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騎獣転生  作者: 赤月 朔夜
第05章 人が変わるという噂と謎
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105話 リーセディアとルストハイム

 ラテルの出入口へ到着した。

 大きな門の外には、仲間を待っているであろう冒険者やら商人らしき人たちがいる。

 いくつかあるグループの中にブライトさんとメイデナさんもいた。

 ブライトさんが1頭、メイデナさんが2頭の馬を連れている。


 軽く挨拶を交わしてからドルフは私に、ジェドさんたちはそれぞれ馬に乗って散歩へと出発した。


「ジェドさんはこれまでどこで生活していたんだ?」

「ルストハイムだ。しばらくこもっていたから知らないことも多いが、何か聞きたいことはあるか?」


 ルストハイム。アントンさんの故郷だ。

 リーセディアと似ているところがあるって話だったよね。


「ルストハイムはどういう国なんだ?」

「端的に言えば実力主義国家だ」


 実力さえあれば種族、年齢、性別を問わずに就労、就学ができる。それを後押しする制度も整っている。

 競争は激しいが若くても出世することができ、成果に見合った待遇も受けられるという。


「数日前にやってきた新人があっという間に上司となることもある」


 そんなことになったらお互い複雑な心境だろうな。人間関係とか大変そう。


「そのため足の引っ張り合いが起こりやすい。ルストハイムでは他者の足を引っ張ることは意気地なしの恥知らずと蔑まれるが、多少の抑制効果にしかならない」


 むしろその風潮があるため、より陰湿化しているらしいということだった。


「あぁそれから、実力主義に伴って効率が重視されがちだ」


 1つの仕事に長い時間をかけるより、短期間で多くの仕事をこなす方が評価が高いんだろうね。実力主義らしい。


「だがそれだと、要領の悪い者や大器晩成型の者が芽吹く前に淘汰されてしまう。それを仕方ないと切り捨てるのは勿体ないと思っている」


 何より、温かみに欠けるだろう?


 そう問われたドルフは同意を返した。


 なんというか、部下を抱えた管理者視点の話し方だ。

 ブライトさんやメイデナさんもジェドさんの部下なのかもしれない。


「リーセディアはどうなんだ?」


 尋ねられたドルフはやや沈黙してから口を開いた。


「職業によって実力主義的なところもありますが、それだけではないですね」


 リーセディアではその人の能力から考えて努力や成果が認められるそうだ。

 直接的な成果には繋がらなくても、職場の環境作りや後輩の育成といったサポートで貢献しているのであればそれも評価されるという。


「冒険者協会は実力主義的ですね」


 それ以外の宿屋や農業、販売業は親から子へ引き継がれることが多い。

 料理人や鍛冶師であれば子が継ぐ確率は半分ほどらしい。というのも、親の跡を継がずに独立することも多いそうだ。


 アントンさんはリーセディアとルストハイムは似ているところがあると言っていた。

 でも、ドルフとジェドさんの話を聞いている限りだと似ていない気がする。

 食べる前に「いただきます」があるのは同じなんだっけ。食文化や習慣だけ似てたりするのかな。


「騎士はどうだ?」


 ルストハイムだと実力主義。採用されるためには実技と筆記に受かる必要がある。それはリーセディアと同じだそうだ。


「あぁそれから、大会があり様々な課目で実力を競える」


 そこで実力を示すことができれば出世も早い。

 一般公開はされていないが騎士たちには公開されている。出場しても良いし、しなくても良いという。


 大会と聞いて面白そうだなって思った。

 2人の話を聞くにそういう大会はリーセディアにないので残念だ。


「ジェドさんはルストハイムでどんな職務に従事していたんですか?」

「管理職だ。様々なことを指示していたぞ。今は無職だが」


 管理職から無職って何があったの。


 ドルフも気になったようで少し躊躇いながらも尋ねた。


「そう大したことじゃない。続けられない事情があって辞めたんだ。揉めたりしていないぞ」


 その事情も今は解決しているそうだ。


「だから戻らないかと言われたんだが、上手く回っているならそれでいいと断った。私が戻って不要な混乱と不和を招くこともない」


 ジェドさんには未練はないってことなのかな。


 ふと思ったんだけど、管理職って役職だよね。何の職業なんだろう。

 ドルフはジェドさんがぼかしていたこともあって聞くことはなかった。


「話は変わるが、ドルフは教育と洗脳の違いについてどう思う?」


 いや、本当に話題の変わり方凄いね。鋭角すぎない?


「……教育と洗脳の違いですか?」


 ほらー! ドルフも困惑してる!


 そんなドルフにジェドさんは小さく笑ったが、それを指摘したり急かすことはなく返答を待っていた。


「教育とは教えることで選択肢を増やすことであり、洗脳は教えることで選択肢を減らし強制することではないでしょうか」


 おー! 確かにそんな気がする。

 学校での勉強は教育だと思うし、こうすれば幸せになれる! みたいな怪しいセミナー講習は洗脳だろう。


 三平方の定理とか日常では使わないし、何でこんなことを勉強するんだろうと思ったことはあるけどね。

 でも、学校で勉強したことがきかっけで数学が好きになり、それを生かすような仕事をしたいと思った人はきっといる。

 その仕事を目指すでもいいし、他の仕事を探してもいい。それ自体は自由なんだから。


 それはそうと、なんで急にこんなことを聞いてきたんだろう。


「聞いてみたくなったんだ。おかしな質問をしてすまなかった。答えてくれてありがとう」


 その後はリーセディアとルストハイムの違い、ラテルの話に戻った。

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