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騎獣転生  作者: 赤月 朔夜
第05章 人が変わるという噂と謎
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104話 大通りを歩く

「おはようドルフ。今日もよろしく頼むよ」


 ドルフたちが雑貨屋巡りをした翌日、ジェドさんが私のいる小屋までやってきた。今日は彼のみだ。

 ドルフから聞いたところによると、今回は私の散歩に付き添いたいらしい。


 これ、もしかして調査されてる?


「そういえば、ラナは数匹のウォルダムと仲が良いらしいな。しかも、その中には変異種の白いウォルダムもいる」


 ジナルドとドルフの会話で分かったことだけど、シロさんの抜け殻や爪なんかは魔道具作成の素材として非常に有用らしい。それに変異種自体も珍しい。

 そういえばジェドさんたちを始めて見かけた場所もシロさんたちの住処の近くだ。

 こう考えるとシロさんが狙いなのかもしれない。

 

「ディナルトスとウォルダムたちが仲良くしているところを見てみたいな。ドルフは見たことがあるのか?」

「えぇまぁ」

「その時はどんな様子だった? 寄り添って日向ぼっこをしたり給餌行動を行ったりしたのか? 水浴びや日向ぼっこ、甘えるように鳴いたりはするのか?」


 ジェドさんは興味津々といった様子で質問を重ねる。

 ドルフは何と答えるべきか迷っているようだった。


「あぁ、私は別に白いウォルダムを何かに利用しようと考えているわけではないよ。生物が種族の垣根を越えて仲良くしているところを見てなごみたいだけなんだ」


 彼はシロさんたちの住処の近くにいた時も、何かしてくるんじゃなくて怪しい集団を撃退してくれていた。

 混乱に乗じてシロさんを捕まえることもできたかもしれない。

 それをしなかったのは、私たちを捕まえることが目的ではなかったからだと考えることもできる。


「……ラテルの近くまでやってきたウォルダムたちはラナに食べ物を与えようとしたり、一緒に水浴びなどをしていました。日向ぼっこもですね」


 悩んだ末にドルフは私やシロさんたちの様子をジェドさんに伝えた。

 ジェドさんは穏やかな微笑みを浮かべてその話を聞いて時には頷いている。


「いいな。私も見たいものだ」


 そう言うジェドさんは楽しそうだった。

 悪い人ではなさそうなんだけどなぁ。


 私がジェドさんについて考えている間にも散歩の準備が整った。

 私はドルフに手綱を引かれて通りを歩き、ドルフの隣をジェドさんが歩いている。


「こんの馬鹿たれが!!」


 その時、通りに面した建物から年配と思われる女性の怒鳴り声が聞こえてきた。

 窓が開いていることもあってその声は周辺一帯に響き渡った。


「何かトラブルがあったのかもしれません。様子を見てくるのでラナと共に待っていてください」


 ジェドさんは了承してドルフから手綱を受け取った。

 彼と一緒に通行の邪魔にならないよう道の端へ寄る。


「そんな怒鳴るなって。興奮のしすぎで倒れるぞ?」

「分かってんなら怒鳴らせるようなことをするんじゃないよ!」


 怒鳴られている方は男性のようで、落ち着いた様子で女性を宥めている。

 ドルフはすぐに扉をノックできるよう扉の前にいて会話に耳を傾けていた。


 その建物はラディアさんの薬屋だった。

 怒鳴り声の主は店主のラディアさんだろう。


「俺たちなら何度も取りに行ったことがあるし、どこに生えてるかも分かってる。行くなら俺たちが適任だ」

「警戒令が出てる状況で行くなっつってんの!」

「そうは言っても、持病の薬が切れてたんだろ?」

「すぐに死ぬわけでもない。無茶をする必要はなかった。リジールも何でこの馬鹿を止めてくれなかったんだい?」


 リジールという名前を聞いて分かった。聞こえてきた男性の声はガロイドさんだ。

 2人は冒険者で私の散歩や見回りの時などに顔を合わせることも多い。私のことを撫でてくれたりもする。


「いやー、危険なことはちゃんと伝えたんですけどね」


 苦笑いしながらリジールさんは答えた。

 そのタイミングでドルフが建物の扉をノックする。

 ピタッと何も聞こえなくなった後、女性の返事が聞こえた。


 怒鳴っていた時とは違い落ち着いた声音だ。

 何となく余所行きな印象を受ける。


「すみません、ドルフです。少しよろしいでしょうか?」

「今開けるわね」


 扉が開きそこに立っていたのは60代ほどの年齢で短く真っ白な髪をした女性だった。うん、ラディアさんだね。

 和やかな様子で2人が挨拶を行う。

 見える範囲にガロイドさんたちの姿はない。


「あらドルフさん、どうかしたの?」

「窓が開いており会話が聞こえてしまったのでそれを伝えに来ました」


 穏やかに用件を尋ねたラディアさんだったが、ドルフの指摘に目を見開いた。


「ちょっともうヤダわ! ご近所さんにも聞こえてたってことでしょう?」

「今さら隠したところで意味ないだろ」

「ちょ、余計なこと言わないでください。その通りですけど」

「聞こえてるよ」


 家の中を振り返り彼女がドスのきいた声で答える。2人は黙った。


「何も問題がないのであれ良かったです。では、失礼します」


 咳払いをしてからドルフは話を切り上げた。


「手間をとらせちゃってごめんなさいね。次からは気をつけるわ」


 ラディアさんはドルフを見送り少ししてから家へと戻った。


「じゃ、俺たちもお暇するか」

「あんたらへの説教はまだ終わってないよ」


 そんなやり取りの後、開いていた窓は閉じられ彼らの声は聞こえなくなった。

 喧嘩とかじゃなくて良かった。


 その後、私たちは大通りを抜けてラテルの出入口へ到着した。

 大きな門の外には、仲間を待っているであろう冒険者やら商人らしき人たちがいる。

 いくつかあるグループの中にブライトさんとメイデナさんもいた。

 ブライトさんが1頭、メイデナさんが2頭の馬を連れている。


 軽く挨拶を交わしてからドルフは私に、ジェドさんたちはそれぞれ馬に乗って散歩へと出発した。

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