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騎獣転生  作者: 赤月 朔夜
第02章 護送任務
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第009話 出発進行

 ジナルドが見知らぬ騎士と執事さん、レクシス様を連れてきた次の日、私はドルフに連れ出されて町の外へと出た。


 そこには1台の馬車とドルフを含め8人が居た。内訳はドルフを含めたうちの騎士が4人、見知らぬ鎧の騎士が3人、執事さんが1人だ。

 見知らぬ鎧の騎士は昨日の緑髪と茶髪と金髪だ。


 馬車は1頭の馬が引く小型のものでうちの騎士の1人が御者として座って手綱を握っていた。

 ドルフは私に、他の人は馬に乗っている。

 執事さんは護衛対象と馬車に乗っているのかと思ったけど違った。他の人が丈夫そうな鎧を着ているだけに執事さんが少し心配になる。


「よし、出発だ」


 うちの騎士の1人かつ中年男性がそう言うと先頭が動く。


 こうして私たちは町を出発した。

 一応、と思って馬車には硬化の魔法をかけておく。硬化の魔法はしばらく持つので切れる前にかけなおして硬化が切れないようにしよう。


 私たちは最後尾にいて馬車は中央に位置している。

 その執事さんは馬車の前、先頭よりは少し後ろの辺りにいる。

 馬車が重なって見えにくいけど執事服がチラチラと見える。


 今のところ平地にある街道を進んでいて見晴らしも良い。歩きにくさはほとんどない。

 だからなのか、全力というわけではないものの移動の速度は急いでいるという印象を受けた。

 休憩を挟みつつ馬車を引く馬を交代させているので1頭自体の負荷は低いのかもしれない。だから急ぎのスピードで移動できているのではないだろうか。


 たまに街道ですれ違う人もいる。その時はドルフと私が凝視されるのでディナルトスが人を乗せてるって珍しいんだなぁと実感した。


 そのまま何事もなく街道を進み、日が沈む前に少し街道から外れた場所で野営することになった。

 ドルフも私から降りて野営の準備を手伝っている。

 周囲を警戒している人もいてそれぞれサクサク動いていた。行動に迷いがなくて慣れているんだろうなと感じさせられた。

 私と馬の手綱はうちの騎士の1人が握っている。


 外で寝泊まりをしたことがないのでドキドキした。

 枯れ葉や枝などが集められ焚火の準備をしているらしい茶髪。火起こしって大変なイメージがあるけどどうするんだろうと見ていたら、ペンのような細い銀色の棒を取り出したかと思うと棒の先から小さな火が出て枯れ葉と枝に火が点いた。


 何、あの棒!?


 魔法が封じ込められた道具なのかな、面白そう!

 水が出たり他のパターンもあるんじゃないかと考えるとワクワクする。

 というかスイッチらしき物が見当たらないけどどうやってオンオフを切り替えているんだろう?


 ドルフはマッチで火を点けるから初めて見た。


「点火棒ですか。買いたいと思ってはいるんですが安価なマッチがあるのでなかなか決心がつきません。やはり便利ですか?」


 うちの騎士の1人が茶髪に話しかける。

 私は2人の会話に耳を傾けた。


「これは騎士団の物なのですが、1度使ったら便利過ぎて自分でも買いました。確かにマッチは安価で使いやすいのですが、濡れると使えないでしょう? これならそういうこともありませんし、少しの魔力があれば火を付けられるのでマッチがもうなかったという事態を避けられます」


