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騎獣転生  作者: 赤月 朔夜
第05章 人が変わるという噂と謎
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106話 不穏な臭い

 その後、特に何事もなく湖へと到着した。

 2人は当たり障りがない世間話をしている。

 私はそれを聞きつつ湖で泳いだり思うままに走ったりしていつものように過ごしている。


 満足したので地面へ横になって日向ぼっこをしながら目を閉じた。

 ポカポカして気持ちが良い。


 寛いでいると体を撫でられた。

 見えなくても匂いや足音なんかで分かる。

 目を開けると予想通りにジェドさんがいた。


「気持ち良さそうだな」


 彼は微笑み優しく私を撫でている。


 ドルフは私の近くに座っている。

 ブライトさんは水辺に座って目を閉じ瞑想らしきことをしていた。

 メイデナさんは水を飲んだり馬を撫でたりしている。


 そんな感じで各々が休憩していた。


 普段ならあと10分くらいで帰るんけど、今回はジェドさんたちも一緒だから帰る時間も変わるかもしれない。

 長くなりそうならジェドさんたちに何かアプローチしてみよう。

 どんなアプローチがいいかな。


 そう考えている時、風に乗って微かな血の臭いが漂ってきた。

 風は北から吹いていて、北には森がある。

 臭いだけで人かどうかまでは分からない。人が襲われてたら大変だけど、動物や魔物が戦っているのかもしれない。人が狩りをしているってことも考えられる。

 探知魔法を発動しても範囲外なのかそれらしい反応はない。

 自分で判断できないことはとりあえず報告だ。


 私はドルフに顔を摺り寄せてクークーと鳴いた。


「どうしたラナ?」


 尋ねられ北をじっと見る。


「ラナは北が気になるようです。私は向かってみますが、何があるか分かりません。ジェドさんたちはラテルへ戻ってこのことを伝えてもらえないでしょうか」

「私も行こう。ブライト、私と来てくれ。メイデナ、ラテルへ向かい伝達を頼む」


 2人は了承し、メイデナさんは馬でラテルへと向かった。


 ドルフは小さく息をつくと私に乗る。

 ジェドさんたちも馬へ乗り、私は血の臭いを辿って北へと走った。


 北へ進むほど臭いは強くなり、森が見える頃には狼らしい唸り声や植物が揺れるガサガサという音、複数人の足音が聞こえてきた。


「血の臭いがし、争うような音が聞こえます。気をつけてください」


 近くなったこともあってドルフも感じたようだ。

 探知魔法にもようやく反応があった。


 1台の馬車を取り囲むように10匹のひょうらしき魔物がいた。馬車を守るように4人が豹と対峙しておりそのうち1人は腕に怪我をしているようだ。馬車の中には5人いて、子どもを守るように抱きかかえている母親らしき女性もいた。それから2人は若そうな男性で残り1人は若くて小柄な女性だ。

 馬車を守っている人たちに余裕はまだありそうだけど、それは守備に徹しているからに見える。1人でも減ったら一気に厳しくなりそうな気がする。


 間に合うことを祈りつつ平原を走っていた時、豹が3匹同時に駆けだした。

 その先には魔法使いらしい恰好をした男性。魔法で氷の矢を撃ち出しているが倒せていない。

 魔法使いの男性が豹に飛び掛かられそうな時、剣士の男性が彼の前に出た。

 2匹の豹は剣でいなしたが、残りの1匹に体を鋭い爪で引っ掻かれてしまった。


 男性が倒れそうになった時、馬車の中から様子を見ていた2人が外へ飛び出した。

 1人は小柄な少女、もう1人は中肉中背の若い男性だった。


 少女が剣を抜いて豹たちへ向かっていく。豹の方は彼女を迎え撃つように彼女へと跳んだ。

 しかし、豹が彼女へ届く前に石のツブテが豹を襲う。彼女と一緒に馬車から飛び出した男性が放った魔法だ。

 豹が石のツブテに怯んだ豹の首を一太刀で少女がはねた。


 馬車の中で一緒にいたこともあって、彼らはコンビなんだろう。

 連携が上手い。


 豹が2匹、3匹と数を減らした時、後方にいる豹の1匹が私たちのいる方向を見た。

 私たちはというと、森へ入り彼らの所へ向かっている最中だ。

 数分もかからないところまで来ている。

 きっと豹たちもそのことに気がついたんだろう。もしくは形勢が悪いと思ったのかもしれない。

 私たちがいる方向を向いていた豹が鳴いた。その鳴き声を聞いた豹たちは馬車から離れ街道から外れた森の奥へと逃げていった。


「誰かいるのか!? こっちだ手を貸してくれ!」


 彼らとは違う方向を見た後に豹が逃げたこともあり、誰かがいることは分かったんだろう。

 馬車を守っていたうちの1人がこちらへ向かって叫んでいる。


「ラテルの騎士だ! すぐに向かう!」


 ドルフの言葉通り、私たちはその後少しして合流できた。

 豹たちも探知魔法の範囲外に出ていて戻って来る様子はない。


「ケネスを助けてくれ!」


 馬車の護衛と思われる人たちの仲間なんだろう。探知魔法でも分かったように、男性はかなりの怪我を負っていた。意識はあるけど血は止まらず止血のために押さえている布が赤く染まりつつある。


「見せてみろ」


 ジェドさんが男性へ近づき状態を確認する。


 ラテルへ戻れば回復魔法を使えるレクシス様がいる。でも、ここからラテルへ運ぶには時間がかかる。急に容態が変わったりしないか心配だ。

 ジェドさんは凄い魔族らしいし、レクシス様みたいに回復魔法とか使えないのかな?

 いやでも、適性のあるなしがあるみたいだから使えないかもしれない。


 大丈夫かなと私は2人を見た。

 男性の傷は痛々しくてあまり見れなかった。

 ジェドさんの方はというと、傷の確認を行った後に手際良く手当をしている。


「よし、安静にしていれば命の危険はないだろう」


 包帯を巻き止血場所を固定するとジェドさんは手当てを終えた。

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