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騎獣転生  作者: 赤月 朔夜
第04章 強制転移
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第094話 一緒に遊んでみよう

 私は手を伸ばし爪で地面を2回叩いた。それからククッと鳴いて手を引っ込める。

 背中に乗っていたテバサキが私の叩いたところへ降りてきた。

 ローレンさんのやり方を真似しただけなんだけど、私の出した合図でも言うことを聞いてくれて良かった。

 単純に来て欲しい場所を示す合図なんだけどね。


 じっと私を見つめてくるテバサキと同じ目線になるよう頭を下げる。


「クー、クークークークークークー」


 そして、私は鳴き声に抑揚をつけながらベートーヴェンの「歓喜の歌」を歌った。長くなりすぎないようにワンフレーズだけ。

 アニソンも考えたんだけど、曲を覚えたテバサキがどこかで歌うかもしれない。異世界とはいえ著作権なんかが絡んでくるのは私の罪悪感的にちょっとね。悪いと分かっていることを進んでする必要もない。1人で歌うならともかく、テバサキに聞かせるものだから。


 何度か同じフレーズを繰り返しているとテバサキが繰り返してくれた。次のフレーズを歌う。

 そうやって繰り返して最後まで歌い切る。私が歌い終わった後、テバサキも通して歌ってくれた。

 私の鳴き声を真似するわけではなく鳥らしい素敵な鳴き声だ。何だかテバサキもご機嫌そうに見える。 


 そんな風に何曲か歌った後、テバサキも何か歌い始めた。聞き覚えはないけど曲っぽく聞こえる。

 私がやったように同じフレーズを繰り返すので、次は私がテバサキの鳴く音程を真似して歌った。

 短く鳴いてみたり逆に長く鳴いてみたり音程も変化するためバリエーションが多い


 ふとシロさんを見ると、何だか少し珍しいものを見るような目でこちらを見ているような気がした。

 そこまでうるさくしたつもりはなったけど騒がしかったかな?


『可愛い! それに、何だか楽しそうで微笑ましいわ~!』


 エメさんの言葉とテンション的に大丈夫そうだ。

 じゃあ続けてもいいかな?

 せっかくならシロさんも誘ってみよう。


 私はシロさんをじっと見ると「ねんねんころりよ」のワンフレーズだけ歌った。

 シロさんは何も言わない。


 私はもう1度歌ってから促すようにクルクル鳴いた。

 少ししてシロさんがゆっくり体を起こすとガァガァと鳴いて歌ってくれた。

 クルクル鳴いて次のフレーズを歌う。 


 あまり騒がしくならないように気をつけながらも私たちは歌合戦? をした。

 クラシック曲はあまり知らないから童謡がほとんどだったけどね。

 途中からエメさんも参加したんだけど、声量がある上に音痴で凄かった。


 ここまで続けて鳴くことはなく、疲れてきたので30分くらいで歌うのは止めた。テバサキが物足りなさそうだったのはさすがだよね。歌うことが得意なんだなと感じた。

 歌うと喉が渇くもの。当然ながら私も喉が渇いたので川へ行って水を飲むことにした。

 移動を始める私の背中にテバサキが乗り、エメさんも後ろをついてきた。


 特に何事もなく川へ到着する。たっぷりと水を飲みつつ、いくらか走ってから広場へ戻る。

 今度は掴まれることなく自力で帰ることができた。


 シロさんは変わらずそこにいたので彼女の近くへ戻る。

 少しエメさんが寂しそうに見えて何だか申し訳なかったな。


 次は何をしようかと考えている時、探知魔法に魔族の反応が2つ引っかかった。背丈や体格は大人で目立った特徴は特にない。男女の2人組でどちらも持っている魔力量が多い。特に女性の方は私が知っている魔族の中で1番の魔力量があった。


 その魔族たちは私たちのいる広場の方へ向かってきている。

 この広場へ上ってくることのできる道は3つある。

 北の急勾配きゅうこうばいだけど距離的には1番近い危険な道、西のゆるやかだけど1番距離のある道、南の基本的には歩きやすいけど一部足場の悪い箇所があるそこそこの距離の道だ。

 私が川へ行く時は西の道から下りている。下りやすいっていうのもあるけど、単純に川が近いんだよね。


 この山の周辺は森に囲まれていて、不審者たちが今いるのは西南辺りだ。


 いつでも結界を張れるようにと注意して観察していたら途中で止まった。

 それからこちらへは近づいてこず、ほぼその場に留まっている。

 横の距離は300mほどで高さはこちらが150mほど高い。

 だからこの広場は見えないはず。


 じゃあ旅人が休憩しているのか? とも思ったけどどにも違いそうだ。

 彼らはその付近にずっといて、数時間が経ち日が暮れた頃に別の2人組と合流したかと思うと30分もしないうちに合流した2人は探知魔法の範囲外へと出て行った。しかも、その2人も魔族だ。彼らも大人に見える。この2人はどちらも男性だ。


 何だか見張られているような気がする。

 でも何で?


 彼らがやっていることは野営の準備くらいで怪しい素振りはない。

 使っている魔法も焚火たきびのために火をつけたり風を起こしたりする程度。


 ローレンさんたちが助けに来てくれたのであれば彼らと一緒にいるはず。じゃあローレンさんたちと彼らは無関係?

 良い人なのか、悪い人なのかすら分からないから怖い。


 私の気にし過ぎ?

 いやー、でもやっぱり怪しいって。

 このままにしておくのは不安だけど、彼らのところへ行って調べるというのも危険だ。下手に接触して攻撃されたらまずい。


 そんなもやもやした気分を抱えながらも特に何事もなく1日が過ぎた。

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