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騎獣転生  作者: 赤月 朔夜
第04章 強制転移
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第099話 私が眠った後の話

『その、辛い時に助けられなくてごめんなさい』


 前の群れでシロさんがいじめられていることを見て見ぬ振りをしていたウォルダムたちが謝罪をした。


『仕方のないことです。私は気にしていません』


 それをシロさんは受け入れた。


『それに、今回は私が困っているのを見て助けてくれたではありませんか。それで十分です』

『でも、つり合いが取れるほどじゃない』

『そんなことはありません』


 言い募るウォルダムに対し、シロさんは即座に否定した。


『動かなくて冷たいチビさんに気がついた時、彼女が死んでしまうのではないかと本当に怖かったんです。だから本当に助かりました』


 私が眠ってしまった後、シロさんはエメさんに私のことを任されたらしい。エメさんは私が普通に眠っていると思っていたんだろう。

 実際には普通の睡眠じゃなくて寒さによる冬眠に近い状態だったんじゃないかな。


 そして、私の様子がおかしいことに気がついたシロさんは、それはもう慌てたらしい。


『何かしないといけないとは思うのに、何をしたらいいのか分かりませんでした』


 きっとパニックになっていたんだろうね。

 それでも、このまま雨に打たれるのはまずいと思った彼女は私に覆い被さり雨に当たらないようにした。

 ただ、それでは良くて停滞。事態が好転することはないとも分かっていた。

 次にシロさんは私に声をかけたり揺さぶったりして私を起こそうとした。


 そんなシロさんと一向に目を覚まさない私に気がついたウォルダムたちがあれこれ動いてくれた。


 シロさんから状況を聞き出すと雨風をしのげる洞窟へ案内してくれたり、魔力を使って体温を上げる魔法の使い方を伝えた。


 そして、シロさんが温め続けてくれたおかげで私は目を覚ましたそうだ。


『私だけではこれほど動けませんでした。チビさんがこうやして元気になったのは皆さんの助けがあったからです』


 そう言うとシロさんは私の体に頭を摺り寄せた。


『本当に良かったです』


 心配と迷惑をかけてごめんね。助けてくれてありがとう。


 お礼を言いながら私もシロさんに頭を擦りつけた。

 大事になっちゃったけど、偶然とはいえシロさんとウォルダムたちの誤解が解けるきっかけになって良かった。

 不幸中の幸いだと思おう。


 ……うん、体調管理にはもっと気をつけよう。

 でも防寒対策ってどうやればいいかな? 雨と風は結界で防げるけど、暖を取る方法がない。マッチ程度の火なら使えるから焚火たきび


 その後、エメさんやラルドさん、シロさんの過保護に拍車がかかってしまった。

 どこで見つけたのか、ウォルダムたちが木のお椀を持ってきた。それに水を入れて運んでくれる。




 翌日、探知魔法に意識を向ける。

 ここから50mほど東、襲撃者たちよりもさらに上空から見下ろすような場所に見覚えのある形をした生物の反応があった。

 その生物はテニスボールくらいの大きさで蝙蝠のような飛膜で飛んでいる。さらに東へ向かって魔糸が伸びていた。


 マルメだ。前にエリックさんが召喚した生物で胴体には大きな目がある。

 見た目は不気味なんだけど持っている能力はとても便利だ。目から光を出して他のマルメが見ている景色を映し出すことができるんだよね。


 マルメの魔糸を辿るように探知魔法の範囲を広げる。

 300mほど東、そこまで高くないところに一直線に並んだ大きな鳥が3羽飛んで。それぞれの背中にはドルフとエリックさん、ジナルドとローレンさん、知らない人とリオルくんが乗っている。知らない人はローブを着ていて魔法使いのよそおいだ。魔力もかなり持っている。


 エリックさんの手の平の上にはマルメがいて、こちらにいるマルメの魔糸が繋がっていた。


 ドルフたちに会える! ラテルへ帰れる!


 それはもう私のテンションは上がりに上がった。

 でも不安な点もある。ドルフたち、ウォルダムたちから攻撃されないかな?

 リオルくんが通訳してくれるならどうにかなるかもしれない。

 聞き取りはできると思うけど、話すことはできるのかな? 話すとしたらどう話すんだろう? やっぱりウォルダムたちが話すようにグォオとかグルルルとか鳴き声を発するのかな。

 前に通訳してくれた時は、聞き慣れない発音や音の組み合わせではあったものの、何かしらの言語だということは分かった。


『何だか嬉しそうですね。面白いことがありましたか?』


 シロさんが優しい声音で話しかけてきた。


 広場にはシロさんとラルドさんがいる。私が広場から出ようとすればきっと2人がついてくる。

 エメさんはそそっかしいけど、この2人は落ち着いているタイプだ。

 今からドルフたちの方へ行けばそこまで大事にならずに済むかもしれない。


 悩んでいる間にエメさんが戻ってくるとまずい。

 私はドルフたちのいる方へ向かうことにした。


 思った通り、私が広場から出ようとするとシロさんとラルドさんがついてきた。もちろん、テバサキも私の背中に乗っているし、兎のぬいぐるみも持って来ている。


 そう遠くない距離だ。徒歩で数分、双方から近づけばもっと短くなる。


『おチビちゃん止まれ。何かがこっちへ来ている』


 ラルドさんが私の前へ出て移動を遮られた。シロさんも警戒している。


『……この匂い、おチビちゃんの親か?』


 彼がそう呟いた時、大きな鳥へ乗ったドルフたちの姿が見えた。

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