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騎獣転生  作者: 赤月 朔夜
第04章 強制転移
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第095話 爬虫類と言えば

 翌日、探知魔法へ意識を向ける。不審者たちは昨日の変わらずそこにいて、怪しいことは特にしておらず朝ご飯の最中だった。


 ひとまず安心した後、私自身に少し良くないことが起きていることに気がついた。


 いや、そろそろ時期かなぁと思っていたんだけど多少前後することはあるし、その時にまた考えればいいかと楽観視していた。

 だけど、起こってしまったものは仕方ない。


 爬虫類の宿命、脱皮である。


 昨日の時点でちょっとムズムズしてる感じはあったんだよね。

 気のせいかな? 気のせいならいいなぁと思っていたんけど残念。


 とりあえずさっさと古い皮を脱いでしまいたい。

 全身カサブタで覆われているような、何て言えばいいのか分からないけど違和感があって仕方ない。


 だったらすぐに皮を脱げばいいんだけど、そう簡単にできるほど脱皮は甘くない。

 ディナルトスの手はそこまで自在に動かないし、背中もそうだけど手が回らない場所なんてあちこちにある。


 ガルたちが脱皮する時は小屋や石、地面に体を擦りつけて古い皮を脱いでいる。ある程度脱げたらその皮をくわえて引っ張ったりする。

 私も最初はそうやったんだけど、これがなかなか面倒くさい。

 まず、思ったように脱げない。

 古い皮は結構丈夫で簡単には破れない。

 どこかに引っ掛かるとかしてクリーンヒットすればやりやすいんだけど、その場合も力を与える方向を間違えたら皮が破れて剥きにくくなる。


 だから私は早々に諦めてジナルドやドルフに剥いてもらっていた。

 カイルに剥いてもらったこともある。だが彼は少し大雑把で、足のつけねに皮が残ってしまったり古い皮が首に引っ掛かかっているのに引っ張ろうとした。そのせいで首に圧がかかって苦しくなるということがあってからは頼んでいない。

 慣れない作業で本人にとっては丁寧に一生懸命してくれたのは分かっているんだけどね。

 対してジナルドとドルフは丁寧に剥いてくれるし苦しいと思ったことは1度もない。


 ただ、仲良くなってからは専らドルフに剥いてもらっていた。

 ジナルドは動物や魔物が好きすぎる。

 ペットが好きすぎる変態系飼い主って言えばいいのかな?

 語彙力が死んでめっちゃ褒めてくれるし、撫でたり抱きしめてくれる。

 それはまぁ嬉しさ反面、気まずさ反面だけど嫌というわけじゃない。

 嫌なのは脱皮した後の皮を持ち帰られることだ。


 そりゃあ、ジナルドにとっては嬉しいかもしれない。

 でも、私からしたらたまったものじゃない。

 だって脱皮の皮って良くてカサブタ、悪くて垢のようなものじゃない。

 それを持ち帰られて飾られてたりでもしたら嫌すぎる。


 その点、ドルフは脱皮後の皮をそのままにしてくれているのでビリビリに破いて処分することができる。


 ローレンさんやアントンさん、アルさんも手伝ってくれそうだけど残念ながらここにはいない。


 じゃあ自分で脱ぐ? それは面倒くさい。

 手伝ってくれそうな人は? テバサキは飛びながらの作業になる時もありそうだし大変そうだ。


 シロさんにやってもらえたりしないかな?

 小柄な分、手も小さいから剥きやすいかも。


 小柄と言えば、エメさんも他のウォルダムと比べれば小柄だ。

 でも彼女の場合、カイルみたいに大雑把な剥き方をされそうなんだよね。勝手な想像で申し訳ないんだけど。

 人の力で引っ張られても苦しいわけで、人より強いであろうウォルダムの力で引っ張られたらと考えると少し、いやかなり怖い。

 シロさんもウォルダムだけど、丁寧に剥いてくれそうな気がする。


 見た感じウォルダムも爬虫類だから脱皮しているかもしれない。もしそうなら剥けた皮を見せるだけで理解してくれる可能性が高い。

 テバサキには伝わるかすら分からないし、やっばりシロさんだな。


 そうと決まれば、と爪で顔や腕の古い皮を剥がしていく。

 一部なら自分で剥ける。問題はそれ以外の箇所だ。


 自分で剥けるところは剥いた後、近くで横になり目を閉じているシロさんへ近づいた。


『脱皮を手伝ってもらえませんか?』


 そう話しかけてみると、シロさんは目を開いて私を見た。

 なので、剥いている途中の皮を引っ張ってみたりこれ以上は手が届かないアピールをしてから再度鳴いてみた。


 シロさんは何も言わずに目を閉じた。

 諦めずに何度か鳴いているとシロさんは目を開けてじっと私を見た。

 再度アピールすると彼女は体を起こし、ゆっくり私に手を伸ばしてきた。

 何もせず大人しくしている私に触れたシロさんは、爪で皮に開けたりしながら丁寧に剥いてくれた。

 言っちゃ悪いけどカイルより慎重で丁寧だ。痛かったり苦しかったりしない。


 あれ、もしかしてカイルが雑すぎるだけ?

 ジナルドからも力任せに引っ張るなって怒られてたもんなぁ。


 なんてことを考えている間に無事脱皮は完了した。

 私はクルクル鳴いてお礼を言うとシロさんに体を摺り寄せた。


『感謝の気持ちは伝わりました。もう結構です』


 シロさんが私から離れたので体を擦り付けるのは止め、再度鳴いてお礼を言った。


 脱皮の最中も後も、不審者たちが大きな動きを見せることはなく他に何かおかしなことが起こることもなく時間が過ぎた。

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