 おぉー、魔力で操作する道具なんだ。


「ただこの点火棒、俺の買った物より少しだけ燃費が悪いような気がするんです。体感的なものですが」

「新しい物の方が効率化されているはずですし、その違いでは?」

「そうかもしれませんね」


 そんな話をしながら焚火の火を使って料理を始める茶髪と彼を手伝ううちの騎士。

 2人とも手際が良くて慣れているように見えた。美味しそうな匂いが漂ってくる。


 私と馬は先に夕食をもらい、少し遅れて他の人たちも夕食になった。

 きちんと元の形が残っていないお肉の状態でもらう。

 味も量も満足できるものだった。


 私が食べ終わってからややあって夕食が完成した。交代で食事を取っている様子を見ているとドルフが食器を持って馬車の扉をノックして夕食ができたことを告げた。

 扉が開いてドルフが食器を手渡す。


「ありがとうございます」


 馬車の中から聞こえたのはレクシス様の声だった。何となく予想はついていたから驚きはなかった。


 エルフって菜食主義のイメージがあるけどどうなんだろうね。

 まぁドルフも野菜を食べたりするからおかしくはないのかな。野菜よりもお肉を食べている頻度が多いからお肉の方が好きなんだろうけどね。

 一緒に出掛けて町に戻って来た時、多く焼き鳥を買ってその1本をくれることがある。


 しばらく経ってから馬車の中からノックの音がしてドルフが扉を開けて空になった食器を受け取っていた。

 後片付けなどをしてから焚火の近くに見張りの騎士を残してそれぞれ就寝した。


 そんな感じで特に何事もなく街道を進んで4日目。

 一緒に過ごしている間に全員の名前が分かったので付けていたラベルをその人の名前に変更した。

 ルセルリオの騎士かつリーダーらしい緑髪はレスター、金髪がフレイ、茶髪がマルコス、そして執事さんはジェフリーという名前らしい。


 レスターさんはリーダーらしく周囲の状況把握に長けていて、出す指示も的確で分かりやすいように感じる。

 私との関わりはほぼない。


 フレイさんに関しては気が利く働き者という印象だ。マルコスの手伝いで料理の下準備をしたり、休憩や野営の時に自分の仕事が終わると率先して他を手伝っているところを見た。

 ドルフに尋ねて私に昼食をくれたことがある。


 そしてマルコス。彼はフレイさんと違って自分の仕事が終わるとさっさと休憩していた。問題がありそうな時は手伝っていたけどね。

 あと私にちょっかいをかけてくる。

 「お手」と言って右手を出してみたり、「3回鳴いてみ」とか言ってきたり、「この木を登ってみてくれ」とか訳の分からないことを言ってくる。

 全て無視してやった。そんな躾はされてないからね。決してこの前のことを根に持っているわけではない。

 それから火を点ける時に点火棒を見ていたことがバレていたのか、点火棒を取り出して私の前で左右にゆっくりと振るなどもされた。何をするんだろうと私はついついその点火棒を目で追った。何度か左右に振ってから点火棒の先に火が点く。火が点くことは知っているため私は驚かなかった。

 その後、彼はレスターさんから私にちょっかいをかけるなと注意されていた。


 そして私の方はというとそこまで疲れないから辛くはないんだけど、思い切り走れなくてうずうずしてしまう。

 それに知らない人が多いことや慣れない旅、何か起こっても対応できるように警戒していて精神的に疲れてしまった。


 さらに私は1度も馬車を引いていない。

 これまで馬車を引いて走ったことなんてないしぶっつけ本番で馬車を引かされるのも怖い。だからありがたくもあるんだけど何だか申し訳なさを感じてしまう。


 そして圧倒的に癒しが足りない。

 ルナが恋しい。

 あのモフモフ、愛らしい仕草とフォルム、可愛らしい鳴き声と動き。

 ルナをモフりたい。ルナを吸いたい。 


 ドルフが私を気遣ってくれていることは感じている。

 街道を進んでいる時もお出かけの時よりも撫でてくれているし、食事の時や休憩時間なども私の近くに居てくれる。


 この際、ドルフをモフればいいのではとも思った。

 けれど悲しいことにドルフは鎧を身に着けているのでモフモフ部分が非常に少ない。

 尻尾が狙い目か? でも動物の尻尾って基本的に触ると嫌がられたような気がする。ドルフは獣人で動物ってわけじゃないけど下手に触らない方がいい気がした。


 仕方なく馬に癒しを求めようと野営の時にゆっくりと近づいてみた。

 私が近づくとその分だけ離れていく馬たち。気のせいかな? と思って馬に近づくとやはり離れる。一定距離から近づけない。

 残念だけど馬に近づくことは止めた。とても悲しかった。


 もう4日も一緒にいるんだから少しは気を許してくれてもいいじゃないか。

 ドルフの傍に戻って慰められながら私は休んだ。

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