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騎獣転生  作者: 赤月 朔夜
第04章 強制転移

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番外編 シェグルについての報告会(3/3)

「エリックさんがラテルにいることは分かっているんですけどね」


 こちらから会いに行く方が手っ取り早い。

 そしてその際、実際にシェグルを見てもらうことで何か分かる可能性がある。


 ただそれを実行するには少し不安な点があった。

 タタとミランダ、アントンが共に生活をしているシェグルはやや特殊である。シーナとシークには体に魔石が組み込まれており、彼らの生みの親であるセオロアによって時間経過により体が崩壊するようになっていた。今はそのようなことが起こらないようセオロアがその仕掛を取り除いている。

 しかし、離れることで彼らが不安定になったり、何がきっかけで体が崩れた言い切れない。


 セオロアに関しても、親であり1番シェグルに詳しい彼がシェグルたちから離れることは好ましくない。

 そしてセオロアは、アントンの指示にはとても従順であるため彼から離すことを避けたい。


 今のところ問題は起こっていないが、安心するにはまだ早い。

 問題が起こってもすぐに対処できるよう近くにいておきたい。問題として発現する前に潰しておきたいというのが彼らの考えだ。


 で、あれば動けるのはアルバーノのみとなる。

 アルバーノがシーナとシーク以外のシェグルを連れてエリックへ会いに行くことが、デメリットと比較してメリットが多い。

 だが、アルバーノはシェグルとの交流がそう多くない。感情が芽生え始めたシェグルが馴染みある安心できる場所を離れることに了承を取れるか分からなかった。


「俺と一緒にラテルへ来てくれるシェグルはいるでしょうか」


 期待はなく駄目で元々の質問だ。


 アントンはセオロアと共にシェグルたちの様子を確認するため定期的にネロマ村を訪れて話を聞いている。

 知っているなら彼だ。


「アルバーノさんに好意的なシェグルの心当たりがあります。彼なら行ってくれるかもしれません」

「俺に? どうしてです?」


 アルバーノには身に覚えがない。

 やや困惑しながらの問いになったためか、アントンは小さく笑ってから口を開いた。


「村で定期的に絵本の読み聞かせが行われているのですが、その絵本に出てくる英雄と似ているからだそうです」


 その物語では、村へやってきて人を困らせる怪物がいた。英雄がその怪物を懲らしめ、怪物は改心し村人を助けるようになったことで怪物も村で受け入れられるようになる。というシンプルな内容だ。


「『何人かで捕まえようとしたのに、触ることすらできなかった。だから凄い!』って言っていましたよ」


 アルバーノには彼らと遊んだ記憶はない。

 しかし、それらしいことならセオロアの研究施設の地下で行った。


「あの時のことは彼らにとって鬼ごっこのようなものだったんですね」


 セオロアはアルバーノたちを捕らえるように彼らへ指示を出した。

 セオロアを含め、彼らシェグルからは殺意どころか敵意さえ感じることはなかった。


 しかし、触れられた瞬間に溶かされないと誰が言える。

 害意を持っていなくても他者を傷つけることはできる。


 彼らの動きは素人そのものであったが油断はしなかった。

 むしろ、人では行えないような動きをするのではないかと警戒を強めていたほどだ。


「僕が次に村へ行く時に事情を伝えましょうか? 同意を得られたらレストーネまで連れてきます」


 アントンがネロマ村へ行く日取りはそう遠くない。


「ネロマ村への訪問に俺も同行することは可能でしょうか? 直接その子と話してみたいです。それに、村で過ごすシェグルたちの様子も直接見たいと思っていました」


 彼は快くアルバーノの申し出を受け入れた。


「いいなぁ。私も他の子たちの様子見たい。もしシークも一緒に来てくれるなら行っていい?」


 ミランダにそう問われ、それもありかもしれないとアルバーノは思った。アントンも特に止めていないため問題はないのだろう。


「いや、悪いが今回は残ってくれ。シークも今は大切な時期かもしれない。慣れた環境で過ごす方がいいはずだ」


 だが、アルバーノはそれを許可しなかった。

 彼女はやや不満そうにしていたものの、その理由に納得したのか大人しく引き下がった。


 ネロマ村へ向かうと決めたアルバーノには2つの目的があった。

 1つ目はラテルへ向かってエリックに会ってくれるシェグルを探すという当初の目的。

 2つ目はアントンとセオロアの調査だ。特にアントンについての調査が主となっている。


 これまでの経験から、アルバーノはアントンがただ者ではないという確信を持っている。魔法に関する実力もそうだが危機的な状況に場慣れし過ぎている。

 それ以外にもセオロアを従えたことや多種多様な言語を操る点も彼に対しての違和感を強めた。


「アントンさん、またどこか都合の良いタイミングで打ち合わせをできないでしょうか?」


 より詳細な調査を行うためにも、アルバーノは1対1でアントンと話す機会を作ることにした。彼も1対多の状況では警戒するだろうと思ったからだ。


「えぇ、もちろん。いつがいいでしょうか。合わせますよ」


 アントンは微笑み、その提案を受け入れた。

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