様々だ。私やガルたちに似せて作った物ではないらしくそれらしい特徴はない。


 色々あるなぁと思って見ていた時、私は1つの作品に釘付けられた。


「これが気になるのか?」


 ドルフが手に取ったのは木のお皿だ。そのお皿には木彫りの兎が顔を覗かせ、前足をお皿の縁にちょこんと乗せている。可愛い。


「ラナは可愛らしいものが好きなんだな。これを買います」


 ドルフに頭を撫でられたと思ったらお皿を購入してくれた。

 お礼と大切にするという気持ちを込めてクルクルと鳴いた。


「あぁそうだ。販売目的ではなく趣味で作った物もあるんだが、見てみるか?」


 置かれた作品を色々と見ている時、ふと思い出したようにジェドさんがそんな提案をした。

 ドルフが頷くと奥の部屋へと案内される。


 その部屋にはいくつかの木彫り人形が置かれていた。それ以外にも1枚の絵画らしいものが置かれていた。

 というも、キャンバスを立てかける台座に白い布がかけられているからだ。


「これだ」

「凄いな。本物みたいだ。これはラナとウォルダムたちか」


 ジェドさんが示したのは、白いウォルダム1匹と緑色のウォルダム2匹が果物を食べている1匹のディナルトスを眺めている木彫り人形だった。

 先ほどの部屋にあった木彫り人形とは違い、複数体の作品であることもありこちらは足元に丸い台座があった。


 うん、どう見ても私とシロさんたちだ。


 凄いっていうのには同意だけど、自分がモデルにされてるっていうのはちょっと恥ずかしいね。

 実際に見られてたのかな。それとも想像?

 立ち位置とかシロさんたちの体勢、もらった木の実から考えて見られていそうではある。


「ラナがウォルダムたちと一緒にいるところを見ていたのですか? まるで実際に見たかのように再現されています」

「直接見たわけでじゃないが、知る方法があるんだ。秘密だが」


 彼は口に左の人差し指を添えて内緒というポーズを取った。

 ドルフはその方法を問うことはせず、ただ作品を眺め時折質問などを行った。


「さて、私の技術については分かってもらえたと思う。個別に依頼も受ける予定だ。ドルフからの依頼なら2割引きで引き受けよう。こういった作品が欲しいというのはないか?」


 ジェドさんが楽しそうに明るい声音で尋ねた。

 ドルフは苦笑いして考えてきますと答えた。

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